球技大会と怖い者知らず








球技大会当日、私は自分の試合が始まるまでフェンスから他クラスの試合を観ていた。

うあー…緊張してきた。


私はダブルスに出ることになり、一緒に組む子が中学の頃ソフトテニス部だったらしいと言ったらブン太にダブルスのコツ的なものを教えられた。

なんだかんだ毎日部活の後指導してもらって、正直申し訳ない気持ちである。




「…あっ、試合終わったよ!」

『…!』


キターーー!!

どうか空振りだけはしませんように、恥をかきませんようにっ。


それだけを考えながら、私は春菜と別れてコートの方に向かった。

ペアの子と「頑張ろうね!」と気合いを入れて、試合が始まるのを待つ。






「お、間に合ったか?」

「あっ、ブンちゃんに雅くん、それに精ちゃん」

「昨日ぶりじゃのぅ、春菜」

「今朝は練習なかったもんね」

「中津川さんは?」

「未央ならさっきコートの方に、……あっ、コートに入ってきた!未央ー」




大きく手を振る春菜に私も手を振り返す。

あぁ、緊張が解れる……、?




「未央ー、頑張れよー」


あれ、ブン太もいる。
その隣に友達らしき男がいるっ。

ゔー…よく見たら結構コートの周りに男がいるではないか。


とりあえずブン太にはお世話になったから、応援の言葉に対してコクコクと頷いておく。
隣の男と目が合いニコリと微笑まれ、すぐさま顔を逸らした。


…あれ、今の人と隣の銀髪の人どこかで見たことあるような。
いや、でもどうせ知らない人だし男だし、いーやっ。


そう考えた瞬間、背筋がゾクッとした。

…この間から何なのこれっ!?






「ふふ、今あからさまに顔を逸らしたね中津川さん」

「精ちゃん何したの?」

「別に何も?」

「(あの幸村を無視するとは…怖い者知らずじゃのぅ)」

「(あーあ、俺もう知ーらねっ)」






意味のわからない寒気に首を傾げているうちに、審判から試合開始の合図がかかる。

サーブは私から。
ラケットを握る力にギュッと力を込める。


ポーンと軽くボールを上げた。
二週間じゃテニス部みたいなサーブはできなくて、アンダーサーブを打つ。



――パァンッ





「…へぇ」

「未央ー頑張ってー!」





サーブを打ち、すぐさまネットについた。


"いいか、サーブを打ったらすぐネットに出ろぃ"



『…ネットに出たら、ラケットの面に気をつけて………っえい!!』



"お前は、返せそうなボールだけ返せばいい"



ブン太に教えられた言葉を思い出しながら打った私のボールは、見事相手コートに決まった。



『は、入ったー!』

「よし、いいぞ、その調子だぜぃ!」

『うんっ』



言われた通りにして決まったからか、何故かブン太の声が心強い。
男に対してこんな風に思ったの初めてかも。

それからも、私は自分が確実に取れそうなボールを返し続けた。




「…なんか、未央のプレー…なんとなくブンちゃんに似てるね?」

「そうだね、フォームとかもブン太の癖によく似てるかな」

「まぁ、俺が教えてやったからなっ」

「…明日は雨が降るんじゃなか?ククッ」

「どういう意味だよぃ!」






そんな会話がされているとは露知らず、私とペアの子は一生懸命ボールを拾い続けた。


結果、私達は6‐3で見事勝利!




『うそ…勝っちゃった…』

「やったね未央ちゃん!」

『うん!』


ペアの子と喜びのあまり抱きしめ合った。




「未央すごーい!やったねーっ」

『春菜!』


春菜の元に駆け寄ると、フェンス越しでも一緒に喜んでくれているのがわかる。
チラッとブン太に視線を向けると、グッと親指を立てていた。



「ラケットの面バッチリだったぜぃ」

『…あっ、あり…がとう!』

「お疲れ様、中津川さん」

「お前さん案外やるのぅ」

『……』

「お、固まったぜよ」



ひいぃい!
男が…男がぁ!?


『ど、どどどちら様でしたっけ!?』

「…あれ、春菜から名前教えておいてもらったはずだけどなぁ?」


うぅっ、また背筋がゾクゾクする!

春菜から名前?そんなのいつ教えてもらったっけ。



「おい、マジで覚えてねーのかよ?早く思い出さなきゃ、お前この学校から追放されるぜぃ」


フェンス越しにコソッと囁くブン太に、さっきとはまた違ったゾクゾクを感じなから頭フル回転で記憶をフラッシュバックしていた。


名前、名前…この綺麗な人と銀髪の人の名前…。
早くしないと本気で学校追放されそうな気がするっ。





「中津川さん、まさか本気で思い出せないなんて言う気じゃ…」

『!…は、はひっ!たった今思い出したであります!!幸村くんと仁王くんですね!』

「"はひ"って…。ぷっ…あははっ!」

『わ、笑うな!』


お腹を抱えてゲラゲラ笑うブン太。
くっそぅ、今日の夕飯のおかず分けてあげようと思ってたけど撤回!



結局、私達のダブルスは3試合目で負けてしまった。

…が。

シングルスに出ていた二人が割と勝ち進んだおかげでクラス順位は4位という、クラスが多い立海では好成績の結果で終わることができた。






※ここでは、ダブルスとシングルスそれぞれが勝った合計結果で順位が出る設定です。



  


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