2.




阿呆っぽいマントを脱ぎ捨て、野郎共を纏める為に張り付けた支配者の仮面も外し、皇帝からは仕事上がり。決して少なくはない稼ぎに更に飾りを付けた程度の中々上等と言える我が家への帰宅、それは沖田にとって何よりも至福の時だった。


「今帰っ……」
「そーご、お帰りアル!」


可愛らしい足音と共に駆け寄って来たのは、本人の趣味とは到底思えないフリル満載のエプロン(結婚祝いとしてあの暗黒物質製造を得意とする彼女に貰ったらしい)を着けた、しかしこちらが悶える程それが似合ってしまう愛しの妻。


「神楽……」


靴も脱がずに引き寄せて、華奢な身体をきつく抱き締める。気の進まない仕事の話を聞いた所為ということもあり、その存在が堪らなく愛しい。


「……どうしたネ。疲れたアルか?」


労るように背中に添えられた手、伸びた爪先が小さく震えているのが目に入り、名残惜しくも腕の中から一旦の解放。


「ああ、少しな。大したことじゃないから、心配しなくて良い」


頬に口付けて小さく「ただいま」と返せば、桜色の唇がむっと山を描く。どのタイミングでかは解らないが、拗ねてしまったようだ。


「疲れたんならさっさと仕事モード解除するヨロシ。私はバカイザーの帰りを待ってたんじゃないネ」


膨れた頬をそのままに隊服のスカーフを解き、神楽はぼそりと呟く。靴を脱げと乱暴に脚を蹴られるも、嬉しい妻の一言に沖田は顔を綻ばせる。


「……今日の晩飯、何でさァ?腹減り過ぎて死にそうでィ」


その言葉にニヤリと笑顔を浮かべたかと思うと、神楽は得意げに胸を張り挑発的な視線を沖田に向ける。余程料理の出来に自信があるのだろう様子だが、夫はそんな姿に残念ながら別の欲求を掻き立てられてしまった。


「フハハ!聞いて驚けヨ今回はハンバー……」
「やっぱ先に神楽サンいただきまーす」
「っオイ!バカ盛んナ!!」
「無理無理。前菜とメインディッシュはツンデレチャイナって相場は決まってんだぜィ」
「死ねヨ変態……」






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