3.




「あ?新八ィ?此処にゃ来てねーよ、実家じゃねえの」
『────……』
「……あー、わァったわァった。行くから大人しく待っとけ」


遠い意識の中聞こえた怠そうな声。頭を小突かれ重い瞼を持ち上げれば、相変わらずの死んだ目がこちらを覗き込んでいた。


「ぎんちゃ……?」
「はよーさん。つってももう夕方だけど」
「え。」


その言葉に意識は覚醒。見事なオレンジ色に染まった視界に飛び起きた神楽は銀時に頭突きをかますことになったがお構い無し、慌てて起き上がり乱れた髪を整えると、玄関目指しチャイナ服をひるがえした。


「っ痛ェ……、あ、帰んの?」
「ウンっ!早く帰らないとそーごが」


早く家に帰って夕飯を作らなければ。それに、出迎えが無いと沖田はへそを曲げてしまう。機嫌を直すのにどれだけ骨が折れることか。そして最終的にはベッドに転がされ、嫌という程愛情と称した辱めを受けることになるのだ。考えるだけで身震いが止まらない。


「お前、沖田くん今日は遅いとか言ってなかったっけ」
「……あ」


そういえば、と声を漏らす。同時にすっかりあのS男に支配されてしまった自身の思考を恨んだ。神楽は靴に差し込んだ爪先を引き抜き、小さく沸いた怒りを顔には出さないよう平静を装いながら再びソファーに身を沈める。


「……もうちょっと寝るアル。夕飯には起こしてヨ、マミー」
「誰がマミーだコラ。あー、待て待て神楽。寝るのは勝手だけどよ、先にすまいる行ってくんね?傘持って」
「すまいる?」


銀時が指で差した窓を見ると、張り付く雨粒が雫を垂れている。寝惚けていたのか、よく聞けば弱くはない雨音も聞こえてきた。


「雨降ってきてんだろ。お妙が持ってきて欲しいだとよ」
「姉御、傘忘れたアルカ?」
「そー。で、なんか新八も電話出ねえって。買い物にでも行ってんだろうけど」


弟の雇用主扱き使おうなんて良い度胸だよな。銀時はうんうんと頷き神楽の肩に手を置くと、至極真面目な顔で口を開いた。


「という訳で。いってらっしゃい従業員A」






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -