誕生日ごときにはしゃいでいるのかなんていう誤解はされたくないし、ましてや、お前に祝ってもらいたいんだなんて死んでも言えない。素直になるなんて到底無理、言葉じゃ何も伝えられない。だから。


「オイ」
「なんでィ」
「解けコラ」
「……嫌でィ」


縛ってみた。


「ふざけんじゃねーゾ、いきなり何アルカ。残念ながら私はドMでもメス豚志望でもないネ」
「まぁまぁ、中々似合ってんぜ?」


見下ろす橙。嗚呼、絶景かな。怒りに染まる顔色も、この状況ではどうにも淫猥なものに見える。
「プレゼントはわたし(はぁと)」
的な画を狙ったつもりが、どうやら無意識に性癖が働いてしまっていたらしい。その結果、現在俺は非常にムラムラしている。


「空腹状態を狙うとは汚い奴アル。別にこんな縄ぐらい余裕で引き千切れるけどナ」


言いつつもぞもぞと身を捩るも腹が減って力が出ないのかいつまで経っても縄が切れる気配は無い。強がる姿は更に加虐心を煽る。


「……何にやにやしてるネ」
「いんや?別に」
「なんかバカにしてる顔アル腹立つ!大体、麗しきレディにこんな物巻き付けるとは何事アルカ!サビみたいな色で汚れてるし」
「ああ、それ拷問のときに使ってたヤツだから」
「血じゃねーかヨ!おっ前、ほんと外道だナ」


顰めた顔と冷めた目に新境地の悦を感じた。あれ、俺ってMだっけ。


「……せっかく祝いの言葉でも言ってやろうと思ってたのに」
「え」


チャイナの不貞腐れた呟きに耳を疑う。祝いって、祝うって。もしかして知ってる?いや、でも、なんで。間違っても俺からは言ってない。言えていたらこんな回りくどい(下手したら殺される)行動など取ってはいないのだ。


「誕生日、なんダロ」
「そんなん、何処で」
「トッシーがわざわざ教えに来たアル。ご丁寧に一週間も前にナ」


勝手なことしやがって土方コノヤロー感謝なんてしねーぞ。
俺の気持ちなどお見通しだとでも言うように余計なサプライズを仕掛けていたお節介な上司。内心で面白がっていたのかと思うと即刻抹殺したいが、目の前のチャイナの反応を見る限りそれは見送りとなりそうだ。


「オマエの欲しいモノは分かってるネ。トッシーが言い残していったから」
「……それで?」


欲しいモンなんてひとつしかない。それが分かっている、つまり本当に。


「……お誕生日おめでとうアル、沖田。プレゼントは、っ……!?」


──言葉を遮りチャイナを抱き締める。柔らかな身体に硬い縄は邪魔でしかなくて、俺は乱暴にそれを解いた。突然のことに混乱しているのかされるがままのチャイナ、押し倒し跨ればその小ささに改めて気が付く。同時に湧き上がるのはやはり相手を求める欲情、勿論チャイナ限定で。


「チャイナ……」
「うあ、さ、サド?」


腕に残してしまった擦り傷に舌を這わせる。その度にびくりと震えるチャイナにまた興奮。あー、理性って何だっけ。つーか俺、凄ェ素直じゃね?


「チャイナ」
「な、んだヨ……」


見開いた碧い目は潤み、怒りよりも羞恥に色付く桃色の頬。何コレ美味そう。


「ありがたく頂きまさァ、“プレゼント”」
「っへ、むっ……!?」


何処からか転がり出た小さな包みが気になったものの、最早自制の利かない自分に待てを掛けるつもりも無い。噛み付いたチャイナの甘さに夢中になるのは時間の問題で、唇の柔らかさに思考は融解。誕生日なんざどうでもいいと思ってたが、こんな良いモンを貰えるってんなら悪かねェ。



(おめでとう、俺。)






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副長は隊長の為にチャイナさんに嘘の『欲しい物』を教えていたとか。


2012.7.29




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