旅立ち!再会、脱出、謎の脅威*9




「フフフ。あなたとこんな場所で会うなんて驚きね。」
『…!』











旅立ち!再会、脱出、謎の脅威*9










『カーリー!…いつの間に!』
「アルカディアムーブメントでね。せっかくあなたに逃がしてもらったけど、このザマよ。」
『捕まったんか!あんなに気をつけろって言ったのにまた捕まったんか!』
「うるさいわね!」


ダークシグナーとなったカーリーは、ジャックを待っているらしい。
私はお呼びでないと言われた。


「ふふ、ここまで来て大人しく帰れるわけないわよね。
『…何よ?』
「いいわ、相手をしてあげる。」
『んな強引な!』
「すぐに決着をつけてあげる!後悔する暇もないくらいにね!」


アルカディアムーブメントで空から落ちていったディバインは、カーリーとのデュエルのせいらしい。


そういえば、カーリーはアルカディアムーブメントの独房で、私の隣の部屋に閉じ込められていたとき、ずっとジャックの名前を呼んでた。

そして、ダークシグナーになったカーリーの相手はジャックだ。


これは、女のカンなんだけど…





「ま、まさか!運命を切り拓くなんて!」
『私はモンスターで攻撃!あなたのライフは0よ!』


私はカーリーをデュエルで下す。


「あなた、やるじゃない。でも、私はここで負けるわけにはいかない!」
『!?』


どこからか、気味の悪い声が聞こえる。


…そうだ、お前にはやらねばならぬ事がある…


『カーリー!?』
「誰!?」


…私が誰であろうと関係ない…お前は全てを破壊する、ただそれだけだ…


 「うううっ…!」
『カーリー!?大丈夫!?』
「…さぁ、まずは貴様を葬ってやろう。」


カーリーは今、何者かに精神を乗っ取られている!?


私とのデュエルでは、ダークシグナーのカーリーを救えないの…!?

そのとき。


「カーリー!!」


私とカーリーが並走する横に、炎を越え、一台の白いD・ホイールが突っ込んでくる。


『ジャック!!』
「シグナーめ、よくやく現れたか。」
「ばるこ!そのデュエル、俺と代われ!」
『ジャック…』
「俺はそいつと、決着をつけなければならんのだ!」


これは女のカンなんだけど…


カーリーは、きっとジャックが好きなんだ。


「ここは引け!お前は他の奴のところに行け!」
『そうね…カーリーは、ジャックにしか救えないみたい。』


私はD・ホイールのエンジンを落とす。


ジャックとカーリーが炎の道に消えてゆくのを見守り、私も次に進む。




しばらく愛車を走らせると、対峙する二人の女性の影が見えた。

アキだ!

ということは、相手は…




「私は黒薔薇の魔女。消えるのは、あなた…」


アキの様子がおかしい!
ミスティと戦うことで、サイキックの力がコントロールできないくらい暴走しているのかも…!


『深影さん!』
「あ、ばるこさん…!」


私は、アキとミスティの後方の少し離れたところから二人を見守る深影さんに声をかける。


「ようやく正体を現したわね。」
「私の前に立ちはだかるのなら、あなたを排除する。」
「そうよ、そうしてあなたは私の弟の命を奪ったのよ!今度はあなたの番よ!弟のところへ行って、謝ってきなさい!」


私たちがアキを見つめていると、背後から高笑いが聞こえた。


「ハッハッハ!いいぞ!それでいい。」


その声に聞き覚えがある。


『ディバイン!!』


生きてた!!!!!!

カーリーとのデュエルであんな高いところから落ちたもんだから、てっきり…


『えっ、もしかしてディバインも死んでダークシグナーとかないよね?ないよね?』
「ばるこ!…ふん、使えない駒め、まだこんなところにいたか。」
『何よ!死に損ない!』
「うるさい!お前など私の実験で容易に殺せた!…ミスティの弟のようにな!」
『!?』


ディバイン…今、なんて!?


「くっくっく…もはやアキの意志は私の手の中!アルカディアムーブメントの再開も目前だ!」
『アキをどうするつもりよ!!アキはもうアルカディアムーブメントじゃない…私たちの仲間よ!』
「ふっ、貴様にはもう関係のないことだ。…それにしても、ミスティも実に愚かだな。私が流したウソの情報に踊らされて、ダークシグナーになるとは。」
『…!?』
「アキは奴の弟など殺してはいない。奴の弟は、我々の実験中に死んだに過ぎん。」
『実験って、まさか洗脳の…』
「ああ。あの程度の実験にも耐えられない、無能ながきだった。」
『ディバイン!あんたっサイテー!』
「ハッハッハ!ばるこ、貴様は優秀だったよ。洗脳されているうちはな!」


こいつ…!
本当に、許せない!


「もはや私にはアキさえいれば十分なのだ!ばるこ、貴様にはあのときの恨み、ここで晴らさせてもらおう!」
『そーゆーしょーもないやつは、私がきっちりシメてやるわよ!』


アキもミスティも、ミスティの弟も、そして沖田やリキッドも。
みんなこいつに巻き込まれて…!


「くそ!この私が二度も…」
『もう追い込んだわよ。あんたにはこれ以上、人を操る資格なんてない!』
「ふん!貴様など、アキの力がさえあればゴミ同然だ!」
『あっ逃げんなこら!』


ディバインはアキの方へ走っていく。


「ばるこさん!」
『深影さん!ディバインを捕まえて!まじでシメる!このやろー!』
「ちょっとばるこさん!野蛮よ!」
『ええっ!』
「それより、アキさんよ!さっきまで恐ろしい程の力を発揮していたのに…あの男と目を合わせてから、まるで人形みたいになってしまったの!」


ディバインは、アキに愚かなダークシグナーを倒せと囁く。
アキは静かに頷き、ディバインの仰せのままにと返す。


『まぁ確かに、深影さんに野蛮と言われた私も、京介に囁かれたらお人形になっちゃうわ!人形は人形でもダッチワイフのようにね!』
「あなた何言ってるの!?ちょっと大丈夫!?」
『てへへ…』


そんなことばかりも言ってられないので、私は深影さんに、ディバインがアキを操っていること、そしてミスティの弟が死んだのはディバインの実験のせいだということを伝えた。


「…なんですって!?」


ミスティが眉間にシワを寄せる。

ディバインがチッと舌打ちをする。


「ばるこ…余計なことを。まぁいい。その通り、ミスティ、貴様の弟を死なせたのは確かに私だ!」
「・・・」
「使えないガキだったよ。所詮、貴様のような愚かな人間の弟だ!」
「あなただけは許さない…」
「おいおい、恨むなら貧弱だったお前の弟を恨んでくれ。」
「…言いたいことはそれだけ?」


ミスティは静かにディバインを見る。
ディバインが黙ると、空に手をかざし、叫ぶ。


「我らが命蘇らし魂よ!さぁ、この魂を捧げる!降臨せよ、地縛神コカライア!消え失せろディバイン!!」


すると、黒い大きなカエルの姿をした地縛神が現れ、ディバインを飲み込む。


「ぐわああああああ!!」


『…うわぁ…』
「仇は討ったわ…もう私に戦う理由はない…ごめんなさい、アキ…弟の死はあなたのせいじゃなかった…」


ミスティが穏やかな顔をした。

しかし。


「これは!?」


ミスティを闇が包む。


…シグナーを倒す、それがダークシグナーの使命だ…そのためにお前は蘇った。


「く、そんな…!」


これは、カーリーの時と同じだ!


「ごめんなさい、もう私にはこの闇の力を抑えられない…」
『ミスティ!!』
「お願い…私を止めて…」


ミスティの顔つきは、先ほどよりもっと険しいものになる。


「覚悟しろ!シグナー!」
「え…ミスティ…」


ディバインが目の前で地縛神に飲み込まれたこと、ミスティが正気を取り戻したのに闇の力に支配されたこと、いろんなショックで、アキは戸惑っている。


「だめ!アキさんの意識がはっきりしていないわ!」
『アキ!アキ!しっかり!』
「だめよ…お願いばるこさん!アキさんとミスティを助けて!」
『腹くくって、やるか!』


私はアキをかばうようにミスティの前に立ち、デュエルディスクを構える。


「この私を止めるつもりか?いいだろう、まずはお前からだ!」


ひえー!
やるしかない!ない!





「ミスティ!!」


私に敗れたミスティに、アキが駆け寄る。


「ありがとう…」
「ミスティ…」
「アキ、そんな顔しないで…シグナーとして、この世界を守るのよ…」


私達を覚えていて、と言い残すと、ミスティは闇に包まれ、姿を消した。


「ミスティ…」
「…アキさん、制御装置を封印しましょう。それが、ミスティの願いでもあるわ。」
「ええ…」


アキは、ブラックローズ・ドラゴンのカードにより、制御装置を封印した。


『アキ、大丈夫?』
「ありがとう、ばるこ。あなたのおかげで大丈夫よ…うっ…」
『アキ!』
「アキさん、無茶しないで!」
「……っ」
『サイコパワーで体力を消耗したのね。』
「私は一旦、アキさんを連れて休めるところへ戻ります。」
『そうね、深影さんお願い。』
「あと一人のダークシグナーはアトラス様が必ず倒します。ばるこさんはここで、全ての制御装置が封印されるのを見届けてくれませんか?」
『りょ!ここは任せて。』
「ありがとう。…さ、行きましょうアキさん。」
「え、ええ…」


アキ、ツライだろうな…
自分の目の前で、身近な人を二人も一気に失ってしまったんだから。


『…ジャック、もう戦い終えたかな…』





「しっかりしろ!カーリー!死ぬな!」
「私、ジャックみたいに頑張る人を応援するのが好きだった。」
「カーリー…」
「ジャック、きっと世界を救ってね。私、応援しちゃうんだから…」


ジャック……大好き…

そう言い残し、ジャックの腕の中で消えてゆくカーリー。


ジャックは無言で立ち上がると、制御装置を封印した。


私は遠目にその光景を見ていた。
ジャックに声をかけたかったが、今の彼は一人にしておいたほうが良さそうだ。


私は踵を返し、誰かと落ち合おうと思い、D・ホイールを走らせた。


すると。



「フフフ、シグナーの諸君。初めまして、私の名はルドガー。」

『!?』


私達はD・ホイールを停めて辺りを見回すが、人の影はない。
どこからともなく、男の声が聞こえてくる。


「無事に制御装置を封印したようだね。おめでとうと言いたいところだが、そうもいかない。」

『どういうことよ!!』

「すでに制御装置の力は旧モーメントに集まっているのだよ。」

『そんな!せっかく戦ったののに手遅れってこと?!』

「あとは旧モーメントで冥府の扉を開けば、世界は終わりだ!それを阻止したければ、旧モーメントにいる私のところに来るがいい。」

『ラスボスってわけ…』

「来たところで、返り討ちにしてその魂を冥府の王に捧げるだけだがね。はっはっはっは!」





私は旧モーメントの、深部に降りる道にD・ホイールの方向を変える。


私が目的地に到着すると、仲間はまだ着いていないようであった。


『何よここ…なんでまだ誰もいないのよー…』


こういう君の悪いところに一人でいるというのは、めちゃくちゃ怖い。

何か出てきたらどうしよぉ…


「ほう、シグナーでないものがここに辿り着くか…」
『きゃーーーーーーーーーーーーーーーごめんなさいーーーーーーーー!!』


いきなり目の前に人が現れるものだから、私はここ最近で一番の驚きを感じた。

いや、何で!?
さっきまで誰もいなかったんだけど!
何これ怖いちょー怖い!


『ひいいいいい!』
「一人で何をしに来た。」
『な、何よ!旧モーメントのここに来いって言ったのはあんたでしょ!』
「シグナーでない者を呼んだ覚えはないのだがな…やる気ということか。」
『えっ何、あんたなんかと交わる気はないわよ!』
「そのヤるではないのだが。」
『えー…』
「だが、そういう奴は嫌いじゃない。」
『えっ…えっ?』
「その勇気に免じて、いいことを教えてやろう!」
『イ・イ・コ・ト!?』
「間もなく冥府の扉は開かれる。それまでに私を倒せば阻止できる。」


私の言葉、完全に無視された…


「ふふ…どうする、ばるこ?シグナーの仲間を待つか?それまでに冥府の王が蘇るかもしれないがな…!」
『もうやるしかないー!覚悟しなさいルドガー!』


私はシグナーじゃないけど、ここまできてルドガーと対峙している。
これが運命というのなら、私はきっと今、最高にデュエル運があると思うの。
ねぇ、だって私みたいなシグナーじゃないのがノコノコ現れて勝手に消えちゃったとか、かっこ悪すぎでしょ?

そんなんじゃ満足できないわ!





「私の運命はここで尽きるというのか!」
『いえーす!歯ぁ食いしばりなさーい!ダイレクトアタック!!』


私はルドガーのライフを0にする。


「くっ…!シグナーでないものがこれほどの力を持っているとは…」
『だっふんだ!』


ルドガーが片膝をつく。
しかし油断はできない。

ラスボスは倒したと思いきや第二形態があるっちゅーもんだからね!


「ばるこ!!」
『遊星!』
「不動遊星…今更現れたか。しかし、もう遅い!冥界の扉が開くのも時間の問題だ!」
「なんだと!?」
『ちょっと、ウソでしょ!?私デュエルで勝ったじゃない!』


ルドガーが闇に包まれる。


「せいぜい指をくわえて世界が終わる様を見ているといい!」
『ルドガー…!』


私がくわえたいのは指じゃないのよ!
無責任に冥府の扉を開いて一人で消えて行くなんて、本当に性格の悪いやつ!


『そんな…ルドガーを倒したのに間に合わなかったなんて…』
「ばるこはルドガーを倒したのか!?」
『だって、冥府の扉を開く前にルドガーを倒せば助かるって…』
「そうか…くそ、もう打つてはないのか!?」


遊星が苦い顔で自分の太ももを叩く。
その瞬間、遊星のシグナーのアザが光出した。
その光はまぶしいほどに輝き、私達を包む。


「うわぁぁ…!」
『きゃぁぁ!』




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