カミングアウト




隠してたわけじゃないんだけど。











カミングアウト










『ねえ私結婚するの。』
「「ええーーーーーーー!」」


私の突然の告白に、目を丸くしてニコとウエストは面白いほど驚いた。
その後ろで、トオルは苦笑いをし、ミサキはいつもと変わらぬ表情をしている。


「はは…そりゃそうなるよな。ろじことクラッシュタウンで過ごしてる時はコイツそんな素振り全然しなかったからな。」
『まぁそのときは音信不通だったからねぇ…』
「でっ、その相手は!?」
「そうよ、どこで何してる人なの!?」


よほど相手が気になるのか、この姉弟は身を乗り出して質問をぶつけてくる。


『それは、』
「俺だ!」


秘密基地のドアがバーン!と開く。


『きょ、きょーすけ!!』
「「えーーーーー!」」
「…ウワサをすれば…」
「はは、相変わらず元気なやつだな。」


突然現れた私の結婚相手が、自分たちを引き取ると言い出した父親代わりの人物だったのだから、当然だが、ニコとウエストはさらに驚きの声を上げた。


「き、きりゅうさん!?ど、どういう経緯で!?」
「鬼柳の兄ちゃんとろじこが何で!?何でろじこが、あの伝説のチーム・サティスファクションのリーダーの鬼柳さんと!?いつ知り合ったのさ!?」


姉弟は驚きと興味と、やっぱり驚きの入り混じった様子で質問攻めをしてくる。


「あれ?ニコもウエストも知らなかったのか?俺とろじこはチーム・サティスファクションのときからの仲だぜ!」




・・・・・




少しの沈黙が流れる。
ニコもウエストも、言ってなかったのもあるが、まさか私がチーム・サティスファクションに属していたとは微塵も思ってなかったらしく、驚きすぎて声が出なかったようだ。



「えっ、ろじこがあの伝説のチーム・サティスファクションのメンバー!?」
『うん。』
「ああ。」
「うそー!ニコ姉ちゃん知ってた!?」
「し、知らなかったわ…」
『や、隠そうと思ってたわけじゃないんだけど、まぁなんせ黒歴史だったし…』
「おい黒歴史って何だよ。」


終始驚きを隠せないこの二人に、トオルが冷静に言い放つ。


「ちょっと待てよ、鬼柳はニコとウエストの父親代わりなんだろ?ということは、その鬼柳と結婚したらニコとウエストの母親役がろじこってことか?」
「ろじこが母親…似合わない…」
『いや私だってそれはちょっと…』
「確かにろじこは私にとって、お姉ちゃんっていう感じだったから…」
「俺はろじこが母ちゃんとか絶対嫌だぜー!」
『ウエスト!何でよ!!』
「まぁいいんじゃね?」
『いいんじゃね?じゃないわよ京介!』



憧れに憧れていたチーム・サティスファクションに私が所属していたことに、初めこそ開いた口が塞がっていなかったウエストだが、だんだんと納得の表情を浮かべる。


「確かにろじこは、デュエル強かったし、トオル兄ちゃんの作ったD・ホイールに乗ったときもすごくうまかった!」
『でしょ?サテライトのハイウェイでいつもD・ホイールぶっ放してたわよ。』
「ろじこかっこいいー!」
「おいおいマジかよ、通りでD・ホイール乗りこなしてると思ったんだ。」
「でもろじこ…整備はできない…」
『まぁそこは遊星に甘えてたからねー』
「おい…お前はいつも遊星遊星…!」
「男の嫉妬…醜い…」
「なんだとー!」
『ちょっと京介もミサキも落ち着いてー!』



私は京介とミサキをなだめると、改めてニコとウエストの方を向く。



『そういうわけで、WRGPが終わったら、私は鬼柳ろじこになるからよろしくね!』
「え?WRGPが終わったらなの?」
『そうなの、ニコ。WRGPにはやっぱり出たいし、それまではシティが本拠地になっちゃうから…だから、ニコ、京介が浮気してないか見張っててね。』
「わかったわ。」
「え、ニコお前何で?否定しねーの?ってゆーかろじこお前こそ浮気すんなよな!」
『しないわよ!私がサティスファクションタウンに、キングになって帰ってくるから、それまで待ってて!』
「ふふ、ろじこ、まるで逆プロポーズね。」
『なっ…』
「はっ、何がキングだ。ジャックかよ。」
『あれは元キングよ、ただのニートだから。』
「キツイな!」


そう、私はあの鉱山の権力争いの一件に決着が着いたとき、サティスファクションタウンで京介と一緒に暮らす約束をした。
しかし、それはWRGPが終わってから。

せっかくトオルとミサキとチームを組んだので、WRGPに出場したいと思った。
それに京介も、満足してこい!と賛成してくれたのである。



「…そろそろ…時間…」
『あ、ほんとだ。』
「ろじこ、またサティスファクションタウンに帰ってきてね。」
「またデュエル教えてよ!伝説の、チーム・サティスファクションのろじこ!」
『あはは、こまめに帰るよ!デュエルしよーね、ウエスト!』
「じゃぁ俺たちはシティに帰るよ。」
「トオル、ミサキ。ろじこを頼む。」
「…了解…」
『京介、またね!』
「おう!」


私とトオル、ミサキはサティスファクションタウンを出発し、シティへ向かう。


でも、このさよならは私たちのいつもの悲しいさよならじゃない。



私はその嬉しさを改めて噛み締め、D・ホイールを加速させた。





+fin+




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