性の目覚め
『きりゅー、朝だよ。』
「…すー。」
『相変わらずだなぁ…』
朝。
私が目を覚ますと、きりゅーはまだ寝ている。
特に珍しいことではなかったが、私はこの時、どうしてか意地悪をしてみたくなった。
『起っきろーっ!!』
バッ
鬼柳のかけ布団を一気にめくったのである。
『いつまで寝て……、っっ!?!?!!!』
性の目覚め
わーーーーーーーーーー!!
叫ぶのをグッと我慢した。
心の中にとどめた。
そ、そういえば、小学校で習ったことあるわ。
男の人は、朝、その、自分の意志とは関係なく、その、なんというか…
「朝勃ちって言うんだぜ?」
『きゃーーーーーーーーーー!』
鬼柳の見ちゃいけない部分を見てしまった、そんな気持ちであたふたしているうちに目覚めたらしい鬼柳が、ニヤリと笑いながらこちらを見て言う。
『ごっ、ごめん!その、見るつもりは…!』
「?別に謝る必要ねーよ。だって自然に起こることじゃねーか。」
『そ、そうだけど……!』
見られた本人より、なんで見てしまったこっちが、こんな恥ずかしい思いを……!
私はそっぽを向き、朝ご飯の準備する、と言って鬼柳から離れるが、彼はまだケラケラ笑っているのだった。
そうか。
生きるのに精一杯で、今まであまり深く考えたことはなかった。
鬼柳は、男の子だ。
そして私は女の子。
こうして二人っきりで暮らしているけど、私は結構すごいことをしてるのではないか。
すごい、というか…
とんでもない、というか…
「なー、ろじこー。朝飯できた?」
『きっ、きりゅー!…もうちょっと!』
変に意識をしてしまい、若干声が上ずる。
私にとって、鬼柳は命の恩人であるし、このサテライトで生きるのに必要な仲間である。
でも…
ーーーおい、大丈夫か?
ーーー俺は鬼柳。鬼柳京介だ。
ーーーとりあえず即席だが、お前にやる。
ーーー強がんなって。大丈夫だ、何かあっても絶対俺が助けに行くからな。
これまでの、鬼柳とのやりとりがふと頭をよぎる。
私は、私は……
『あっ、やば、こげちゃう。』
私は考えるのをやめた。
そして、コンロの火を止めると、質素な朝食を皿に盛りテーブルへ運んだ。
「おー、さすがろじこ!腹減った、食べようぜ!」
『うん、いただきます。』
「いっただきまーす。」
今が、この日常が、私は好きなのだ。
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