幻影
私は京介の部屋のドアをバンッと開けた。
『きょーすけ!見て見て!セーラー服来てきちゃった☆』
「うお!ばるこ!まじか!!」
京介は驚きと喜びの合わさった顔をした。
…という計画を立て、アジトに来てみたのだが。
幻影
「よ、よう、ばるこ。…え、お前なんでそんな格好してんだ?」
京介は部屋におらず、まさかのアジトの入り口すぐに、考え事をするように立っていた。
そのため私の、ドアを開けてサプライズ計画は瞬く間に崩れた。
『いや、京介てっきり部屋にいると思って…驚かせるために来たんだけど、なんでらこんなとこにいるの?』
「いや、そのよ…部屋に、なんかいるんだよ。」
『え?』
「なんか、こう、黒いのが…」
『えっまじで!やだ、ちゃんと掃除しろとあれほど…』
「ちげーよ!それじゃねーよ!」
なんだ、いわゆるGではないのか。
京介は眉尻を下げ、困った顔で言う。
ちなみに、京介のこんな表情はめったに見られないのでかなり珍しい。
「黒い、影みたいなのが、ぼうっとしてるんだよ。」
『京介のちょっと弱気な困った顔ちょー可愛い。何?ビビってるの?可愛い!可愛い!』
「お前!ビビってねーよ!俺が何にビビるってんだよ!ふざけんなよ!……悪い、大声出して。」
『京介……可愛い、抱かせて。』
「何でそうなるんだよ!」
『てへへ…』
「頼む、ちょっと部屋を見てきてくれ!」
『えっ私一人で!?』
一緒に来てくれ!とかじゃなくて、まさか私一人で部屋を見て来いっていうの!?
どんだけ怖いんだよ!
そんなももちろん私も怖いに決まってるじゃないか!!
『…やだ。京介の困ってる顔もっと見たいから、やだ。』
「おい、お前も怖いんだろ。」
『こっ、怖くないし!全然怖くないし!むしろそんなの一度見てみたいくらいだし!』
小学生のような強がりを見せると、京介は、両手を合わせる。
「ばるこ、頼むよ…」
うわ、ここまで弱気な京介初めて見た。
めっちゃ可愛い。死ぬほど可愛い。
『よーし、京介!私に任せなさいっ!ちょっと部屋見てくる!』
「ばるこ…!」
『その代わり、部屋に戻ったら京介は今日一日私の奴隷ね!』
「何だよそれ。」
『私の奴隷になりなさい。』
「それ言ってみたかっただけだろ。」
よーし!行くぞ!
私は階段を登り、京介の部屋へ向かった。
バンッ
『そこにいるのはわかってるのよ!出てきなさーいっ!』
私が刑事のように京介の部屋のドアを開ける。
『きゃぁぁぁぁああああああ!』
まじか!!!!!!
予想の斜め上を行く怖さ!
京介の部屋には、黒い影というか、得体の知れないモヤモヤがまるで火柱のように立ち込めていた。
『な、なん…何なの!』
私は覚悟を決める。
黒いモヤモヤに飛び込んだ。
『ええーい!』
・・・
ぱち。
ふと、目を開ける。
何の代わりもない、京介の部屋だ。
黒いモヤモヤも消えている。
『?』
え、何だったんだろう…
そう考えていると、ガチャ、とドアの開く音がする。
「おう、ばるこ!」
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