うみべのまほう (1/5)








「クソ暑ィ……。死ねよ土方」
「なんで俺!?」


照りつける太陽に、鬱陶しい暇人達。ああウゼェ。バズーカで一掃して良いですか良いですよね。


「恐ろしいこと呟いてんじゃねえよ」
「あれ、やべぇ暑さにやられて幻聴が聞こえらァ。おっかしいなぁ」
「めんどくせーなテメェは!暑ィのは皆同じなんだよ八つ当たりすんな!!」
「そんなに騒いだら暑さで昇天しちまいやすぜ?まァ、俺はその方が……、!」
「……あ?オイ。コラ何処行きやがる総悟ォォォォ!!」


視界に入った鮮やかな色彩に一瞬で怠さも吹っ飛ぶ。土方の怒声を背に、俺は若干早足で砂を踏み出した。元々お偉いさんの娘の護衛の為に無理矢理真夏の海に駆り出されたんだ、少しくらい楽しんでも許されるだろ。


「銀ちゃーん、スイカ割りしたいヨ」
「馬鹿言うんじゃねーよ。スイカなんて無えし、お前傘手放せないだろうが。大人しく日陰に居なさい」
「そうだぜィチャイナ。人気の無い岩陰で俺とイイコトしやしょーや」


まさかこんなところで会えるとは。なんの因縁か遭遇率の高い真選組と万事屋、今回も例外では無いらしい。


「うっわサドヤロー。こんなとこまで着いて来るなんてどんだけ私のこと好きアルか」


Tシャツこそ着ているものの、チャイナは水着だった。華奢で透けるように白い身体が露になっている。……やっべえ興奮すらァ。


「ちょ、沖田くーん?さっきの発言何?警察が犯行予告ですかコノヤロー」
「嫌だなァ旦那、冗談ですよ冗談。チャイナァ、あそこのホテル行こうぜ」
「冗談じゃないよねむしろガチでヤるつもりだよねェ!銀さんそんなの許しません!ひと夏だけの燃えるような恋なんて許しませんんん!!」


のぼりを手に今にも飛び掛かって来そうな勢いの旦那を、地味な眼鏡が後ろから必死に押さえ込む(居たのかィ新八くん)。よくよく近くを見れば、なんだか寂れた海の家を見つけた。


「旦那方は、仕事で?」
「そ。こんなクソ暑いときになーんで人様の為に料理作らにゃあならんのかね。まあそろそろ客も減ってくる頃だろうけど」


言われてみれば、日は傾いてきているしあれだけ居た人も徐々に少なくなっているように見える。気温も、さっきよりは大分マシだ。


「今日はゴキブリじゃねーのな。あんな格好してたらトイレスリッパで叩き潰してやるのに」
「隊服が黒だからってそんな不愉快な呼び方しねえでくだせェ。……まぁ、流石に夏の浜辺であの上着は自殺行為ですからねィ、仕事の効率上げる為に制服改革を起こそうと画策してるところでさァ」


わざとらしく大きな溜息をつけば、背中からトン・と小さな衝撃。振り返ると、何を意味するのか俺の背中に拳を押し付けるチャイナが居た。


「……いつもサボってるクセに、よく言うアル」
「なんでィチャイナ、構って欲しくなったのかィ?」


茶化すように言えば、チャイナは暑さの為か赤らんだ顔できっと睨み付けてくる。はっきり言って可愛いだけだ。


「……沖田くん、ウチの神楽ちゃん、日中なーんも出来なくてつまんなかったみたい。遊んできてあげて?」
「銀ちゃっ……!?」
「勿論いかがわしいことは禁止だから。そんなことしたら海の藻屑よ?」


俺から見てもどす黒い笑顔で旦那は言う。しかし折角の計らいだ、了承しない手は無い。


「分かりやした。行ってきまさァ」






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