事ある毎にぶつかり合う真選組と万事屋、沖田と神楽はその中でも特に激しく争っていた。



「死ぬヨロシ、腐れサディストぉぉぉっ!!」
「テメェがなァ、似非チャイナ!」



事件が起こったのは、いつもの喧嘩のその最中(さなか)。お互いが得物を手に飛び掛かり、体格の差で沖田は神楽を押し倒し、神楽は組み敷かれたまま攻撃を繰り出す。バランスを崩して神楽にのしかかる沖田、それを押し退けようとする神楽。
──タイミングというのは、嫌なときばかり合うもので。



『っ……!?』



目を見開く両者、あまりの衝撃に身動きすら取れず重なりあったままの身体。……重なっているのはそれだけではなかったが。


「かっ……!!」
「あー、総悟の奴、とうとう……」


傍観に徹していた保護者達も、思いがけないハプニングに反応せずには居られなかった。ただ土方は自覚無しの沖田の気持ちに気付いていたようで、良くも悪くも二人の関係に変化が訪れるだろうことを予測しほくそ笑んだ。


「ちょっと何しでかしちゃってんのそこのドSぅぅぅぅ!!?」


そんな場面に空気の読めない親馬鹿が一名。未だ神楽の上で放心状態の沖田を蹴り飛ばし、同じく放心中の神楽を抱き起こす銀時。その顔はまさしく般若そのものであった。


「神楽!息を吹き返せ神楽ァァァ!!」


着流しの袖で神楽の唇をひたすら擦るその姿に、土方は呆れ顔で溜息をついた。この男が居る限り我が家の王子は報われないかもしれない。


「……おい、総悟」
「…………」


空を見つめたまま動かない沖田。唯一とっている行動といえば、自身の唇を覆うように掌を顔面に押し付けていることだった。案外ウブなところもあるモンなのかと吹き出しそうになるのを抑え、土方は沖田の頭をバシンとはたく。


「接吻ぐれえで情け無ェ。やっと自覚したんならこの機会、無駄にすんじゃねーぞ」


回復にはまだ時間の掛かりそうな部下と、飽きもせずに喚き続けている銀髪、そして沈黙を守ったままの少女を背に土方はその場を立ち去る。



「どう出るだろうな、アイツは」



不器用な弟分のささやかな幸せを思い、微かな笑みを浮かべたまま静かに紫煙を吐き出した。







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