「ん……」



身体の節々の痛みに目を覚まし、アイマスクをずらして辺りを窺う。時間の経過を表す空の色は、自分が待ち焦がれる少女を思い出させた。


「……なんでィ、チャイナのヤロー」


──神楽は公園に現れなかった。

いつも自分の姿を見るなり突っ掛かってくるあの少女、しかし今日はその気配すらも訪れず、結果こんな場所で寝たフリを続ける羽目になってしまった。今まではほぼ毎日嫌と言う程顔を合わせていたのに、これはあまりにも不自然すぎる。


「避けられてる、か」


天敵が姿を見せなくなった。清々すると言えれば良いものの、沖田の中での神楽の位置付けは、大きく変わってしまっていた。何度も自分の中で否定した可能性、しかし自分を誤魔化すのも既に限界だった。


「どうしてくれんだ、クソチャイナ」


土方の言葉が反芻する。

自覚したなら機会を無駄にするな、と。自分と神楽が睨み合う様子を生温い目で見ていた土方は自分の気持ちを見透かしていたのだろう。それは少々癇に障るが、事実、沖田は神楽に抱く感情をはっきりと認識した。


(惚れただ何だっつうのは不得手なんだけどねィ)


ベンチから立ち上がり、沖田は歩きだす。真選組の斬り込み隊長である自分が、いつまでも受け身で居るつもりは毛頭無い。



「ただの事故で終わらす訳にはいかねえや」



自分から逃げられると思っているなら大間違い。

サディスティックな笑みを浮かべ、沖田は万事屋への道を辿り始めた。






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