今日から頑張ります! …あ、思わず舐めてた飴かみ砕いちゃった。 いつだか、ジャッカル先輩が「ひと月も経たない内に大方が辞めていくだろう」と言っていたのを思い出した。 その言葉通り、4月が終わろうとしている今、あんなにたくさんいた新入部員は半分以下になっている。 それはわかる。 わかるけど、何でこういう話になるんでしょうか? 『えっと、もう一度言ってもらってもいい?』 「だーかーら、お前テニス部のマネージャーやれ!」 『なんで切原くんがそれを言いに来るの?』 「先輩達に言われたんだよ。とにかく、放課後絶対テニス部に来いよな!」 『あっ、ちょ……』 完全に言い逃げるように、切原くんは自分の教室へ帰っていった。 言われなくても、放課後はブンちゃん観に行くけど…。 マネージャーだなんて先輩達は何を考えてるんだろう? *** 「――というわけで、そろそろ部も落ち着いてきたし、是非とも未央にマネージャーをお願いしたいんだ」 『はぁ…』 幸村先輩の言いたいことは何となくわかった。けど、何で私なんだろう。 他にもマネージャーにぴったりな人いるだろうし、むしろ希望する人はたくさんいるんじゃないかな…。 「"どうして私なんだろう"」 『えっ、!?』 「…と、思っている顔だな」 『さすが柳先輩…』 大当りです。 「お前とは一年前に知り合い、その性格などは既にわかっているつもりだ」 「うむ。その上で俺達は、お前がマネージャーとして適性だと考えた」 「丸井くんに対する尽くしっぷりに感服したのですよ」 『い、いやぁ…えへへっ』 「部長には了解済みじゃ」 「俺らも出来る限りサポートするしよ」 「いつも俺にしてくれてるみたいにすれば大丈夫だからよ!」 『ブンちゃん…、』 ポンポンと頭を撫でられると、本当に大丈夫な気がしてくるから不思議。 こんなに言ってもらえてるんなら、頑張ってみようかな…。 『…じゃ、じゃあ…よろしくお願いします』 「ということは、」『マネージャー、やってみます!』 本当は心のどこかで、観てるだけなんて歯痒いと感じてる自分がいた。 頑張ってるテニス部の人達の何か役に立てるなら、頑張ってみようと思った。 「まっ、頑張れよな!」 『うん、頑張るよ!切原くん』 よし! 足手まといにならないように頑張ろうっ。 「じゃあさっそく今日から頼むよ」 『え、今日から…ですか?』 急すぎる展開に頭がついていかないです、幸村先輩。 結局、今日は体育がなくジャージを持っていなかった為、切原くんのジャージを借りた。 『……なんか、心なしか汗とは違う臭いがするような』 「あー、ロッカーに押し込めてあったやつだからな」 『え゙……』 ちゃんと洗濯しようよ、切原くん…。 どうしよう。 今すぐ脱ぎたくなってきた。 「…というわけで、今日から我がテニス部のマネージャーを勤めてくれる、」 『一年の中津川未央です。えっと、たぶん私のこと知ってる人は結構いると思いますが、精一杯頑張るのでよろしくお願いします!』 一気に言い切りお辞儀をすると、部員の人達から拍手をもらった。 はぁ〜…。 こんなに大勢の前で喋るの初めてだから緊張した。 私の紹介が終わると、すぐに部員の人達は練習に戻っていく。 「じゃあ、とりあえず今日は簡単な仕事から教えていくから」 『はいっ』 「……」 『…?あの、どうかしましたか?』 三年生の部長さんが、何やらジッとこっちを見ているので首を傾げながら聞いてみる。 「いや中津川さん、なんか……イメージと違って不思議な臭いがするな」 『……』 私の臭いじゃなくて、100%切原くんのジャージの臭いです部長。 ――部活終了間際。 『切原くんのばーかばーか!』 「いってー!いきなり何だよ!?」 ムカついたから、足元に転がっていたボールを切原くんの背中目掛けて投げておいた。 |