過去へ!よみがえる記憶、チームの絆*14




「ばるこ…」

はい…

「ばるこ…聞こえますか?」

誰…











過去へ!よみがえる記憶、チームの絆*14










「ようやく、私の声が届きましたね。」
『…はっ!』


目を覚ますと、私は神秘的な森の中にいた。


『え…まじで?私、死んだ?』


確かに私はさっき、ダイダロスブリッジから海へ飛び降りた。

水面に打ち付けられる感覚、海に沈む感覚はなかった。
恐らく、飛び降りた瞬間意識を手放していた。


『うそ、何ここ、天国…?』
「ばるこ。」
『疾風の暗黒騎士ガイア!ねぇ、私ってやっぱ死んだの?!ここは天国?!』
「ここは、デュエルモンスターズの精霊世界です。」
『この声は…どこから!?精霊世界!?』


天から降り注ぐような声に、私は驚く。


「あなたにとっては夢のように感じるかもしれませんが、そうではありません。ここは、デュエルモンスターズの精霊たちが住まう世界。」
『疾風の暗黒騎士ガイア。あなたもここ出身?』
「はい。」
『へぇ…』


天の声の要点はこうだった。

悪の手が精霊世界に伸びており、精霊世界が悪に乗っ取られると、人間世界もやばいらしい。
そして、人間世界に精霊世界を救うことのできる女の子がいるので、私はその子のサポートをする、ということである。
私には、その女の子ほどの力はないが、精霊世界と繋がる力があるらしい。


『了解でありまつ!』


そして返事をしたところで、私は目を覚ました。


「おはようばるこ!」


目を開けると、イツキが笑顔でおはようを言ってくれた。


『おは、おはよう…え、何これ、夢から覚めた夢…?』
「わっ!すごい汗!大丈夫!?」
『私、海に落ちたんじゃ…いや、大丈夫。』
「本当に大丈夫?…ばるこが大丈夫って言うならいいけど…無理しちゃだめだよ?」
『イツキは優しいね、ありがとう。』


確かに私は京介に会いに行き、ダイダロスブリッジから飛び降りた。
服だってセキュリティの制服だし、ポケットに入れた京介のカードもない。

そして目が覚めると精霊世界で、そこから目が覚めると…現実?


軽く眩暈がしたが、私はサティスファクションの服に着替えようとした。


「わわっ!着替えるなら言えよなー!」
『あー、ごめんイツキ。』
「あ、クロウ兄ちゃんが帰ってきた!」
「ようばるこ!ようやく起きたか!」
『おっはークロウ!』
「聞いてよクロウ兄ちゃん!ばるこが目の前で突然着替えてくるー!」
『てへへ、つまらぬものを見せてしまうところだった…』
「それでよ、ばるこ。」
『ねぇなんで?着替えるっつってんじゃん?なんで入ってくんの?え?このまま着替えていい?』
「あーはいはい。一旦出るぞ、イツキ。」


私はサティスファクションの服に着替え、クロウとイツキを部屋に呼んだ。


「ひどく深く眠ってたみたいだが大丈夫か?」
『海から落ちて目が覚めたら森にいて目が覚めたらクロウのアジトだった。』
「なにそれ?」
『ねぇ、精霊世界って知ってる?』
「知らねーよ、ややこしいこと言うなよ。」


クロウが意味わかんねーみたいな顔をしている。
私だってよくわからない。

しかし、私とクロウのやりとりを聞いて、精霊世界という言葉に反応する人物。
彼は物陰から私を見ていることに、全然気がつかなかった。


『私、これから精霊世界を救いに行く女の子を助けに行かないといけないらしい。という天からの声を、森で聞いてた。』
「ほー。なんとも不思議な夢だな。何かのお告げかね。」
『人間世界の危機を救うために精霊世界の危機を救うのよ!』


どーせ夢だろ、世界の危機なんかねえって!と笑い飛ばすクロウ。
ちくしょう!馬鹿にすんなー!私は選ばれた人間なのよ!多分!自信ないけど!


