旅立ち!再会、脱出、謎の脅威*7




デュエルは楽しんでするものだって、私に初めて教えてくれたのはあなたなのに。

何故、こうして今私たちは悲しい戦いをしようとしているの。











旅立ち!再会、脱出、謎の脅威*7











私と遊星の前に、D・ホイールに乗った京介が立ちはだかる。


『っ!!』
「おっ、ばるこじゃねーか。お前もここに来てたのかよ。」
『…ディマクとボマーなら倒したわよ?』
「ひゃはは!やるじゃねーか。さすがだぜぇ?」


京介は嬉しいそうに嫌な笑みを浮かべながら、D・ホイールをから降りると私の方へ近づいてくる。


『・・・』
「ちょうど良かったぜ!遊星のD・ホイールが直るまで相手しろ!」
『負けた方は…そんなの…!』


苦い表情の私の顎を、親指と人差し指でくいっと持ち上げ、京介は顔を近づける。


『ちょっと…!』
「安心しろよ、ちゃんと全力でぶっ潰してやるからよ!そしたらお前も俺とずっと一緒だ!ひゃはははは!」


手を払いのけ、京介と距離をとる。


「随分と強気じゃねえか。」
『・・・』


くくっ、と喉の奥で笑う京介に言葉を返さず、私は無言で自分の愛車にまたがった。


「ばるこ!駄目だ!シグナーじゃないお前には危険だ!」
『・・・』
「ばるこ…?」
「黙ってろよ遊星!ばるこはやる気みたいだぜ。」
「…ばるこ、お前も止めたいんだな、鬼柳を。かつての仲間を…!」
『かつての、なんかじゃないよ。京介はいつだって…』


私はD・ホイールのエンジンを入れた。


「ばるこ…鬼柳…」


炎の燃え盛る道を、京介と走る。
デュエルに関係なく、一歩間違えれば焼き尽くされる、危険な道だ。


「ばるこ〜。お前もお人好しだな〜。シグナーじゃないお前には関係ない事なのによ。」
『…私の意思よ。』
「ああ、そうさ!シグナーだとか、ダークシグナーだとか、俺たちにはそんな運命なんざ関係ねえ!」
『・・・』
「遊星のD・ホイールが直るまで、なんて言ったがな。俺はお前とも戦いたかったんだ!」
『…そう、ありがとう。京介の最後のデュエルに私を選んでくれて。』
「なんだと…?」


京介が眉をしかめる。


『男はその女にとって、初めての男になりたい。女はその男にとって、最後の女になりたい。…そんな恋愛の言葉があってね。』
「へぇ?そんなこと今まで言ったことなかっじゃねえかよ。」
『私が京介の最後の女よ!』
「へっ、おもしれえ。やってみろよ!」


本当は、京介になら殺されてもいいと思った。
デュエルで負けて闇に飲まれても、京介と一緒になるなら本望だと思った。


でも、世の中、自分の思い通りにはならない、本能のままには生きられないもので。

私には、京介と同じくらい大切な仲間、場所、世界がある。


「ただのデュエルじゃ満足できねえ。お互いに手札0枚からスタートだ!引きの強さが勝敗を分けることになる!」
『…強引なルールだね。』
「好きだっただろ、強引な俺もよお?」
『今でも好き。』
「ひゃははは!ありがとよ!さぁ、最高のデュエルにしようぜ!」
『満足させてあげる!』


「『ライディングデュエル!アクセラレーション!』」


先行は京介だ。


「ひゃははは!俺たちの因縁にケリをつけてやる!ドロー!」


手札が0スタート、というのはかなりキツイ。
なんせ、私のデュエルは手札にある限りの魔法、罠でモンスターを生かしていく戦法だからだ。


『そういうのは先手必勝!初めに攻めたもん勝ちよ!私はサファイヤ・ドラゴンでインフェルニティ・ドワーフを攻撃!』
「ひゃははは!甘え!俺は罠カード、インフェルニティ・フォースを発動!自分の手札が0枚で、インフェルニティと名のつくモンスターが攻撃対象にされたとき、お前の攻撃モンスターを破壊する!」
『!!』
「さらに、自分の墓地に存在するインフェルニティのつくモンスターを特殊召喚だ!」


インフェルニティ…今までの京介のデッキじゃない。
手札0枚で効果を発揮するデッキは、このルールにかなり有利だ。


『…反則でしょそれ…。』
「さぁなぁ?ひゃははは!」


京介の場にはモンスターが2体。


『…まずい、このままだと地縛神が召喚されるか…っ、ターンエンド。』
「ひゃはは!せいぜい、俺が地縛神をドローしないよう祈るんだな!俺はデビルズ・サンクチュアリを発動!」


メタルデビル・トークンが特殊召喚される。
攻守ともに0だが、このモンスターが受けるダメージを私が受けてしまう効果を持っている。


「さらに、リバースカード・オープン!」
『!!』


京介が発動したのは、悪鬼蹂躙。


「このカードは、直接攻撃以外のダメージを2倍にする…って、知ってるよなぁ?これはお前が昔俺にくれたカードだ。」
『…まだデッキに入れててくれたの。』


地縛神は直接攻撃ができる効果をもつ。
相手モンスターを攻撃する必要がないので、直接攻撃以外のダメージを2倍にする永続罠は、地縛神メインのデッキとは、あまり相性がいいとは言えない。

なんで。


「いつの間にか、落としてたんだな、このカード。」
『・・・?』
「俺がセキュリティの監獄にいた頃、看守から暴力を受けても、暴言を吐かれても、デッキだけが心の支えだった。」
『京介がデッキを命よりも大切にしてたの、知ってるから…わかる。』
「でもよぉ、そのデッキの中、1枚だけカードが足りなかった。何度数え直しても、見直しても、なかった。」
『それは…』
「セキュリティの奴は、ついに俺のデッキを取り上げた。…俺は生きる希望をなくしたよ。」
『っ…』


京介の、やつれた顔を思い出す。
セキュリティに侵入してまで京介に会いに行ったときに見た、遠くの方を静かにただ見つめていた、今にも消えてしまいそうな京介を。


「そんなとき、俺にカードを投げつけた奴がいた。」
『!』
「そのカードは、悪鬼蹂躙。お前と俺の思い出のカードだ。カードを投げつけてきた奴は無言で去って行った。声を出せば看守にすぐ見つかるからな。」
『京介…』
「ありがとよ、会いに来てくれて。」



こんな、過酷なデュエルの最中に、そんな優しい顔しないでよ。



「…この罠の効果で、メタルデビル・トークンがお前には与えるダメージは倍になる!」
『私はモンスター1体をリリース。マテリアル・ドラゴンを召喚!このカードは、相手の効果により自分がダメージを受ける効果は回復する効果になる!』
「考えたじゃねえか、ばるこ!さぁ来いよ!俺の復讐の炎を更にたぎらせる戦いを頼むぜ!」



これで、メタルデビル・トークンを攻撃し、私が受ける2400のダメージは回復の効果になる。


『ターンエンド!』
「俺のターン!…そうだ、ばるこ。地縛神の前に、お前に見せてやらねえとなぁ。ダークシグナーの証を。」
『!?』





ダークシグナーの、証…?


+continue+







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