帰郷!受け継ぐ想い、希望の手*4
女の子は力が弱いから男の子が助けてあげなきゃ、的な発想はサテライトにもなかったが、こんな仕打ち…!
帰郷!受け継がれる想い、希望の手*4
『うぅ…これを運んでこれを…』
私たちは鉱山で労働を強いられている。
力のある遊星と京介は鉱石を掘る仕事、私は、「女子だから」という理由ではなく「力のない使えないやつだから」という理由で、彫られた鉱石を運ぶ仕事を割り当てられた。
ばかやろー!物を運ぶ仕事だって力いるんだよ!!!
私が行ったり来たりしていると、見覚えのある男性に話しかけられる。
「…ろじこちゃんかい?久しぶりだね。」
『セルジオおじさん!!』
そうだ、すっかり忘れてたけど、私はニコとウエストの父親、セルジオおじさんの行方を探さないといけなかったんだ!
私はニコとウエストが心配していると伝えると、セルジオおじさんは、悲しそうな顔で、ここに来たからにはただ働くしかないんだと言うばかりだった。
ここに長くいると、やはり希望を失ってただ体を動かすだけの労働人形になってしまうんだ…
私はセルジオおじさんに、体を大切にねと声をかけ、仕事に戻った。
すると、どこからか隙を見て仕事をすっぽかした遊星と京介がこちらに向かってくる。
「ろじこ、無事か!」
『遊星ー!もう無理!ニートにはキツイよー!』
「もう大丈夫だ。外につながってそうな穴を見つけた。そこから脱出しよう。」
すると、そこへセルジオが声を聞いてやってくる。
「たぶん、出られないよ。私も何度も試みたが、だめだった…ろじこ、きみも無茶をしないほうがいい。」
『セルジオおじさん…』
「ろじこ、知り合いか?」
私は遊星にセルジオおじさんを紹介し、そもそもは友達の父であるこのセルジオおじさんを助けるために、シティからクラッシュタウンに来たといういきさつを話した。
「私はここを死に場所に決めたんだ。」
『そんな!セルジオおじさん!』
「もしも無事に脱出できたなら、子どもたちに街を出るように言ってくれ。そして、すまなかったと伝えてくれ。」
『だめよ!ニコとウエストはずっとセルジオおじさんの帰りを待ってるの!』
「…すまない、ろじこ。私はもう疲れたんだ…」
そこへ、遊星が喝を入れる。
「子どもたちはろじこに頼んでまであなたに会いたがっている!親であるあなたが諦めてどうする!!子どもにとって親がいないということは、それだけで孤独なんだ!!」
「…!!」
『遊星…』
そうだ、遊星も私も、そして京介も、みんな親のいない子どもの孤独を知っている。
「クラッシュタウンを昔のサテライトと同じにしてはならない!そうだろ鬼柳、ろじこ!?俺たちであの街を解放するんだ!」
「……」
『そうね、遊星。…あとマルコムは一度シメないと気が済まないわ。ねぇおじさん、クラッシュタウンタウンに帰ろう!』
「ああ…!希望があるというのなら、しがみついてでも私は子どもたちに会いに行く!」
『セルジオおじさん!』
私たちは、脱出するわずかな希望を祈る。
遊星について行くと、洞穴の入口があった。
ここからわずかに風が吹いているため、外界とつながっているんだろう。
そこにはギリギリ歩けるほどの足場があるが、どこまで深く抜けているかわからない大きな穴が洞窟の中央にあいている。
「足を滑らせないように気をつけろ、落ちたらおそらく…」
…ごくり。
遊星の注意通り、私たちは足場に気をつけながら道を歩く。
ゴロゴロ…
すると、側壁が崩れたのか、京介の頭上から土砂が流れてきた。
『!っ…京介、頭!!』
「鬼柳!」
「!!」
「鬼柳さん…!」
セルジオおじさんが前方を歩く京介を突き飛ばす。
するとセルジオおじさんの頭上から降ってきた土砂に足場を失い、穴に落ちかけたセルジオおじさんは腕一本で足場にぶら下がる。
「……オッサン!!」
今まで口一つ開かなかった京介が叫ぶ。
私たちとセルジオおじさんの間にはなだれた土砂が積もり、手を伸ばすことができない。
私と遊星は、何か長いものをと辺りを探す。
「鬼柳さん…無事ですか?」
「オッサン!!何で俺なんかを助けた!!あんたは子どもたちに会うんだろ!俺より生きる価値があるだろう!!」
「そんなこと、ないですよ。あなたは人々の希望になれる。…ろじこちゃんが、前にあなたのことを嬉しそうに話していたんですよ。」
「ろじこが…」
「かつて仲間を導き、偉業を成し遂げた。」
「……」
「もう会えないかもしれない、でも私は一生リーダーについて行きたいと、あの子は言っていた。」
「……だが、俺は仲間を、ろじこを裏切り、最悪の形でチームは解散した…」
「あなたたちの絆は、そんな弱いものじゃない。…あなたも本当は、それを知っているのでしょう?」
『おじさん!!もうちょっと頑張ってね、このロープで…!』
私は一本のロープを見つけ、セルジオおじさんの元へ駆け寄る。
「鬼柳さん…ろじこちゃんを…クラッシュタウンを頼みましたよ。」
『おじさん!!』
「ろじこちゃん、ニコとウエストを…!」
私がロープを投げるのと同時に、耐えきれなくなったセルジオおじさんの手は足場を離れた。
『セルジオおじさんーーーーーー!!!』
「オッサン!!!!」
私は呆然として、ガクッと膝をついた。
そんな…そんな…!
遊星も、目を閉じて拳を握った。
セルジオおじさん…!
両手を地面につき涙を流す私の手を、京介が引っ張って私を立たせる。
『っく…すん、京介…?』
「……行くぞ。遊星、ろじこ。」
その目は、数分前の死んだ目をした京介とはうってかわって、輝きを取り戻していた。
「オッサンの気持ちは、俺が受け取った…ろじこ、お前とオッサンの子どもたちは俺が守る。」
『京介!』
「鬼柳!」
「あの街を、解放する。」
私の手を握る京介の手は、あの頃と同じで力強かった。
+continue+
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