過去へ!よみがえる記憶、チームの絆*9




「ほらほらどうした!その程度か!?」


京介の怒鳴る声。











過去へ!よみがえる記憶、チームの絆*9










いつもの京介なら、私の耳元で「ほらほらどうした…?そんな程度か?」って囁きながら私の弱いとこを責めているはずだ。

ところが、今の京介のほらほらどうした云々は、目の前の小さなデュエリストに向けられている。


「そんなレベルじゃ話にならねぇな!てめえにデュエリストを名乗る資格はねえぜ!」
「うっ…ううう…」
「泣きゃあいいってもじゃねーんだよ!おら、てめえのターンだぜ!さっさとその貧弱カードを出しやがれ!一瞬でブッ潰してやるからよ!」


・・・京介?

私は目を疑った。

京介は、あの小さな男の子にデュエルで負かすならまだしも、あんな見下す態度で暴言を投げかけている。


『ちょっと京介!そんな小さい子にそんな、態度!!』
「ジャマすんなよ!引っ込んでろ!!」
『っ!!』


ふぇぇ京介が怖いー!なんて言える状況でもなく、私は京介の声にビクッとして声も出なかった。

私にそんな態度をとった京介は初めてで、どうすればよいかわからない。
とりあえず人を、クロウ達を呼ばなきゃ!と思い、アジトに引き返す。


『クロウ!助けて!!』


さっきまで上機嫌だった私が泣きそうな顔でアジトに入ってきたものだから、クロウやジャック、そして遊星は驚いた顔でこちらを見る。


「どうしたばるこ?そんなに慌てて。」
『クロウ、大変!遊星、ジャックも来て!』
「外が騒がしいみたいだったが、なにかあったのか?」
『きょ、すけ、が…!っふぇ、ぐすっ』
「鬼柳…?鬼柳がどうかしたのか?!」
『ゆーせぇ、京介がっ…小さな男の子にデュエルで、すんっ…熱くなって…あんな怖い京介っ、初めてで…!』
「ばるこ、泣くな。わかった。クロウ、ジャック、俺たちも外へ行こう。」
「早く止めに行くぞ!」


私たちが急いでアジトから京介のもとへ走る。
すると、デュエルで男の子を負かせた京介がさらに男の子を追い詰める。


「負け犬のくせに、俺たちのアジトの前をうろついてるんじゃねえよ!」
「っ、ひ…!」


男の子は後ずさる。

まずい、後ろにはもう道がない!
このままじゃ男の子は瓦礫の下に落ちてしまう…!


「半端な気持ちで入ってくるなよ。デュエルの世界によぉ!!!」
『お願いやめて京介ーーーーーっ!』


「やめろ鬼柳!」


クロウが京介を後ろから突き飛ばす。
そしてその隙に私たちは男の子を逃がした。

京介がこちらを睨み、大きな声で怒ったように言う。


「何しやがるクロウ!」
「それはこっちのセリフだ!こんな事をして何になる!?」
「残党狩りだ!俺達がこれからすべき事は、この辺りの残党狩りなんだ!」
「全員ブッ潰さないことには、サテライト統一なんて言えないんだよ!」
「だからってあんな子供まで痛めつけなくちゃならないのかよ!?」
「そうだ!中途半端なデュエリストなんか、いない方がサテライトのためなんだよ!」
「……」


クロウは下を向き、拳を震わせて低い声で言う。


「…デュエルってのはよ、誰だろうとどこだろうと、好きな時に楽しむもんじゃねぇのかよ…俺たちに、お前にそれを奪う権利があるのかよ!」

『クロウ…』


クロウの言うことは最もだ。
私たちは、デュエルギャングは倒しても、純粋にデュエルを楽しんでいる人たちまで襲うのはよくないと思う。
ましてや、相手の考えて選んで心を込めたカードとデッキに貧弱、なんて言い方をするなど…


「俺は抜ける。」

「!!」

「クロウ…」


心配そうに遊星がクロウを見る。


「俺達はチームじゃねえのか?おいクロウ!仲間じゃねえのかよ!?」


京介の悲痛な声が響く。


そしてジャックも、無言で立ち去る。


「ジャック!おいジャック!クロウ!」


「なぁ遊星、俺達はチームだよな?仲間だよな!?」
「……」
「なんとか言ってくれよ!」


困惑した表情を浮かべる遊星。
きっと遊星は優しいし、誰よりチームを大切にしているから、こんな京介を許せないけど咎められないし、チームをばらばらにすることなんてできないんだろう。


『京介の…ばか。』


私はまだ泣きやめない。
なんで私が、なんでみんなが、なんで京介がこんな気持ちにならないといけないの。


「何だと!」
『昨日の夜もずっとうわの空だった。こんなこと考えてたの…?ねぇ私たちはチームよ?何で一人でそんなことするの…?何でもやもやを私たちに言ってくれなかったの…?』
「ばるこにはわからねえよ!毎日へらへら何も考えず生きてるようなばるこにはな!」
『毎日京介のこと考えて何が悪いのよ!ばか!本当にばか!私は行くわ!失って気づく大切さを身をもって感じることね!ばか!』


遊星が、ばるこ…とつぶやく声を背に、私は走り出す。

今、ここにはいたくない…




デュエルをする京介は、いろんな表情を見せてくれる。


熱くなる京介

余裕の京介

悔しがる京介

いじわるな京介

笑う京介



全部、好きだった。



今、京介からその全てを奪うものは何なの…?


+continue+




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