過去へ!よみがえる記憶、チームの絆*10




翌日。

京介のところで寝泊まりする私は家を失い、クロウの家に居座らせてもらった。











過去へ!よみがえる記憶、チームの絆*10










『イツキぃぃぃ。』
「ばるこ姉ちゃん。…大丈夫?いつもよりブサイクだよ?」
『ブサイクじゃねぇよ寝不足っつーんだよ。』
「ははは。ごめんごめん。…で、どうしたの?クロウ兄ちゃんも元気ないんだ。ケンカでもしたのかなぁ…」
『そうなのケンカしたの。ああどうしよう。』
「ばるこ姉ちゃん…」


ああどうしよう!
昨日はあんなこと言ったけど、夜寝ながら冷静に考えると、ああいう自分の焦りに自分自身が追い詰められたときは、私が包み込んで安心させてあげるべきだったかもしれない。

私が困ったとき、いつも助けてくれたのは京介だ。

だから、今度は私が京介を助ける番だ。

ああでも昨日京介を見捨てるように置いて来てしまったから、京介絶対わたしに愛想尽かしてる、別れるとか言われたらどうしよう、私まじで死ぬ!


ふえええんどうしようわたしのばかあああー!

なんて泣いてしまった。
イツキの前で、こんな小さい子の前で。


「ばるこ姉ちゃん。」
『ふぇぇイツキぃぃ…』
「ばるこ姉ちゃん、この前ぼくがアニーとケンカしたとき、素直に謝ればきっと許してくれる、仲直りできるって教えてくれたよね?」
『うん…』
「鬼柳兄ちゃんも、きっとそうだよ!」


そうでしょ?とイツキは笑顔で答えてくれる。

なにこのちびっこイケメン!おま、おまえー!将来有望だなこりゃ!アニーよかったね!


『わかった…謝ってくる…』
「そうそう、がんばって!ばるこ!」


イツキに背中を押されるように、私は京介のアジトへと向かう。


少し恐い。
昨日の京介の表情、声色。


京介の部屋の前で、声をかけてみる。


『き、京介…?』


声が聞こえない?

おそるおそる部屋を覗くと、京介は思いつめた表情で椅子に座っている。


『きょ、すけ…』
「…ばるこ。お前、何しに来た?」


やばい。京介の顔が怖すぎて見れない。ちょー怖い。しかも声も怖い。

あぁでも今は謝るんだっ!
イツキパワーに助けを借りて…!


『京介、ごめんぽ。』
「!?」


しまった、最近人に謝るということがなかったから謝り方間違えた!!

京介が、!?という顔をする。
それが、私が謝ったことに対する表情なのか、謝り文句がふざけているからかは分からない。


『いや、あの…昨日は、ひどいこと言って、ごめん。』
「……」
『京介、きっといろいろ考えて、焦ってたと思う。その焦りに苦しんで、キツかったと思う。なのに、それが分からなくて、突き放すようなこと言って。』
「…ばるこ。はっ、お前そんな今更。」


京介は驚いた表情を見せるも、すぐに先ほどの険しい表情に戻る。そして吐き捨てるように今更、と言う。


『そうなの…今更なの…!もうどうしようって昨日からずっと思ってて、私のこと嫌いになったらどうしようとか、もう色々考えたの!京介は私の凹んだときはいつもそばにいて助けてくれてたのに、私は今回京介に何もできなかったの!』


言いたいことも、言わずにとどめておきたかったことも、全部口に出してしまう。

とにかく、京介にはわかって欲しかった。


『私はいつでも京介のこと考えてるの、京介の笑顔のために生きていこうって思ったの…!』


もう、無我夢中で。


もう本当に許してください別れるだけは勘弁してください何でもします腹も切ります内蔵も売ります、みたいな、そんな勢いで謝った。


「…泣くなよ、そんなブサイクな顔で。」


本日2回目のブサイク!?


『えっえっ…ごめんブサイクで。』
「はは、泣き止んだな。」
『困惑しすぎて涙止まった。』


京介は、困ったような笑いを浮かべる。


「別に、ばるこを泣かせるためにこんなことしたわけじゃねえ。」
『……ぐすっ』
「昨日は、その、俺もごめんな。怒鳴って。」
『京介。』


こんなとき、かける言葉が分からない。

でも、私は京介を抱きしめていた。


『一人で思い詰めないで。確かに目標を失った今、すべきことが分からなくてイライラするかもしれない。だけど、そんなときは誰かに教えて、話して。私たちは、仲間よ…!』
「ばるこ…」
『あと私は京介の彼女なんだから!もっと京介が何考えてるのか知りたい。ツライことがあったら分かち合いたい。痛みなら分け合いたい。』


もう、とにかく京介の心の枷を取り払いたくて。
何言ってるのか分からなくなるほど、必死に京介に話しかける。


「はは、余裕ないのはばるこの方じゃねえか…」


困りながら、京介は私を抱きしめ返してくれた。


「お前は本当に俺が好きだな。」
『…好きだよ。』


いつもなら、いちいち癪に障る京介の自意識過剰な言葉も、今だけは素直に返せた。


「俺は大丈夫だ。今も、こうしてばるこが来てくれたしな。」
『うん。』
「もう、そんな悲しそうな顔すんな。」
『うん。』


よし、と言うと京介は私の頭にポンとその大きな手を置く。


『…仲直り?』
「ああ。」
『…許してくれたの?』
「素直に謝ったご褒美。」


ちゅ、

と音を立てて京介は私にキスを落とす。


「ほら、謝って来いって言われたんだろ?仲直りできたって報告してこい、はは。」
『も、もう!確かにイツキは子供ながらに心配してくれてたな…』


ちょっと外出てくる、と言って、私は部屋を出ようとする。


『京介、私たちはいつまでも、どんなことが起こっても、一緒だからね。信じてるからね。…大好き。』


なぜ自分が今こんなことを言ったのか分からないが。


「ああ、ばるこ。ありがとう、お前に会えて、本当に良かった。…愛してるよ。」


え?と私がキョトンとすると、京介は早く行けと急かす。





どうして私たちはあのとき、今までにないくらい素直に愛を口にしたのか。
まるで、最期のようなーーー





「俺は、まだサテライト統一を諦めてねえからな。」


+continue+




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