合宿始まりました







『…ん……』

「――未央ー、着いたよー?」

『うー………んん』

「…中津川さん、今すぐ起きないと次から仁王の膝枕で寝てもらうよ」

『!?い゙やぁーっ!今すぐ起きるからそれだけは止めてっ』

「あ、起きた。精ちゃんすごいね」

「…二人とも酷いナリ」

「ドンマーイ、仁王」



ガバッと起きると、隣に座っている春菜、前に座っている幸村くんや通路を挟んで隣のブン太や仁王くんが真っ先に視界に入った。


なんてこった…。
結局、"男と関わらないようにするため作戦"の具体的な案を思い付く前に目的地に着いてしまった。

いつの間にか寝てしまった自分を恨みたい。


騒いでないで早く降りろ、と真田くんに怒られながら足取りを重くしながらバスを降りた。

うぅ…やっぱり真田くん怖い…っ。





「はぁ〜、ずっと座りっぱなしだったから体が痛ぇ!」

『………おぉ!』


バスを降りた先に見えたのは、広い敷地にたくさんのテニスコート、そして大きな建物。
緑もたくさんあって、都会とは違う空間にただただ驚く。
まるでどこかの貴族のお家…というより避暑地だ。


…あれ、私たち合宿に来たんだよね?

いや、そんなことより……




『すごーい…広ーい!』

「アーン?当たり前だろーが、俺様の別荘なんだからな」

『…!?』



思わず出た言葉に返ってきた声。
声の主を見ると、私を上から見下ろす偉そうな泣きボクロ男。



「なんや、やっと着いたんか立海は」

「激ダサだな」

『!!?』



その後ろから、わらわらとたくさん男がやって来た。


な、な、なななな!?
おっ…男がいっぱい…!!

予想はしてたけど、実際に目の当たりにするとやっぱり無理。
無意識に足震えてるよ、私。





「やぁ、跡部。今日はお招きありがとう」

「予定より10分と22秒遅れてしまい、すまない」

「うむ、この馬鹿者が遅刻したせいで出発が遅れたのだ」

「いててて!痛いっスから耳引っ張んないでください真田副部長ぉっ!」

「はっ、相変わらずだなお前らは」

「なんじゃ、俺らが一番最後なんか?」

「いや、青学はもう到着しているが四天宝寺がまだだ」

「あー…あそこは大阪からだしな、」




この会話の流れからして、大阪の学校はまだ到着していないらしい。
チラッと全体を見渡しただけで、既にいっぱい男がいるのに……これ以上増えるとか勘弁して欲しいっ!!





「未央、大丈夫?」

『春菜……私、今日でこの世とお別れかもしれない』


隣で心配そうな表情の春菜に、笑いかける余裕もありません。





「――おい、そこの女。テメーがマネージャー補助要員か?」

『ひぃ、っ!?』



偉そうな泣きボクロ男に驚いて、思わず近くにいたブン太の後ろに隠れる。



「?おい、なんで俺の後ろに隠れんだよぃ」

『だ、だだだって…あの人怖いし!さっき、"アーン?"って言ってたし…!絶対変な人だよ!』


本当は春菜の後ろに隠れたかったけど、春菜だとたいして身長が変わらない私の体は隠れきれない。

その点、私より身長があるブン太ならすっぽり隠れられる。男だけど一応同居人だから他の男よりは比較的マシだ。



「ぶふっ!へ、変な人って…!」

「あ、あの跡部に変な人って…さすが中津川だな」

「…幸村、この失礼な女がそうなのか?」

「ああ、そうだよ」

「ふーん、面白ぇじゃねーの」

「お嬢さん、良かったなぁ。跡部に気に入られたで」



そういうの、本当にいらない。

でも怖くてそう言えない自分が情けない…。




その後、とりあえず部屋に荷物を置いてから食堂に移動した。

春菜と同じ部屋で本当に良かった!
一人部屋だったら心細くって、ここでやっていく自信なくなるもんっ。
いや、既にないけどね。


しかし、浮かれ気味の私の幸せは、あっという間に奪われることになる。








「よし、これで各校揃ったようだな!」


さっきの変な人(春菜によると、この合宿の主催者らしい)が前に立ち、なんともよく鳴る指パッチンをした。



『うわー…(本当に変な人だ、今時指パッチンなんて誰もしないよ)』


いつの間にか大阪の学校とやらも到着していて、これで全ての学校が揃ったらしい。
この合同合宿は立海と氷帝・青学・四天宝寺という名前の4校のレギュラーで行われるのだと春菜がこっそり教えてくれた。

この情報の無さ……いかに私が急に連れて来られたのかというのが明白である。





「自己紹介は…中学の頃のメンツと大して変わんねーから省略するが、今回この合宿でサポートしてくれるマネージャーだけは紹介しておく。

その場でいいから青学から順番に自己紹介していけ」



その言葉に、春菜を含め三人が立ち上がった。

なんでいちいちあんなに偉そうなんだ、あの人。

なんとなく素直に立つのが嫌で座ったままでいると、正面に座っている幸村くんから冷たい冷気を感じた。


うっ…寒い。



「中津川、幸村を怒らせる前に早く立った方がいいぞ…」

「そうそう!」


隣に座っていた桑原くんとブン太に促され、渋々立ち上がった。





私は別に人見知りなわけじゃない。

ただ、大勢の男の視線が向けられるのに堪えられないだけなんです。


だから睨まないでよ、真田くん…。





「もっと大きな声で喋らんか!」

『立海2年の中津川未央です!!よよよよろしくお願いしてくださいっ…(本当はしなくていいけど)』

「ふふ、日本語間違ってるし全部聞こえてるよ?中津川さん」






  


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