過去へ!よみがえる記憶、チームの絆*11




「クロウ兄ちゃん!ばるこ姉ちゃん!大変大変!」
「そんなに慌てて何が大変なんだ?」
「大変だよ!鬼柳兄ちゃんが一人でセキュリティと戦ってるの!」
『・・・!』











過去へ!よみがえる記憶、チームの絆*11










私はイツキに、イツキのおかげで京介と仲直りできたとお礼を言いに来た。
嬉しそうに話す私に、彼も笑顔で良かったと言ってくれた。


それからクロウにも会い、ダイダロスブリッジの話、それを作ろうとした一人の男の話を聞いた。

その時、アニーが慌てるようにこちらへ走って来たので、何が起こったのかと思った。

そして、冒頭へ戻る。


『京介がセキュリティと…嘘よ、だってさっき京介は…!』
「アニー、どこでだ??」
「前までチーム・ブルー&ブラックのアジトだったビルだよ!」
「あの馬鹿!何を考えてんだ!」
『嘘…嘘だよ…』


一人で抱え込まないって約束したのに…


「ばるこ、行ってみなきゃわからねぇ。皆を集めて鬼柳のところに行くぞ!」
『うん…!』


クロウはジャックを探しに行くというので、私は遊星を探しに行った。


『ゆーせー!!』
「どうしたんだばるこ?そんなに血相を変えて。」
『京介が一人でセキュリティと戦ってるの!』
「なに!?鬼柳がセキュリティと!?フラッと出て行ったと思ったら、そんなことを…!」
『止めに行かなきゃ!みんなとアジトで合流するの!遊星も来て!』
「わかった、急ぐぞ!」


アジトに遊星、ジャック、クロウ、私が集まる。
クロウがメンバーが揃っていることを確認すると、遊星に話しかける。


「ばるこ!遊星もいるな!話は聞いたか!?」
「ああ、鬼柳はしばらく前にここをフラッと出て行ったんだ。まさかこんなことをするなんて…」
「とりあえず鬼柳の元へ急ぐぞ。」
『そうね、ジャック。行こう!』


私たちは急いで、京介のいるチーム・ブルー&ブラックの元アジトへ走った。


「手分けして探すぞ!俺はこっちから地下室を探ってみる。」


クロウが先導を切って地下への階段を降りて行く。


「俺たちはこっちから上の階を目指そう!まだ捕まっていないのであれば、最上階にいるかもしれない!」
「くれぐれもセキュリティに見つかるな!見つかれば追い返されるのは目に見えているからな。」


遊星とジャックもそれぞれ走って行った。

私も行こう。



京介はなぜこんなことをしたのか。
さっきまで、私と一緒にいたじゃない。

しかし、京介の部屋を出るときに交わした言葉。
それが、今になって不吉な予感をさらに駆り立てる。


『遊星…』
「ここだ、ばるこ。中から鬼柳の声がする。」


最上階のひとつの部屋の前で、私は遊星と落ち合った。

この部屋に京介が…

私たちは勢いよく部屋を開けて中に入る。




「!!」
『っ、きょ…すけ…!』


部屋に立ち尽くす京介の後ろ姿と、倒れているセキュリティ。


「鬼柳!」
「…よう、お前らか。」
『何、してるの…』
「見ての通りさ。俺は気づいたぜ!セキュリティを倒してはじめて、真のサテライト制覇なんだ!」


私たちに一歩近づく京介。


「お前らもやろうぜ!俺たちのデュエルをよ!」


ドクン…ドクン…


私の心臓が強く鼓動する。


こんな恐い京介、今までに見たことない。
私は心臓の鼓動に合わせるように、手足が震える感覚がした。

そして遊星は重く口を開く。


「…そんなこと出来やしない。セキュリティとまともにやりあって、勝てるはずがない!」


その瞬間、セキュリティのサイレンが鳴り響く。


『セキュリティが…集まって来た…!』
「まずい!ここから抜け出すことが先だ!アジトに向かうぞ!」
『京介、逃げよ!』
「…チッ!」
「ばるこ、お前は鬼柳と先にアジトへ戻ってくれないか?」
『わかった、京介は私が守るわ。』
「俺はジャックとクロウを見つけてから一緒に戻る!」
『うん!後でね!!…京介、行こ!』


私は必死に京介の手を引いて裏道から抜け出した。

もうそれからアジトへ戻るまでは覚えてない。
無我夢中で、京介がなぜこんなことをしたのかも考えるのは後回しにして、とにかく誰にも見つからないようにアジトへ帰った。


「クソッ!セキュリティめ!あれだけの数に集まられたんじゃさすがに手が出せねえ!群れでしか行動できない治安維持局の犬共め!」
『京介!!なんでこんな…!』


悪態をつく京介に、私はどんな言葉をかければよいか、なんて考えず、心のままに怒鳴った。
そしてその瞬間、遊星たちも無事アジトに戻ったようだった。


「二人とも無事に帰れたようだな。」
『…遊星。』
「しかし、あの数のセキュリティだ。しばらくは油断しない方がいい。」
「そうだな、大人しくして、目立つ行動は避けよう。」
『ジャック、クロウ。そうね、今はセキュリティが落ち着くまで何もしない方がいいね。』


