※色々注意










酢昆布を買おうと向かった駄菓子屋でお金が足りない(というか無い)ことに気付き、給料未払いの天パにイラっとして、その鬱憤を晴らす為に暇であろうあのサボリ魔警官相手にひと暴れしようと公園に向かった。それなのにそこは無人で、燻る苛立ちはもう例えようの無い程で。


苛立ちのピークを超え税金泥棒の巣窟へと殴り込みに来た私。これが間違いだったんだ、絶対。



「サドっ」
「んー?何、気持ち良い?」
「ばか、違っ……」


ぞくぞくと背筋を走る気持ちの悪い感覚に、発する声は嫌でも震え掠れた吐息に変わる。それを聞いて意地の悪そうに笑う男は間違いなくいつもは武器を交えている筈のサド野郎で、だけどソイツは今、ただ熱の籠もった視線を私に向けてちらりと紅い舌を見せている。


「ヤメロって、ば」


足の指を隅々まで舌で嬲られ、その刺激に抗うことも出来ずにぎゅっと目を瞑る。なんでこんなことになっているのだろう。数分前のことをほぼ思考能力を失いかけた頭で遡る。


「ね、サド……」
「かわいー声。……感じちゃってんの?」
「ッバカ、死ねっ」


──屯所に乗り込んだ私を迎えたのは、なにやら顔面蒼白のマヨラー。私を見た途端滝のような汗と共に気色悪い笑みを見せ、「ああ総悟か!総悟だよな!」と、頼んでもいないのに部屋へと通された(女人禁制とか言ってなかったっけ)。そして踏み込んだその刹那口にした言葉を、私は盛大に後悔している。



「……本当なァ、いきなり来といて『跪くヨロシ!』って。馬鹿かィ」
「っるせーヨ……」
「だからこの通り、女王様ごっこに付き合ってやってんでさァ。……下僕役、なかなか上手ぇだろィ?」


ちゅぷりと不快な音を立てて、沖田は指から口を離す。透明な糸が繋がる口元を愉しげに舐めるその様子には、羞恥以外感じられない。


「誰もこんなことっ、しろなんて、言ってねーヨ……!!」
「そうだっけ?」
「大体、そんなとこしゃぶるなんておかしいアル……!オマエ、変態も度が過ぎると笑えないネ」


見たことの無い沖田の表情に危険信号は激しく点滅、逃げなければどうにかなってしまうのではないかという妙な焦燥感に襲われる。


「はは、変態ねィ」


乾いた笑いもどこか不気味で、コイツごときに恐怖すら覚えてしまう。原因は判らないが、今日のサディストは憔悴しきったように見えなくもない。


「仕事押し付けられて、自室に閉じ込められて。限界点突破っつーか?土方死ねよっつーか?……そんなときに御馳走が現れんだもんなァ、そりゃ我慢ならねえや」
「御馳走?食いモンなんてどこにもねーヨ!それに、仕事はオマエがサボりまくるから溜まっただけダロ、自業自得アル」
「……鈍感なチャイナさんも好きだぜィ」
「むおぉ!?」


有り得ない告白紛いな言葉が聞こえた所為で、倒れ込むように重なってきた身体を避けることが出来なかった。背中を畳に打ち付けて、地味な痛みに顔を歪める。


「会いに来てくれて嬉しかった。……神楽」


そう言って柄にもなく優しい笑みを浮かべたヤツに、不覚にも見惚れてしまう。そして銀色の何かを取り出した沖田は、恍惚の表情でカチャリとそれを私の手首に掛けた。銀色の、そう、刑事ドラマでよく目にする。


「……オイ」
「なんでィ」


銀色の。


「何アルか、コレは」
「手錠」
「……わんもあぷりーず」
「俺とチャイナを繋ぐ愛の鎖またの名を手錠」


真面目な顔で答えるこの男を滅殺しても罪にはならないですよネ?神様。


「繋がってねーダロ!私が一方的に拘束されてるだけダロ!!」
「えー……、じゃあ、俺のチャイナを甚振り辱め俺に縛り付ける愛の鎖またの名を」
「手錠の使い方おさらいして来いやボケ」
「これが最も正しい使い方でィ」


横暴すぎる発言に言葉を失った私を見下ろし、沖田は満足気に口端を上げる。臙脂の瞳が妖しく歪み、蜂蜜色に隠れながらも鋭く輝くのを見た。



「ってことで女王様。下剋上のお時間でさァ」



王子の笑みに悪魔の言葉、どうあったって抗えないこの男に、屈服するのは結局私なんだ。









それでも触れるときにはとことんお姫様扱いなんだから、狡い。















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ぐらたんに会えないと弱る隊長とか美味しすぎる。




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