サテライトスラム
「君はなかなかいい走りをしていたね。才能がありそうだ。…どうだい?これから俺を君のD・ホイールに乗せてくれないか?ああ、もちろんその後は君を俺に乗せてあげるよ。」
『いやぁ、まぁ、その…ねぇ?遠慮しときます。』
「どうしてだい!?あぁ、そういうことか、ほら、このパーツをあげるよ。」
『いや、物で釣るとか、そーゆーのじゃなくて、えーっと』
「ばるこ!お前もうそんな変なのに絡まれても無視しろってあれほど…!馬鹿!行くぞ!」
『え、あ、ちょっと…!ま、そーゆーことなんで、おにーさんごめんあそばせー!』
サテライトスラム
「ばるこお前馬鹿か!はっきり言わねえから毎度毎度しつこく絡まれんだよ!」
『まぁ、結果無事だったし。』
「それは俺が助けたからだからな!」
遊星にお下がりのD・ホイールをもらってから、私は自分史上の第一号機となったこのD・ホイールを乗り回していた。
「ばるこ、いい走りだ。」
『遊星!ありがとう!ひゃっはーーーーー!』
「元気だな、ただそのテンションの高まり方はよくないぞ、鬼柳みたいだ。」
「おい遊星。」
『運転慣れてきた!ちょっくら走ってくる!』
「ばるこ、気をつけろよ。変なのに絡まれたらすぐ俺と遊星かクロウを呼べよ。」
『わかった、京介!ジャックはどこほっつき歩いてるのかわからないから、とりあえず何かあったら京介に連絡するね!いってきまー!風にーーーなりーたいーーー!』
「鬼柳。ばるこに変な言葉と歌を教えるのやめろ。ばるこがかわいそうだ。」
「教えてねーよ、あいつが勝手に口癖うつっただけだろ。」
「かわいそうに…」
私が旧ハイウェイを一周して戻ってくると、そこにはさっきまで一緒にいた遊星や京介はいなかった。
どこか行ったのかな…?
そうすると、私に話しかけてくる青髪の男性。
ああ、なんか、自分はD・ホイールには乗れないけどD・ホイールが走るのをみるのが好きとか何とか言ってた人か。
あんま面識ないから困ったなー…
そして私はこの男性に絡まれ困り果てるのであったが、京介が助けてくれた。
『ありがとう、京介。』
「…ふん。もう他の男に絡まれんなよ。ったく、どれだけ俺が心配して…って何だよその目は。」
『そうか、京介は妬いたのか。』
「なっ…!馬鹿!ちげーよ!」
『きゃわわー!きょーたんきゃわわー!』
「ばるこお前だって、俺が前カードショップのレジのブラックマジシャンガール見てたらめちゃくちゃ怒ってたじゃねーか!」
『それとこれとは別にして、ちょーうけるんですけどー!』
「お前、一昔前のギャルみたいな言い方すんのやめろよ!ってゆーかもう笑うのやめろよD・ホイールでひくぞ!」
『やだー!』
京介の初めての嫉妬だった。
『京介、D・ホイールのパーツ欲しいなー、ジャンクの山探すの手伝って。』
「お前がずっと欲しいって言って山から探してたパーツだろ?なかなかジャンクとしてサテライトには辿りつかねえ代物だろ?」
『そう、確かにD・ホイールショップには売ってるけど高くて手が届かないの。』
「おう、行くか。」
京介と二人でジャンクの山から欲しいパーツを探す。
しかし、ここ数日ずっと探してもないのだから、簡単に見つかるはずもない。
『ないねぇ…もう暗くなってきた、帰ろうか。』
「無かったな、残念だぜ。」
『しょぼんぬー』
「そんなに必要なパーツかよ?」
『うん。ああ、この疾走感溢れる私の熱く燃える魂がくすぶっている!早く翔びたい(と書いて駆けたいと読む)と!』
「きめえ」
『何をぅ!』
いつも通り凹んで京介とアジトに帰る。
朝。
『ふぁぁ…おはよー京介、起きて〜』
「今日は眠ぃ。」
『もぅ…さて、じゃぁ先に起きて朝ご飯作ろうか…』
私は起きてブーツを履こうとする。
カシャ…
『えっブーツに何か入ってる!』
慌ててブーツを逆さにして中に入っているものを取り出す。
『!!』
KPC-000
CPUというD・ホイールのメインパーツのひとつで、加速性能を高めるパーツだ。
これはその中でもかなり高性能のパーツで、私が欲しいと思っていたKCP-450というものより格段に性能の良いものだった。
あっぶない、こんな小さなもの、踏み潰すとこだった…!!
でも、私がずっと欲しい欲しいと言っていたパーツ、しかもそれより性能の良いもの、こんなこと誰が…
京介しかいない…!
ちなみに、こんな大切で高価なものを生身でブーツの中に入れれる神経の持ち主も京介しかいない!!
『京介!起きて!すごい!こんなとても手の届かないものどうやって手に入れたの!?』
「うるせぇ…俺は眠い…むにゃ」
『帰り遅いなと思ってたの!これ、手に入れるために…』
でも、どうして?
こんな高価なもの…
え、まさかどっかからパクってきた?
『ちょ、まさかどっかからパクったんじゃ…!捕まるわよ!』
「ちげー…買ったんだよ」
『こんな高いもの買ったって…え、もしかして京介、身体売ったの!?筋肉隆々の男たちに抱かれたの!?そのお尻を差し出したの!?』
「なんでそーなるんだよ!!」
ツッコミと同時に、ガバッと京介は起きた。
「今までお前にしつこく絡んできた奴らのところを一人一人回って徹底的にデュエルで負かせてきた。で、貯まったデュエルポイントで買ったんだよ。」
『京介…!』
この男、容赦ない。
ちょー恐い。
確かにあの勢いがあれば、サテライト統一もできたよな…と思い返す。
このとき京介にもらったパーツは、今でも私のD・ホイールに埋め込まれている。
イツキ誘拐事件のときも、この加速で追いついた。
大切な大切な宝物だ。
何を思い出しても、京介はいつも私のことを大切にしてくれていた。
+continue+
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