しかし京介は納得いかないようで、反論してくる。


「馬鹿なこと言ってんな!確かにまとめて相手したらキツイかもしれないが、少しずつ倒せばいいじゃねえか!」
『馬鹿は京介でしょ!?今日みたいにすぐセキュリティが集まってくるに違いない、今日はたまたま逃げ切れたけど、明日は明後日はどうなるかわからないのよ!?』
「俺たちチーム・サティスファクションならそれぐらい簡単にできる!」


クロウも京介に走りより、すぐに捕まるに決まっていると言う。


「そんなもん、やってみなきゃわからねえよ!セキュリティだって無限なわけじゃねえんだ!」
「だからこそ、セキュリティだって本気になる!そうなったらこのサテライト全体を巻き込むことになりかねないんだぞ!」
「くっ…」


何かを考えるように黙りこむ遊星と、今日はアジトこら出ない方が良いというジャック。





!!


みんなが俯いたとき、アジトに鳴り響くサイレン。


「まさか!」


クロウが目を見開いて叫ぶ。


『セキュリティが集まってくる…!』




ーーーここに隠れているのはわかっている!無駄な抵抗はやめて大人しく投降しろ!


「どうやら、俺たちにはもう逃げ場はなかったようだな…」


ジャックがつぶやく。

京介が、やっぱりやるしかないとデュエルディスクを構えようとする。


私たちが苦い顔をしていると、それまで黙っていた遊星が口を開いた。


「無理だ…」
「なんだと!?」
「鬼柳。俺たちが全員で行っても勝ち目はない。それどころか騒ぎが大きくなって、この辺りの無関係の人たちも大勢巻き込むことになるだろう。…俺に考えがある。」


遊星の考えていること…?


「この状況を、どうやって打破するというのだ?」


ジャックが怪訝そうな顔で尋ねる。


「それは言えない。だが、信じてくれ。」


クロウは、本当に大丈夫なんだろうな?と不安そうな顔をするし、京介に至ってはまだ、全員ブッ潰せばいいなどと言っている。


『とりあえず、ここで抵抗しても被害が大きくなるだけよ。京介、今はやめよう…』
「チッ…遊星。それで、どうしたらいいんだ?」
「クロウとジャック、それと鬼柳は、セキュリティに見つからないように裏から逃げてくれ。そうだな…ボウリング場に行ってくれ。後で合流する。」
『私はどうしたらいい?』
「ばるこは、俺と一緒に来てくれ。」
「おい遊星、ばるこに何させるつもりだ!」
『大丈夫だよ、京介。遊星の考えることだから、無茶はしないはず。京介も、捕まらないでちゃんと逃げてね?』


私たちは二手に分かれることになった。


「遊星、ばるこ。絶対に捕まるんじゃねえぞ!」
「無理なことはするなよ。」
「……仕方ねえな。ばるこ、遊星、必ず来いよ。」
『クロウ、ジャック、京介。後でね。』


クロウ、ジャック、京介の3人は部屋を出て、裏口の方へ向かった。


『…遊星。』
「さあ、ついて来てくればるこ。」


遊星について行き、アジトの1階へ降りる。


「ばるこ。俺は、これから投降しようと思う。」
『!!・・・え?』
「リーダーだと名乗り出て捕まれば、お前たちが追われることはなくなるだろう。」
『いや、それはそうだけど、それじゃぁ遊星が…!』
「セキュリティ達が立ち去ったら、ボウリング場に行って説明してくれ。」
『やだ!絶対に、やだ!!』
「ばるこ。お前に、お前たちに会えて本当に良かった、楽しかったよ。」
『そんな…』
「俺にとっては、お前たちはかけがえのない仲間なんだ。だからこそ、皆を守りたい。この街で手に入れた絆を守りたいんだ。」
『…遊星らしい、方法ね…』
「つらい役を任せてすまない。頼んだぞ、ばるこ。」


遊星が入り口の方へ向かう。

この遊星の判断には、私は絶対に反対だけど、遊星の目は本気だ。
何の迷いもなく、このようなとき、ここで私がどんなに泣き叫んでも遊星の考えは変わらない。

私は無言で遊星の隣に並んで歩く。


「最後までついて来てくれるのか?」


涙をこらえ、私はうつむいて頷く。


「…ありがとう。」




どうしてチームがバラバラにならないといけないのかーーー


ねぇ。

このチーム・サティスファクションは、は5人でこその、チームでしょ?


+continue+




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