自宅警備員
「よお、ろじこ。お前の家、住み心地が良くて満足だぜ!」
『か、勝手に住み着いてる!!!!!!』
自宅警備員
久しぶりに実家に帰ったと思ったら、京介が住み着いていたのだ。
クラッシュタウンの派閥戦争の一件が落ち着き、私が一時的にシティへ引越してからも、クラーゾおじいと住んでいたクラッシュ…いや、サティスファクションタウンの家は手放していないので、たまに掃除に帰ろうと思っていた。
そして、実家のドアを開けたら京介が我が物顔でくつろいでいたのだ。
『わ、私の家が乗っ取られた…!』
「まぁ固いこと言うなよ、未来の俺とお前の住処なんだからよ。」
『そ、そうかもだけどっ!自分の家はどうしたのよ!』
「え?俺の家?んなもんないぜ。」
『!!!!!!!』
そうだった。
彼、家なき子だった。
確かに、京介は流れるようにクラッシュタウンに着き、私や遊星と再会するまでは、ふらっと現れてはデュエルをして報酬金を稼ぎ、バーで飲んだくれて過ごしてたんだった。
『…ちゃんと散らかさずに住んでよね…?』
「おう。」
でもどうしよう。
家具とか全部そのままだし、その、私の、私のベッドで京介が毎晩寝てたりすると思うと…
ちょっと興奮する。
『きょ、きょーすけ…』
「ん?」
もじもじする私を見てピンときたのか、京介は私を抱き寄せて笑う。
そう、いやらしく笑う。
「なんだろじこお前、そんなに俺とやらしーことしたいの?」
『ばっ、ばか!…だって、ちょっと久しぶりだし。』
「まぁなー…」
『あと、京介が毎晩私の匂いの染み込んだベッドで寝て毎晩一人でもぞもぞしてんのかなー、なんて考えたら余計興奮する。ねぇ、やっぱ毎晩もぞもぞしてるの?昨日の夜も一人でしたの?』
「余計なお世話だよ!何考えてんだよお前は!」
ったく、とつぶやいて、京介は抱き寄せた私をベッドに誘導する。
『京介…』
「もうベッドには俺の匂いがついてるよ。」
そう言って押し倒されると、確かにベッドからも京介の匂いがかすかに鼻をかすめる。
京介の匂いに包まれ、幸せな気分でいた。
そんな私に京介は覆いかぶさってくる。
『あ、きょーすけ…』
「片付けは後。今は…いいだろ?」
『ん。』
唇を重ねて、京介が私の服に手をかけた。
その時。
(いつまで寝とるんじゃ、バカ者!わかいんじゃから、だらだらするんじゃない!)
(ろじこよ、お前も母さんの血を引いとるんじゃから、もう少し家事をだな…)
(シティに引っ越すんじゃ。しかしこの家はわしやお前の父さんも母さんも住んできた…手放しはできんのう。)
クラーゾおじいと一緒に住んでいた記憶も蘇ってきた。
…見られてるわけないけど、おじいに見られてるような気分だわ。
『…きょ、京介。だめ、私、この家じゃおじいのこととか思い出して…その、集中できない。』
「まじかよ、頑張れよろじこ!俺もう我慢できねえよ!」
『だって、なんかおじいとか、お父さんお母さんの霊に見られてる気分になるんだもん!』
京介はボーゼンと、生殺しかよ…と呟いている。
その傍で私は襟を整える。
『私、ライディングデュエルの大会が終わったらそっこー帰るから、ちゃんと私たちの家を建てよ?』
「絶対優勝賞金もって帰って来いよな!」
京介には悪いことをしたので、やっぱり賞金を持って帰って私たちの家を建てよう。
優勝を改めて決意した、そんな日であった。
+fin+
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