「……は、っ」


突然腕を引かれた神楽は、不意打ちのことに抵抗する暇も無く倒れ込む。一体何事かと混乱するのも束の間、自らに触れる別の体温に気付いた。


「っ……!?」


視界を占領する亜麻色。奪われた呼吸に、熱の正体を知る。


「んんっ……」


くぐもった声に沖田の興奮は最高潮だった。求めて止まなかった少女と、それと言うには強引で一方的過ぎるも口付けを交わしている。人を斬った後のものにも勝る高揚感。小さな舌を吸い出し、零れる唾液も残さず掬い取る。


「ん……、チャイナ」
「ふ、うん……」


舌を絡めながら快楽に溺れる神楽の扇情的な姿に目を細め、沖田はその小さな肢体を布団の上に押し倒す。


「チャイナァ」
「や、お、落ち着くアルサド!」


──潤んだ瞳に紅潮した頬、男にしては白い肌にそれはよく映えていて、神楽は胸の奥がむず痒く疼くのを感じた。


「チャイナ……」
「む、ぅ」


止まない口付けに浮遊する意識。沖田の熱がそのまま流れ込んで来ているのではないかという程上昇する体温に戸惑いを隠せない。



「っ!?」



──そのとき、無骨な手が柔らかなソコを緩く包み込む。やわやわと未発達の膨らみを刺激され、神楽はビクンと身体を震わせた。


「っや、めッ……!」


熱があろうがなんだろうが気にしてはいられない。覆い被さるその重量を目一杯押し退け、雄叫びと共に投げ飛ばした。吹き飛んだ沖田はゲホッと息を吐き、呆れ顔で神楽を見遣る。


「お前、何回病人を……」
「るせーヨ強姦魔!死ネ!!」


散らばった沖田の隊服、シャツ、敷きっぱなしの布団に埋もれた枕。とにかく手の届く範囲のものをすべて投げ付け、息を乱したままに沖田を睨む。


「……熱でおかしくなったカ」
「あ?」


(熱に浮かされて、頭パーンってなって)


「……よっきゅーふまん」
「てめ……」
「女だったら誰でも良いんダロ。私じゃなくても別に良いんダロ……!!」


神楽は解らなかった。どうしてこんなことを口走ったのか、どうしてこんなにも胸が痛むのか。


「お前……」
「……ばーか、ばーか、バカサド」
「チャイナ」
「股間ブッ潰れて男じゃなくなればいーアル。社会的に死ぬヨロシ」
「……チャイナ」


じれったそうに名を呼び、沖田はもう一度神楽に口付ける。瞬間紅潮し熱を持った頬に手を添え、今にも零れ落ちそうな雫を湛える目元をそっと撫でた。


「……よく聞けよ。熱があるとは言え、どうでもいい女に手ェ出す程堕ちちゃいねえし、こんなところでテメェをからかう余裕なんてのも無ェ。……解ったか」
「……っ」


いつになく真剣な様子に神楽も頷く他無い。緋色は真っ直ぐに神楽を映し、神楽も負けじと沖田を見つめた。しばらくの拮抗状態が続き、再び沖田が神楽に顔を近付けたことにより空気は色を変える。先程されたキスからの警戒心の為顔を逸らした神楽は、耳の辺りに熱を感じ小さく声を漏らす。そんな神楽を見つめ人知れず微笑んだ沖田は、橙色を寄せそっと囁いた。




「好きだ、チャイナ」









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