「はぁい時間切れェェェェ!!」



──頭上を突っ切る殺気。誰のものかなんて、土方を殺すより容易い。


「ちっ。……旦那ァ、空気読んでくだせぇよ」


そこに居たのは、木刀片手に瞳孔を開かせ俺を睨む万事屋の旦那。瞳孔キャラは土方だけで十分でさァ。


「ちっ、じゃねーよ。お兄さん人の話聞いてた?藻屑希望なんですかァ?」
「まだ大層なことはしてやせん。安心してくだせェお義父さん」
「誰がお義父さんんん!?」


腕の中のチャイナを俺から取り上げた旦那は、自分の羽織っていたシャツを着せた。しかしアロハシャツのようなソレからはチャイナの胸元が大いに見えていて、顔を顰めた旦那はチャイナをひょいと抱き上げる。苛ついたのは言わずもがな。


「今回は見逃してやるけどなァ、次同じことしたらハゲ召喚するからな、ハゲ!」
「勘弁してくだせえよ、結婚の挨拶にはまだ早ェ」
「閻魔様への挨拶にならもう良い時期だと思うよ?」


青筋を浮かべながら笑う旦那。暫くはチャイナに近付かせてくれねえかもなァ、……強行突破するけど。


「肝心なこと言わねーで美味しい思い出来ると思ったら大間違いよ、沖田くん」
「!」
「神楽ァ?いい加減戻ってこい。惚けたまんまじゃ晩メシ食い逃すぞ」
「……や、焼肉っ」
「そうだぞー焼肉だぞー」


親子の会話をしながら去っていく二人。ホントあの御方は……、邪魔したいのかそうじゃないのか。


「チャイナ!」


振り返る旦那に、挑発気味た笑みを送る。曲がりなりにも背中を押して貰ったんだ。遠慮無く上がらせて貰いまさァ、その土俵に。



「好きだぜィ」



それだけ告げて背を向けた。旦那がどんな顔をしてるかなんて、見なくても分かる。……あ、マヨラーが走って来らァ。


「くぉら総悟ォ!!テメエ今まで何処で油売ってやがった!?」
「休憩でさァ、休憩」
「長ェんだよ仕事ナメてんのかあ゙あ゙!?」
「んなことある筈無いでしょう。俺がナメてんのは土方さんだけでさァ」
「死ぬかテメー!!?」




試合開始はかぶき町に帰ってから。
──なあ、チャイナ?







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