出会い、精霊世界と新たな仲間*2




綺麗な街並みを少し抜けたところに、薄暗い森のような道がつながっていた。

ここがゼーマンの館。











出会い、精霊世界と新たな仲間*2










「お前何者?ここは、ゼーマン様の館。」
『突撃☆隣の晩ご飯で〜す!』
「怪しい奴!」


猿の門番がデュエルディスクを構える。
やはり、悪のアジト。
そう簡単にはクリアさせてくれないらしい。


『…今晩はお猿のケパブでーす』


私もディスクを構える。





私がディスクで勝つと、猿はわりと素直に通してくれた。


「おおい、置いていかんでくれ〜!」
『トルンカ。置いていったつもりはないんだけど、むしろお前ひとりで行ってこい的な感じだと思ってた!』
「ワシも龍可ちゃんを助けに行きたいんじゃ!」
『まじかー…今度は私が捕まるのかー…』
「なんじゃと!?心配するな、ワシはダンディでイカした魔法使いじゃ!…そうじゃ、おぬしに渡すものがあるんじゃ。」
『杖…?』


私はトルンカの杖を受け取った。
トルンカが残り少ない魔力を込めてくれた杖だ。


「・・・?」
『???』
「…ところで、おぬしの名前は何といのじゃ?」
『あ、言ってなかった。…サテライトの女豹、ばるこよ。』
「ばること申すか。肩書きはともあれ、いい名前じゃのう。」
『ひどいー』
「コホン、では改めて。龍可ちゃんの捜索を開始するぞ!」
『うぇーい!』


トルンカは、私が出発するのを見ずに、すぐに一人先走って館に入ってしまった。


あぁ

京介もたまに、熱くなって先走って…



敵に捕まってロープで縛られプレイされてたなぁ


「…あいつ、うるさい。おまえ、大変。」
『はは。』


門番の猿がつぶやくのに愛想笑いし、私も館に入った。


「中、俺の仲間いっぱい。これから、もっと大変。」


館の中は、部屋数が少ない代わりに広い。
これならすぐに龍可ちゃんを見つけられそうだ。


ゼーマンがいるような、奥に続きそうな部屋の辺りには見回りの猿が大勢いる。
違う部屋から探そう。


そうして進むと、ブロックを押して進めるような、お宝のにおいのする部屋があり、何故かセーラー服を見つけた。

過去の記憶を思い出した今、何かにつけて京介と過ごした日々が思い出されるのだ。


「ばるこー!」
『京介、どうしたの?』
「シティにはデュエルの学校があるらしくてな、どうやら、こんな制服を着て通っているらしい。」
『この写真、何かの記事…?へぇ、なかなか可愛い制服だね。』
「サテライトに流れてこねぇかなー…ばるこに着せたい。ばるこに制服を着せて脱がしたい。」
『京介…鼻のした伸びてる…』


・・・。

これはデュエルアカデミアの制服じゃないけど、まぁこれ着たら喜んだだろうな。


『…そんなことしてる場合じゃなかった。龍可ちゃんを探さなきゃ!』


少し進んだ先に、一つ部屋があった。
普通に押しても開く気配がない。

これは…トルンカの杖の使いどころだわ。


『開けごまー!』


扉の向こうには、水色の髪の女の子がいた。


「あなた人間ね!?」
『は、はいっっ!!』


人間ね、という確認は生まれてこの方されたことがなかったので、ちょっとビビった。


「ひょっとして私のことを助けにきてくれたの!?」
『う、うん…声が聞こえて。私も、あなたほどではないんだけど、精霊世界と繋がれるみたいで。』
「私の声が届いたのね!ありがとう!私は龍可。あなたは?」
『ばるこよ。よろしくね!』
「ありがとう、ばるこ!」


龍可ちゃんは、年下だけど結構しっかりした子だ。
こりゃお互いトルンカに振り回された感じね。


無事に龍可ちゃんを見つけられたことにホッとしていると、騒がしい声が部屋の外から聞こえてきた。


「離せ〜!ワシを誰だと思ってるんじゃ〜!」


・・・


まじか。


「ばるこ〜!ワシに構わず先に行け〜!」


先に行ってたから龍可ちゃんを見つけられたんだよな、私。
一緒に行ってなくて良かった…


「…嘘じゃ!助けてくれ〜!ばるこ〜!!!」


おい名前呼ぶなよ私の名前が敵にバレちゃうじゃんか!


