いろいろな意味で馬鹿








『あーあ、三人ともクラス離れちゃったね…』

「そうだね…、」

「でも一生の別れじゃあるまいし」

『相変わらず葉月はクールだなぁ』



掲示板に貼り出されてあるクラス割りの紙を見上げる私と美月と葉月。

実は美月と葉月も立海を受験して、晴れて三人ともまた同じ学校に通えることになったのだけど。
マンモス校と呼ばれる立海はクラスが多いのなんの…。
案の定、三人バラバラのクラスになってしまった。




『うー…、二人がいないと心細いな。クラスに馴染めるかな』

「未央なら大丈夫だよ!それに、たまには一緒にお昼食べよっ」

『…うん、そうだよねっ』


美月の気遣いが嬉しくて私は溜まらず二人の腕に抱き着く。



「未央重い、歩きにくいよ」

『重くない歩きにくくない!』

「ふふっ。…あ、そろそろ教室に行かなきゃだよ」

『本当だっ。早く行かなくちゃ』


私たちは慌てて、それぞれ自分たちの教室へと向かった。




入学式、初めてのHRを終え、あっという間に中学校生活初日が終了した。

運良く私のクラスはみんな良い子たちばかりで。
初めての授業など、初めてだらけのことを経験して一週間が経った頃。


今日は葉月とテニス部を観に行こうと(無理矢理)約束し、放課後、葉月のクラスにやって来ていた。
美月は今日が入部届けの提出日だから、入りたがっていたバレー部に行くと言って断られてしまった。




『はーづきっ!迎えに来たよー』

「…本当に行くの?ここのテニス部うるさいから苦手なんだけどな」

『まぁまぁ、そんなこと言わずに』


葉月が言っている"うるさい"っていうのは、多分コートの周りにいる女の子達のことで。
でも、本当に立海テニス部はみんな凄いしかっこいい人が多いから仕方ないと私は思っている。

葉月の手を引いて教室を出ようとした時、奥の窓際で先生に首根っこ掴まれている人が視界に入った。




……あっ、あのもじゃもじゃ頭!!





「おい、待て。話はまだ終わってないぞ」

「すんませんっ、俺すんげー大切な用があるんで!」

「先生もお前にすんげー大切な用があるんだ」



先生が見せた紙がチラリと見え、そこには英語のテスト0点という文字が書いてあった。


うわ、0点って…。
まだ一年生だから簡単な内容なのに、そんな点数取る人いたんだ。




「どうしたの、未央」

『あ、うん。…ねぇ、あの窓際の人って…」

「…あぁ、切原か」

『切原?』

「切原赤也。授業中寝てるか友達と喋ってるとこしか見たことない」

『…へー』

「知り合い?」

『違うよ!ほら、この間言ったじゃない。入学式の日っ…』

「未央にぶつかってきて飴落ちちゃったっていう?」

『そう!』

「…校門でのことといい、あの点数といい……ただの馬鹿なんじゃない?」

『……』



先生に補習プリントを渡されて叫んでいる切原くんを横目にそう言い切る葉月。


他の人からもそう言われるってことは…。

いろいろな意味で馬鹿なのかも。
切原赤也くんって。








  


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -