強制連行されました







地獄とは、まさに今であると思う。






『っ、いーやーだーーー!!』

「諦めろって!もう決まったことなんだからよぃ」

『私、そんな話承諾してないんですけど!?……って、ぅぁああ!!美羽なんでバッグに荷物詰めてるのっ!?』

「だって、ブン太お兄ちゃんに頼まれたんだもん」

「未央が自分で準備しねーからだろぃ?」

『美羽ぅぅ!?』

「未央ちゃんっ、ここから先に行っちゃダメだぜぃ!」

「ダメだよー!」

『っ光太くんと草太くんを足止めに使うなんてっ…、卑怯者ーーー!』



何が悲しくて自分の部屋に入れないのだろうか。

これが昨日…土曜日の出来事である。








***


そして今日、日曜日。




「あっ、ブンちゃん達来た!」

「おはよう、ブン太。ちゃんと連れてきたね」

「おぅ、この通り!」

『っ、やだやだ!離してぇえー!!』



ブン太に引きずられるように連れて来られた場所は、立海大附属高校の正門。
持っていたバッグは重いし、朝早いし…最悪だ。

極めつけは……。






「ふふ、おはよう中津川さん」

「うむ、ちゃんと時間通りに来たな」

『っ、ぅあ!?』


ズラリと勢揃いしたテニス部の方々。
頭くらくらしてきた…けど、ハッキリ言わなければ!




『わ、私!行かないからねっ!?合宿なんて!』


そう。

そもそも私がここに連れて来られた理由は、テニス部が他校と合同で行う合宿にマネージャーの手伝いとして参加させられる為…らしい。

私自身、この話を聞いたのは昨日。
行くなんて一言も言ってないのに、勝手に決められたってどういうことですか。




「それは困るなぁ。もう学校側に申請してあるし、他校にもマネージャーの手伝いを一人連れて行くって言ってあるのに」

「合宿に行っている間は公欠扱いになるので大丈夫ですよ」

『そ、そういう問題じゃない!』


公欠になるのはちょっとラッキー………っじゃなくて!
邪まな考えが浮かんだ自分の頭を呪いたい。

他校と合同合宿。
それは私にとって地獄を意味している。




『合同合宿ってことはっ………男がいっぱいいるってことじゃんんん!!』

「マネージャーもいるとはいえ、考えただけでむさ苦しいのぅ」

『い゙やぁあーー!!』


恐ろしい!恐ろし過ぎる!



『わわわ私に死ねって言うの!?』

「人間そう簡単に死なないから大丈夫だよ」


…悪魔だ。
綺麗な顔した悪魔…いや、もはや魔王だ、この人。




「未央…黙っててごめんね?」

『春菜…』

「でも、他校にはマネージャーがいない所もあるし人手がいるの。信頼できるの未央だけだし…、未央と一緒に仕事できたらなって思ってて、」

『うっ………、は、春菜がそこまで言うなら…』



渋々頷いた私に、幸村くんがニヤリと笑ったなんて気が付かなかった。




「最後に春菜に任せて正確だったね」

「中津川は女子…特に春菜には甘いというデータがあるからな」

「お前ら…鬼だな…、」



こんな会話がされていたことも、もちろん私の耳には届かない。





「…む、そろそろ出発の時間だな」

「よっしゃ!じゃあさっさとバスに乗ろうぜぃっ」

「行こうっ、未央」

『うぅっ……うん、』



覚悟を決めたものの半泣き状態の私は、春菜に背中を押されながらバスに乗り込んだ。


これから待ち受けているのは、私にとって人生最悪であるだろう男だらけの合同合宿。
バスの中では、どうしたら極力男と関わらないで過ごせるか必死に考えていた。

一週間後、私は生きてここに帰って来られるのだろうか。






あ、ちなみに、バスの出発時間より5分遅れてやって来た切原くんはバスの中で真田くんにみっちり怒られていた。



「赤也ぁぁああ!!」

『っ、!?』

「なんでお前がビビってんだよぃ…」

『もう帰りたいぃぃ…っ』



既に幸先不安です。





  


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