手下の猿たちが、ばるこはどこだばるこを探せと話しているのが聞こえる。


「…どうして部屋が開いてる?」
『「!!」』


私たちが部屋の入り口の方を振り返ると、そこにはトルンカを引き連れた手下の猿が立っていた。


「うう〜…これでワシも捕まってしまった…おのればるこめ、薄情な奴じゃ。涙で前が見えんわい。」
『おい、おーい。トルンカ?ショタ魔法使いちゃーん?』
「おお!龍可ちゃんとばるこではないか!」


トルンカは飛び跳ねて喜んでいる。
龍可ちゃんに会えたことが本当に嬉しいみたいで、私も少し嬉しくなる。


「お前、誰だ。」
『さっきそこのショタっ子が名前を叫んでたでしょ?ばるこよ。』
「侵入者か。そいつ、逃げさせない。」


手下が立ちはだかることで、龍可ちゃんとトルンカの表情に不安が表れる。


『デュエルよ。』
「お前と、デュエル。」
「ばるこ〜!」
『トルンカ。薄情な奴なんて、言わないでよね。…もう仲間を、誰も見捨てたりはしないから。』
「…ばるこ…?」


仲間を、売るなんて。
私は、私たちは、絶対にしないから。


私は手下をデュエルで下した。
手下は、仲間を連れてくるから待ってろと言って走って去って行った。


「待ってろと言われて待つ奴がおるか。さっさとおさらばじゃ。」
「そうね。話したいこともあるけど。まずはここから逃げるのが先ね。」
『よし、行くわよ…って、トルンカが先頭なの!?』
「ワシについてくるのじゃ!」
『まじか!』


そこからはもうカオスだった。
行く道行く道どこにでも手下がいるわ、追われるわ、さっきまでいた部屋に戻るわ、挙げ句の果てにはトルンカがはぐれて迷子になるわ。


私と龍可ちゃんは先に屋敷を出た。
後からトルンカが息を切らせてやってくる。


「はぁはぁ、何とか逃げ切ったのぅ。」
「何が何とか逃げ切ったよ。ばるこがいなかったら出れなかったじゃない。」
『あは、私は昔よくこーゆーアジトに潜入とか追いかけっことかしてたからね。勘が働いて良かったよ。』


もう追手は来ないようで、ゆっくり話ができる環境になった。

どうやら、龍可ちゃんはエンシェント・フェアリーをゼーマンから解放するためにこの精霊世界にやって来たのだが、そのためにはレグルスの力が必要らしい。
しかし、最近そのレグルスの様子がおかしいというのだ。


「それで、ばるこにも一緒に来てもらいたいんだけど…」
『もちろんオッケーよ!』
「ありがとう!早速向かいましょ!」
「ばるこも一緒なら心強いのう!」


私たちは、レグルスに会うため、ホヤールの森へ向かった。


『レグルスって何者なんだろ?人間?イケメン?』
「私もよく分からないの。」
「レグルス殿はのう、そりゃもうキリッとしておって、勇敢で、エンシェント・フェアリー様に忠実な男だぞ!」
『まじで!』


うひゃーやる気出てきたキタコレ!なんて言ってると、龍可ちゃんは純粋な瞳でばるこは顔のかっこいい人に弱いのね、って言うもんだから、もうお姉さんは正直にそうだよ!って肯定するしかなかったです単純でごめんなさい!

でもね、私は京介よりかっこいい人なんてこの世にいないと思ってるよ!
まぁここは精霊世界だからこの世じゃないんだけど!


『げっ、またカースド・ニードルを使って進む迷路!?』


精霊世界に来る時にも迷い込んだ、迷路のような森。
カースド・ニードルを、頭を使って考えて使いながら進まなければならない。


「なんじゃばるこ。おぬし、考えるのは苦手かのう?」
『なんでニヤニヤしてんのよちくしょう!』
「ばるこ、大丈夫よ!私も一緒に考えるわ!」
『はふん、お姉さんは情けないよ。』


ぐちぐち言いながら、なんとか3人で考えて森を抜けると、獣の唸る声が聞こえた。


「グウァァァ!」
『!』


目の前に現れたのは、白い体に金のたてがみ、1本の白い角を持った、獅子である。


「ひいっ!」
「な、なに!?」
『敵…!?龍可ちゃん、私の後ろに下がって!』
「レ、レグルス殿!?」
「えっ!」
『うそっ!』


この獅子が、レグルス!?

トルンカの言葉を聞いて、完全にイケメンお兄さんを想像してた!
でも、よくよく考えたらトルンカは一言も人間の姿とは言ってなかったような!


「あなたがレグルスね!聞いて!私は、この世界を守るとエンシェント・フェアリーと約束して、ここに来たの!」


龍可ちゃんはレグルスの前に出る。
しかし、レグルスはこちらを睨む。


「ふざけるな!貴様らもこの私を捕まえに来たのだな!」
「そんな…!」
『レグルス。確かにあなたがイケメンお兄さんならぶっちゃけ捕まえようと思ってたけど…しかし!人間の姿じゃないとなら話は別だぜ!捕まえなーい!』
「ちょっと…ばるこ…」
「ふん!エンシェント・フェアリー様の力を悪用しようとする者共め!」
「ひぃぃ!」
「トルンカ!」


鋭い目つきをしたレグルスは、牙をむき睨んだまま、トルンカを追い回す。


「気高きレグルス殿〜!」
「貴様!わたしを愚弄する気か!」

「話が噛み合ってないわ!まるで、反対に聞こえてるみたい…あ!あれは!」
『レグルスの足にカースド・ニードルがはさまってる!』
「そっか、あのせいで、私たちの声が反対に聞こえてたんだわ!」

「おお!でかしたぞ龍可ちゃん!…それならば!」

「やーい、レグルスのバカ〜不細工ライオン弱虫ライオン〜!」
「わたしにそのような世辞が通用すると思うか!」
「ひええ〜!」


もう手に負えない状態のレグルス。


『このままじゃトルンカが危ないよね…しかたない。ここは私が出て、腹括って獣姦かしら!』
「ばるこ、いい方法を思いついたの!…ばるこがデュエルでレグルスの気を引いて!その隙に私がトルンカの杖で、レグルスの足にはさまったマイナスの杖を何とかするわ!」
『おら、ナイスアイディア!…そうと決まれば、行くわよ!』


私はレグルスに勝負を挑んだ。


『私はモンスターでその守備表示モンスターを攻撃!
貫通効果でダメージを受けてもらうわよ!』
「グワァァ!」
『今よ!』
「うん!」


龍可ちゃんはトルンカの杖を、レグルスの足のマイナスの杖にぶつける。
すると、辺りが白い光に包まれる。


「やったわ!レグルスの足についてたマイナスの杖がはずれたわ!」
『ナーイス!』
「ひぃ〜…でかしたぞ龍可ちゃん!ばるこも、な!」
「ム、ムゥ…いったいどうしたというのだ?」


レグルスは困惑している。
しかし、龍可を見た瞬間、キリッとした表情になる。


「あ、あなたは!シグナーの少女…あなたがこの世界に来られるのを心待ちにしておりました。」
「レグルス!良かった、正気に戻ったのね。」
「それと、あなたも。エンシェント・フェアリー様と心を通わせる者よ。少女をここに導いてくれたことを、心から感謝します。」
『いえいえ。』


レグルスは、カースド・ニードルのせいとはいえ、私たちを襲ったことを謝罪した。


「しっかしすべて反対に聞こえていたなんて、道理で話が噛み合わないわけじゃ。」
「面目ない…しかし、反対に聞こえるということは、ぬしの先ほどの世辞は…!」
『レグルスせんせー、トルンカくんはさっきせんせーのこと、不細工とか弱虫とか言ってましたー!』
「こらばるこやめんか!…レグルス殿も正気に戻ったことじゃ。早くエンシェント・フェアリー様の救出に行こうぞ!うむ、そうしよう!」
「う、うむ、そうだな。」


私たちが森を抜けようとしたとき、龍可ちゃんがビクっと体を動かす。


『どうしたの?!』
「いけない!現実世界の私たちに危険が迫ってるわ!」
『えっ?』
「なんじゃと!?」
「それなら、まずは先に現実の危機を回避してから来てください。」
『レグルス、それで間に合う?』
「はい、今はまだ時期ではない。エンシェント・フェアリー様の力が必要になったら、また訪れるのです。それまでは、私とトルンカでこの精霊世界を守っている。」
『トルンカも!?』
「ワシも!?…って、ばるこ!おぬし!」
「レグルス、トルンカ。必ず戻ってくるから、それまではお願いね!」
『私もオマケでついて来るかもなんでよろしこー!』
「じゃぁばるこ、戻りましょう。目を閉じて…」
『ん。』


私たちは目を閉じた。
体が光る。


ばるこもアルカディアムーブメントにいるのね。
私もそこに捕えられているの。
お願い、なんとかして助けに来て!


龍可ちゃんのそんな声が聞こえた。


+continue+




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