※3Z土→神(←)沖
※すっきりしない




「怪我してんじゃねえか」


マヨ中でニコ中なクラスメイトの指摘に、ああ。と気の抜けた声を漏らす。
傷の治りが他人より早い私の右頬に擦過傷。それが意味するのは、この傷が数分前に出来たものだということ。


「サドのが一発掠めたネ。不覚アル」
「……女ならもっと気にしろよ」
「流石トッシー、解ってるネ。そーヨ、私は可憐な乙女アル。なのにあのクソサドヤローは女じゃないって言うのヨ」


さっきの喧嘩は気分も後味も悪いもので、やけに女は男はと不得手な方面の話を持ち出してくる奴にキレた私が原因と言っては原因なのだけれど。いつもはもっと、昨日のテレビとか、ゲームの話とか、学食の日替わりメニューの話とか、そんな他愛の無い会話で、でもそれが楽しくて。


「お前に男なんか出来る筈ねー、居たらそいつに謝礼払ってやってもいいぜ、とか言って」
「謝礼、ね」
「バカにしすぎじゃネ?あいつの目ほんと節穴じゃネ?サドごときに私の魅力なんて解る訳ねーんダヨ。私だって本気出せば、彼氏、ぐらい……」


自分で言ってなんだか虚しくなった。マヨラーが何も言わない所為で沈黙が気まずくて、既に中身も入っていない紙パックのストローを吸い上げる。
そういえば、屋上に沖田以外と居るの、初めてかも。


「……だったら」
「んー?」
「だったら俺にしとけ」


──べこん、と紙パックの側面が沈んだ。


「……ん?」
「総悟を見返したいんだろ?都合の良いことに、此処にてめーを好いてる男が居る。それに、謝礼なんてモンも貰えるらしいしなァ」


マヨ片手ににやりと笑う様子は微塵も格好良さを感じさせない。おかしいなー、見た目が良い人間は何やっても様になるってアレ、嘘か。


「……ん?つまり、どういうことアル?」
「同情に値する理解力の無さだな。……いや、ストレートに言えってことか」
「オイ。最初貶したダロ」


老け顔の癖にむかつく。きっと理解出来ないのはジェネレーションギャップが生じているからだ。


「失礼なこと考えてんなよ」
「!!……なんで解っ」
「顔に書いてあんだよ。……まあいい。本題に戻る」


そう言ってマヨラーはマヨを置いた。ん、マヨラーがマヨを手放したら何になるんだろう。……ラー?ただのラー?なんてことを思い巡らせている内に、視界のクリアさが増した。あ、眼鏡。


「好きだ、チャイナ娘。俺と付き合ってくれ」
「……へ」


──人が持つ赤は、この青空に酷く不釣り合いだ。










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