「それよりよ、ここら辺にセキュリティがいやがるぜ。」
『セキュリティが…?まさか…』
「俺たちを狙っているのかはわからないが、あんまり近づかないほうがいい。奴らの動きが落ち着いたら、鬼柳に会いに行こうぜ。」
『京介に…そうだね。』
「俺たちにできることがあるかはわからないけどな…」
『うん…』


鬼柳、という名前を聞いて私が急に元気がなくなるのをクロウは心配したのか、話題を変えた。


「それと、妙な奴を見かけるって噂だ。どこの誰だかわからないが、あまりうかつに近づくな。」
『なにそれ。前のイツキ誘拐事件とか、いろいろあったもんね、気をつけなきゃ。』
「あぁ。それに、今のお前はなんかつけ込まれそうで心配だぜ。」


私の頭をぐしゃ、とクロウは撫でた。
京介の撫で方とは少し違うその感覚。
しかしそれでも京介を思い出してまた泣きそうになる。


『ありがとう、気をつけるね。』


クロウと別れると、すぐ私は背後に嫌な気配を感じた。


『!』


振り向くと、そこには前髪がぶいーん!ってなった男の人が立っていた。
その人は左手を胸の前に置き礼儀正しく挨拶をしてきた。


「初めまして。私はアルカディアムーブメントのディバインというものです。」
『はぁ…』
「少し、お話を聞かせていただいてもよろしいですか?」
『いやぁ…ちょっと、用事あるんでー』
「そう警戒しないでください。先ほどオレンジ色の髪の彼が言っていた噂が気になっているようですね。私は決して怪しいものではございません。」
『怪しいしうさんくさい。』
「その証拠に、しっかり身分を明かしているでしょう?」
『そのテのナンパはこの辺り多いもんで。』
「どうでしょう?信じていただけませんか?」
『私にはちゃんと彼氏がいるのでナンパは結構です!』


キリッ!
そういうと、ディバインはそうですか…と言って、胸元から1枚のカードを取り出した。


「それなら、力づくで連れていくしかないな!」
『!』
「手荒なマネはしたくなかったが、仕方が無い。」
『洗脳〜ブレイン・コントロール〜のカード…!?』


ディバインが洗脳のカードを高く掲げると、カードが光る。


『っうぁ!!』


私はディバインのサイコパワーにより、洗脳されてしまう。


「大人しく従えば良かったものを…さて、あまり人目につくのも良くない。さっさと行くぞ。」
『やっ…きょ、すけぇ…ううっ』
「帰ったらもっと強力な洗脳をかけてやるからな。」
『……』





目を開けると、私はカプセルのようなものに入っていた。
まだ目が霞むが、うっすらと、ディバインとその横にコンピューターを触る女の人が見える。


「ディバイン様、目を覚ましました!」
「思い通りに働いてもらうために、もっと強力な洗脳をする必要があるな。親しい人間との接触時に、強く抵抗を起こすよう…」


『京介……』


私の頬を一筋の涙が伝う。


全て、思い出した。


「コイツ!洗脳が解けている!?」


私は、失われた記憶を取り戻した。
かつて、サテライトで遊星たちと共に戦った仲間だったのだ。

サテライト統一、京介の逮捕、そして私はディバインに洗脳され、ここに連れてこられた。
そして指令やら訓練やらをさせられていたのだ。


『…帰りたい』


サテライトに帰りたい。
私がこんな場所でこんなことしている間にも、京介が帰ってきてるかもしれない。


「洗脳を急げ!抵抗されると厄介だ!」
『…京介、会いたい…』
「出力を上げろ!二度と洗脳が解けてないようにするんだ!」


私の言葉はすべて独り言として宙に消える。

カプセルの外では、ディバインが焦った表情で隣の女の人に指示を出す。


「生命反応微弱!!このままショックを与え続けるのは危険です!」
「多少の危険は構わん!」
『きょう、っ……』


京介の笑顔を思い出しながら、私は意識を手放した。


「意識を失いました!これではあの少年と同じ結果に…!洗脳を中止します!!」
「くっ…しかし、こんな中途半端な洗脳では、またいつ解けるかわらない。」
「…侵入者が現れたようです。」
「仕方が無い。私は侵入者の相手をしてくる。その間にこいつを独房に運んでおけ。意識が戻ったら続きを行う。」
「はい…」


女の人、セリアは意識を失った私を独房に運び、ベッドに寝かせた。


「また意識を失ってしまった…こんなことを繰り返していたら、いつか命を落としてしまう。いくら研究のためとはいえ、これではあまりにも…」


セリアは私を見つめ、つぶやく。


「あの過ちは二度と繰り返してはならないというのに…」


+continue+




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