帰郷!受け継ぐ想い、希望の手*2




どうして私たちはいつも敵同士なんだ。












帰郷!受け継ぐ想い、希望の手*2










ハーモニカの音色が響くと、周りの観衆がきた…きた…とざわつく。


『な、何このバックミュージック。誰だよこれ、ねぇマルコム?』
「来るぞ…ラモングループの死神が…」


ハーモニカの音がだんだんと大きくなるにつれ、黒いロングコートの影が現れる。
周りも一層ざわつく。


誰だよこんなしょーもない登場の仕方するのは!と、私は目を凝らして遠くの人物を見る。


…!!!


見覚えのある、シルバーブルーの髪だ。

あれは、ウエストが言っていた…




『京介…?』




服や髪の長さこそ違うが、顔の右を縦断するマーカーはダークシグナーのときの京介と同じだ。


私が立ち尽くす間にも、京介はどんどんこちらへ歩いてくる。
目を閉じてハーモニカを吹くなんて、京介からは想像もできなかったが。


京介が十字路に到着し、切れ長の目をすっと目を開ける。
その目には輝きなんてものはなく、ただ憂い色に染まっていた。



って…

確かにこの京介は、ウエストが回想した通りの。


『陰キャラじゃねーか!!!!』
「……ろじこ……!?」


私を見て、少し目を見開いて驚く京介。


「お前、何故ここに…」
『そ、それはこっちのセリフなんだけど…』


お互いに言葉がつまる。
そこへ、マルコムが口を挟む。


「先生、あの死神と知り合いですかい?」
『いや、知り合いもなにも…彼氏、なんだけどなぁ。』
「!…しかし先生、約束は約束だ。こいつにデュエルに勝ってもらわなければ、セルジオの居場所を教えることはできねえ。」
『…まじか。』


私がマルコムと話す反対側で、ラモンも京介に問いかける。


「せ、先生!あいつと知り合いなんですかい!?」
「…俺の、女だ。」
「ま、まさか!先生、手加減なんて…」
「俺がわざと負けるとでも思っているのか?」
「い、いえ…そんなことは…」
「なら黙っていろ。」


どうしてクラッシュタウンにいるのか。

なぜサテライトを出て行ったのか。

今まで何をしていたのか。








なんで私を置いて行ってしまったのか。



聞きたいことがたくさんありすぎて困惑する私を、京介は憂いの目で見る。


「…こんなところで再会するとはな。」
『最近知ったんだけど、ここは私の生まれた故郷らしいの。…京介がいなくなって、私はサテライトを出てここに帰ってきた。』
「…そうだったのか。俺は、希望を捨てるためにこの街にいる。」
『いや、人の生まれ故郷になんて言い方すんのよ!』
「かつて俺は、多くの人に絶望と恐怖を与え、仲間を傷つけた。…もちろん、お前もだ。」
『……サテライトを出るときにも言ってた、ね。』
「そんな俺が、どうして希望を持って生きることができる?」
『・・・』
「だから、俺は流れ着いたこの街で自分の希望が断たれるのを待っている。…ここでデュエルに負ければ、希望は葬られるからな。」


そんな悲しいこと、言わないでよ…

京介はそんな想いで、この街でただ自分を負かすデュエリストを待っていたんだ。


『せっかく、また会えたのに。』
「懐かしいが、すぐにさよならだ。……ただ、お前になら負けられるかもな。」
『京介…』
「…さぁ、時間だ。始めよう、ろじこ。」


京介は相変わらずインフェルニティデッキを使う。
しかし、前より強くなっている。

地縛神こそ使わないが、インフェルニティ・デスドラゴンや、墓地から何度でも蘇るモンスターに苦戦を強いられる。


強くなってる、京介…!


『これだけ強いのに…自分の故郷に言うのもなんだけど、こんなところでくすぶってて、満足できたことあった?』
「…忘れちまったぜ、満足なんて言葉…」


え、誰これ!
ちょっと………引いた。


『え、ちなみにあの時の別れ際、私のみぞおちに一発入れたのも忘れた?』
「あ……忘れたな。」
『おい嘘つくなよ』


満足を忘れてしまった京介は京介じゃない!
でも、京介をこうさせてしまったのは……


『京介。私は京介の希望になりたいって、いつも思ってたよ。』
「…?」
『絶対に、今度こそ助けるからね。』
「ろじこ。」
『いくわよ、私のターン!』


何度敵対したって、諦めない。
遠回りをしてでも、京介は私が助ける。


あと、みぞおちの件もきっちりお礼してやるわ!


『最後の攻撃…いくわよ京介!!』
「…これでようやく…」


京介が私のモンスターの攻撃を受けようとした、まさにその時。





「そこまでだ二人とも!!」


+continue+




[ 5/20 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -