旅立ち!再会、脱出、謎の脅威*8
「漆黒のとばり下りし時、冥府の瞳は開かれる!舞い降りろ闇よ!ダークシンクロ!出でよ!ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン!」
旅立ち!再会、脱出、謎の脅威*8
私の目の前に現れたのは、無数の目を体に持つおぞましいドラゴン。
『・・・!』
墓地のモンスターの効果を得るという効果も持っており、攻撃も高いのでとても厄介だ。
「どうだばるこ〜?これが俺のダークシグナーの証!ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンだ!」
『・・・』
「ひゃはははは!恐怖で言葉も出ないよな〜ばるこ!だが、これは始まりに過ぎないんだぜ?」
『…悪いわね!せっかくの召喚だけど、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンには早々に退場してもらうわ!』
「何ぃ?!」
『私は罠、カオス・バーストを発動!』
カオス・バーストは、自分フィールドのモンスターをリリースすることで、相手の攻撃宣言したモンスターを破壊、さらに相手に1000ポイントのダメージを与えるカードだ。
「っひゃはははは!最高だぜぇ、なぁばるこ!」
『…!』
キーカードを破壊したはずなのに、京介は余裕な様子で高笑いをする。
「ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンが破壊された時、自分のデッキから地縛神と名のつくモンスターカードを1枚手札に加えることができる。」
『…うそ!』
京介はデッキから1枚、カードを手札に加える。
「俺が手札に加えたのは、地縛神Ccapac Apu!」
『・・・っ!』
「なぁ、ばるこ〜もっと命の削り合いをしようぜ〜!」
『冗談やめてよ、まじ勘弁だし!』
遊星のD・ホイールを大破させるまでに、凄まじい破壊力をもつ地縛神。
それが今、私の目の前に現れようとしている。
確か、地縛神は直接攻撃ができる。それだけでも脅威なのに、こちらは地縛神を攻撃対象にできないというのだから余計に苦しい。
私のデッキに、逆転できる力はあるのだろうか。
…信じるしかない!
このデッキ、このカードたちは、京介と過ごしたサテライトの思い出がいっぱい詰まってるんだ…!
「ダブルコストンは闇属性のモンスターを召喚するとき、1体で2体分のリリースとしてカウントされる!」
『来る…!』
「降臨せよ!地縛Ccapac Apu!」
ゴゴゴゴ…
地が割れるような音が響き、空に巨人の地上絵が浮かぶ。
『…!』
間近で見る地縛神は、恐怖を感じるのに十分すぎる。
「地縛神は相手へ直接攻撃ができる。覚悟しなばるこ!」
『っやあああ…!』
「ひゃはははは!最高だぜ〜、ダメージを受けるお前の声はよぉ!」
『っく、京介…!』
残り少ない私のライフで、何ができるか。
私はカードをドローする。
「ばるこ!」
『…!』
私が引いたカード、それはーー
『疾風の暗黒騎士ガイア…!』
京介は私が昔あげたカードを、ダークシグナーになってもちゃんとデッキに入れてくれていた。
私はいつだって、京介に、京介がくれたカードに支えられてきた。
『京介、私の切り札はこれよ?』
私は疾風の暗黒騎士ガイアを召喚する。
光に包まれ、疾風の暗黒騎士ガイアは地縛神の前に立ちはだかる。
「それは…!」
『私は京介にデュエルを教えてもらってから、ずっとこのカードと一緒だった!そしてこれからも!ねえ、それは京介も同じでしょ?』
今まで、そしてこれからも、
私たちはずっと一緒だ。
「ぐっ…ばるこ…お前、相変わらずつえーな…」
『京介!!!』
地上絵が消える。
私はD・ホイールを急停車させ、倒れた京介のもとへ駆け寄る。
「鬼柳!」
遊星もこちらへ走ってくる。
「遊…星…」
「俺は間違っていた。あの時、俺が犠牲になることでお前を救えると思い上がっていた。だが違った。仲間を救えるのは仲間との結束、その想いだ!」
「へっ…」
京介は穏やかな表情で笑う。
「俺はダークシグナーになるとき、お前への復讐と共にもう一つ、願いをした。」
『京介…?』
「チーム・サティスファクションの、ラストデュエルをやりたいと。」
「鬼柳…」
『ラストデュエルなんて、そんなの…言わないでよ…』
「恨みきれなかったんだ。お前を、仲間たちを…」
京介が黒い闇に包まれる。
『やだっ!京介!やだやだ、いかないで!』
「ばるこ…」
『こんな、こんなの…!』
「泣くなよ、ばか。」
京介は、その手を私の頬に添える。
「お前は、俺の最後の女だよ。お前で良かったよ。…好きだ。」
『っく…やだぁ…京介…!』
「お前とのデュエル、楽しかったぜ…」
『京介ーーーーーーっ!』
私の声は宙に消えてゆく。
京介は、静かに目を閉じた。
闇に消えて行ってしまった…
遊星も、今までに絶対に流さなかった涙を頬に伝わせていた。
「お前は仲間だ!俺は、仲間のために、絶対にダークシグナーを倒す!!」
遊星は、スターダスト・ドラゴンで制御装置を封印した。
「ばるこ…」
『こんな結末…ひどいよね。』
「…鬼柳は、ばることのデュエルで闇から解放された。お前は鬼柳を救ったんだ。」
『・・・』
「…俺は、D・ホイールを直したらすぐに行く。」
『ん…』
「お前は…どうする?お前はシグナーじゃない。無理にこれ以上戦う必要は…」
『いや、行くわ。』
「…立てるか?」
座り込む私に、遊星は手を差し伸べた。
私はそれに手を伸ばす。
『諦め悪いかな…この戦いが全部終われば、京介が帰ってくるって信じてるの。』
そうじゃなきゃ、もう立ち上がれないから。
「俺も…信じてる。」
『そうだね、ありがとう。』
遊星はD・ホイールの整備に戻った。
私は自分の愛車に乗り、次の制御装置がある場所へ向かった。
頬にはまだ、京介の手の感触が残っていた。
+continue+
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