「あ、歩く公害アル」
「誰が光化学スモッグだコラァ!!」
「おお!そのツッコミ、流石マヨラーネ!その調子なら新八越えも夢じゃないアルヨ!!」
「いつから俺は眼鏡を目標にしたんだ」


そこから始まる少女と男の可笑しなツッコミ談義。最早異次元レベルの掛け合いに振り返る通行人達だが、大半は黒衣にビクつきそそくさと去っていく。
……そんな様子を面白くないとでも言うように目を細め静観するのは、こちらも黒衣を纏う青年。
目線を落とせば、靴裏で躙られた煙草。ヘビースモーカーの筈が少女の前では常識人を気取る上司を鼻で笑おうとするも、苛つきに歪む口元は隠せない。
ち、と小さな舌打ちは、二人の耳に入ること無く静かに散った。


「やっぱりまだまだアルなー。所詮はマヨラーネ」
「あれ、普通にショックなのはなんでだろう」
「その悔しさをバネに精進するヨロシ」
「俺の方向性が解らねえよ」


呆れ顔に乗せた、仲間内には見せたことの無いような笑顔。橙色に置かれた手が、くしゃり、その頭を撫でる。


「…………」


──ガチャン。


「……変な気を起こすのは止めようか総悟くん」
「至って普段通りですぜィ、土方さん」
「そうだなお前にとっては至極普通のことだな。しかしバズーカは一般的に人様に向けるモンじゃねえ」
「土方さんは装甲車並みなんで相応だと思いますぜィ?頭のお堅さが」


鈍く光る口径××mm。
土方の血の気が引いたのは言うまでも無い。


「……ああ、コレか。うん、コレな。」


神楽からそろりと手を離し、沖田の判り易過ぎる反応にニヤリ、口角を上げる。瞬間気が付いたように無表情を装う沖田がその物騒な兵器を構え直す前に、神楽に見向き肩に手を置いた。


「……ま、頼んだ。」
「ハ?」
「土方てめえマジで死ぬか」
「条件は悪くねえと思うぞ?少なくとも、いや、確実に今よりは良い生活出来るだろうよ」
「何の話ネ」


怪訝顔の神楽は、成程相当鈍いらしい。顔と態度に好意を曝け出されても尚部下の気持ちには気が付いていない様子だ。
面白くなった土方は横目で蜂蜜色を盗み見、まるで敵将と対峙でもしているかのような険しい表情は吹き出しそうになるのを堪える程であった。


「安心しろ。ドSだ何だ言ってるが、手前の大事なモンには気持ち悪ィ程甘ェからな」
「だから、何の話だっつってんダヨ腐れニコチンがァァァ!!」


べらべら捲くし立てる土方に憤怒。殴り掛かったその拳を止めたのは、向けられた土方本人の腕ではなかった。


「……テメエの相手は俺だろィ」
「はん、上等アル!!」


始まる戦闘、逃げる民間人を尻目に意図を読む。


「自分だけ相手にしてろってか?……は、餓鬼らしいな」


止めても無駄。
責任を放棄し踵を返す土方は、背後からの意志無き敵に気付くことは出来なかった。




「……あ。トッシーに当たっちゃったヨ、ベンチ」
「あん?どうでもいいでさァ、おら余所見すんじゃねェ、よ!」
「う、お!」


遠い意識の中聞こえた嬉しげな沖田の声。土方は怒りも忘れ喉の奥で小さく笑う。



「クソチャイナ!」
「クソサド!」



──その後、死にかけの男は通行人の通報により発見、一命を取り留めた。
すべての元凶である少女と青年は、男を放置、罵り合いながらも二人駄菓子屋へと足を向け去っていく様子を目撃されている。



「……だから餓鬼は嫌いだ」



無邪気な恋の被害者は一名。









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山田さまリク
『沖神+土で嫉妬沖田』

大変遅れまして申し訳ございません…!リク要素も不足で本当に土下座ものです。
土方さんのキャラがいつも以上に迷子。それでも読んでくださればありがたき幸せです…!

リクエストありがとうございました!


2011.12.22