山崎は見た。地味故に忘れ去られた己の存在をして、壮絶なる少女の奪い合いを、見た。



「神楽は俺のお嫁さんになるって約束したんだヨ。兄ちゃん大好きーって、いつも言ってたし」

「いつの話してるアルカ」

「俺ァいつでも狙ってるなんて言われやした。逆プロポーズですよねィ」

「うん。狙ってるって、首をナ」

「勘違いは痛々しいヨ?オキタくん」

「オマエもナ、バ神威」

「そうですぜお義兄さん。子供時代の口約束なんてもう時効でさァ」

「……オマエはいきなりどうしたネ。殺気に当てられて狂ったのカ?」

「失礼なこと言うんじゃねえや、ばっちり正気でィ。……好きだぜチャイナ。」

「ちょっと黙ろうかキミ」

「やっぱり狂ったアルナ」



山崎は見た。恋に溺れゆく上司の幸せそうな崩壊を、見た。





2012.6.2




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