「……チャイナ、あそこ」


大きな岩を指さし、チャイナを覗き込む。ほんのり汗を掻いた様子に心臓が騒ぎだすも、此処で盛ったら確実に今以上に嫌われる。抑えろ沖田総悟……!


「あれくらいの陰ならあんま陽射し気にしなくていいだろ。海浸かれるし、ちょっとは楽しめるんじゃねェ?」
「おお……!!」


途端にキラキラ目を輝かして岩陰に駆け込むチャイナ。「サドも早くー!」なんて手招きするその姿に鼻血を我慢する俺。今日のチャイナは危険だ、萌え死ぬ。


「入るならシャツ脱げよ?後から困るだろィ」
「おうヨ!!」


なんの躊躇いも無くシャツを脱ぎ捨て他より浅めのそこに身体を沈めるチャイナには、いつもの毒気が全く見当たらない。ていうか凄ェ恋人っぽくないか今の俺ら。変な期待しちまうぞオイ。


「サドは入らないアルか?」
「あ?いや、俺はいい」


あの暑苦しい上着とスカーフが無いとは言え、シャツにベストは標準装備。この格好で海に入るのは気が引ける。


「勿体ないアル」
「いーの。お前見てりゃ楽しいから」
「なんだヨそれ」


岩に凭れながら言った俺に、チャイナは少しだけつまらなそうな顔をしてからまた海と戯れ始める。


「まだまだガキだねィ……」


呟きは吹き去った海風に攫われる。涼しくなってきたなァ、と乱れた髪を掻き上げれば、腕を擦りながら海から上がるチャイナ。


「さっ、寒いアル……!!」
「ああ、だろうな」


濡れた身体のままTシャツを拾い上げるも、それはぐっしょりと水を吸いきっていた。先程の風で飛ばされてしまっていたようだ。


「うあ゙あ゙……」
「着れねえなァ、そんなんじゃ」


半泣きで助けを求めるよう視線を送るチャイナ。弱った様子に悪戯心が芽生える。


「チャイナ」
「なんだヨ……」


俺は両腕を差し出し、チャイナをじっと見据えた。



「おいで。」






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