大江戸美少女騒動 前 「真選組がまたやらかしました!今度は民家を半壊です!!」 白煙が立ち込める現場、カメラと共に颯爽と現れたのは興奮状態のアナウンサー。忙しなく動き回るスタッフ達を後ろに、特ダネに輝くその目は一人の青年を捕えた。 「一番隊隊長、沖田総悟さんですね!?」 「あ、カメラ?勘弁してくだせェよ。そういうのは事務所通して貰わないとー」 肩に担いだバズーカを置き迷惑そうな表情を作ると、沖田はわざとらしく両手で顔を覆う。そんなことはお構い無しで質問を浴びせ続けるアナウンサーと、集まり始める野次馬達。その陰で、3つの人影がこそこそと崩れた民家から這い出した。 「良いか新八、神楽。俺らが噛んでるって気付かれたら面倒だ、さっさとずらかるぞ」 「はいっ」 「おうヨ!」 目を合わせ頷き合う3人、──万事屋一行。依頼という形で不本意ながらも真選組に協力することになった彼らだが、その任務も沖田の暴走によって無かったことになってしまった。これ以上現場に居ても何の得も無い。それでもきっちり依頼金は貰おうと屯所に向かう為、銀時はテレビ局と大衆の注目を避けるように隠れ、従業員の少年少女に指示を出す。 「……よし、行くぞ!」 銀時に次いで神楽、若干出遅れるも新八が走りだす。 「あっ、現場から誰かが走り去って行きます!現場の状況を何か知っている方々でしょうか!?追ってみましょう!!」 「げっ!?急げテメェらっ!!」 「はいいっ!!」 叫ぶ銀時の声を聞きぐんとスピードを上げたとき、風に煽られた傘が神楽を太陽の光に晒した。 「っ……!!」 よろめいた拍子にテレビ局の機材コードに足を引っ掛け、神楽は盛大にすっ転ぶ。 「ふぎっ……!!」 地面との激しい口付けを覚悟しぎゅっと目を瞑るも、予想していたような衝撃は訪れなかった。神楽は恐る恐る目を開け、現状を確認する。 「なーにやってんでィ、アホチャイナ」 「!」 後ろから感じる熱に、耳元で聞こえた低い声。胸の下辺りに回された腕が自分を支えていることに気付く。 「サ……」 「すみません、関係者の方ですか!?」 「!?」 自分の足でなんとか立ち直すと、鼻先にマイクが突き付けられている。鼻息の荒いアナウンサーは興奮気味に神楽に詰め寄り、カメラはしっかりとそれを収めていた。 「ふあ、ち、違うアル!私はただの通りすがりアル!いたいけなごく普通の少女ヨ!!」 「それではどうして現場から逃走を……」 「すいやせーん」 沖田は傍らに落ちていた紫の番傘を拾い上げ、なおも神楽を捉え続けるカメラからその姿を遮った。 「もう撮影は止めて貰えませんかねィ」 「え?いや、まだお話……」 「コイツは本当に関係ありやせん。……それでもまだ消えねえっつうなら」 沖田はにっこりと笑うとアナウンサーから無理矢理マイクをひったくる。そしてあろうことかそのマイクをアナウンサーの口に突っ込んだ。 「っふぐ!!」 驚きのあまり尻餅をついたアナウンサーを見下ろし周囲の野次馬にも一瞥くれた後、沖田は手錠を取り出し今度は悪魔のような笑みで口を開く。 「全員まとめて公務執行妨害で逮捕しやすぜ?」 ──その声は空気を凍てつかせ、人々は蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。 「……警察のすることじゃないアルな」 「現場の処理やらやることは山程あるんでねィ、邪魔でしかねえやあんなのは。あ、後は頼んだぜィ」 「え、隊長はどちらへ?」 「ちょいと協力者に礼を。……チャイナ、今日は世話になった。なんか奢ってやらァ」 「マジでかぁぁぁ!!」 「ちょ、隊長ォ!?」 → |