放課後は二人で


距離は縮まっているだろうか―――










放課後は二人で










いつものカフェテリア。
ただ、今日は明日香がおらず、ろじこだけである。
女子やカップルの使用率が多いこの場所で、ろじこはよく勉強をする。
図書館のような静かさはないが、かと言って煩くない雰囲気が好きだった。


「…はかどっておられる途中、申し訳ないのですが…」
『(ん??どうしたの、コマンド・ナイト??)』
「もうそろそろ、閉館の時間です。」


ふとろじこが時計を見ると、針は6時半を指していた。


『(わぁ、あと30分…)』
「キリの良いところで帰りましょう。」
『(そうね。丁度良いところだし、終わろうかな。)』


ろじこはノートや教科書を片付け、立ち上がる。


「いつも、ここにいるのか??」


ろじこが振り返ると、そこには万丈目の姿があった。


『ま、万丈目くん!!』
「万丈目。」
「…礼がしたいんだが。」
『礼??』
「ま、まさか貴様!!礼として俺をもらってくれ!!とか言うのではあるまいな!?」
『んなっ…!!そ、そうなの!?』


万丈目を見舞いに行ったときの一件があったので、ろじこはコマンド・ナイトの言葉を聞いて顔を真っ赤にする。


「そんなわけないだろう!!」
『ホッ…』
「明日…ここで好きなものを奢ってやる。」
『ま、マジですか!!』
「ああ。好きなだけ食え。」
『やったぁ!!』
「万丈目。ひとつ言っておくが、ろじこは好きなだけ食えと言われたら本当に食べるぞ。」
『そ、そんなことないでしょう!!コマンド・ナイト!!』
「はっ!!し、失礼しました、つい…!!」
『つい、ってそれ本心ってことじゃない!!』
「お前ら…精霊は俺達にしか見えないんだぞ。」
『「はっ!!」』
「幸い、誰もいないから良かったものの…」


あと15分で閉館になるので、カフェテリアには既に生徒はいなかった。


「うーん、今までは万丈目や遊城のように精霊を見ることの出来る者が周りにいませんでしたからね。」
『そうだねぇ。……じゃ、また明日ね、万丈目くん!!楽しみにしてるね!!』
「あ、ああ…」


笑顔で手を降るろじこに続き、コマンド・ナイトも一礼し、二人は帰っていった。


『……ね、眠れない……』


草木も眠る、丑三つ時。


気持ちが高ぶって眠れず、ベッドの中でモゾモゾするろじこをよそに、コマンド・ナイトは早々デッキに戻ってしまっている。


『はぁ…緊張する……何か、デートの前夜みたい。』


”デート”


自分で言っておきながら、その言葉にろじこは恥ずかしくなる。


『だからぁっ!!まだ付き合ってるわけじゃないの!!明日のカフェだって、ただのお礼なのに!!』


何を、期待しているんだろう―――


『甘酸っぱ!!今の私、甘酸っぱ!!』


考えれば考えるほど興奮する。
ろじこは少し散歩しようと寮を出ようとした。


ガチャ


「どこへ行こうとしているの??」


ドアを開けると、ろじこはブルー女子寮の寮長である鮎川先生と会ってしまった。


『あ、鮎川センセ……』
「外出時間はとっくに過ぎているわよね??」
『ね、眠れないんです……』


少し頬を染めてモジモジするろじこを見て、鮎川先生は何かを察し、自室へ案内した。


「いらっしゃい。ミルクティーをいれてあげるわ。」
『え??』
「眠れないんでしょう??」
『は、はい……』
「恋もいいけれど、学生の本分を忘れないようにね。」
『うっ……みんなに言われます…』
「ふふ。さあ、ここよ。」
『失礼しまーす。』


甘めのミルクティーを飲み、鮎川先生と少し話をして気持ちが落ち着いたところで、ろじこは自室へ戻った。


『ふぅ、さすが鮎川センセーだなぁ。』





―――次の日。


「ろじこ!!起きてください!!遅刻します!!」
『…えへぇぇん……』
「寝言ですか!?寝言なんですかそれ!?」
『……ハッ!!』
「今日は放課後、万丈目と約束があるではないですか!!」
『う、うん!!』
「ほら、早く着替えて身だしなみを整えてください!!」
『…リラックスしすぎたぁ……』


ろじこは急いでアカデミアへ走るのであった。



―――放課後。


『えへー、何食べようかなー』
「一通り頼むか??」
『そんなに食べれない!!…あ、すみませーん。チョコレートパフェとショートケーキ、洋梨のタルト、チョコレートケーキにミルクティー下さい。……ちょっと多いかな。』


常連のろじこは、店員ともはや顔なじみである。
ろじこのいつも食べるケーキの量を知っているので、「いつもより少なくない??」と聞きかけたが、隣の万丈目を見てそれを控えた。


「想定内だ。」
『そっか。じゃぁ、いただきまーす!!』


ケーキを頬張るろじこを見て、万丈目は自分のコーヒーを口にする。


「…美味そうに食うよな。」
『うん??ホントに美味しいよ。』
「そうか。なら良かった。」
『万丈目くんはケーキとか食べないの??』
「甘いものは苦手だ。」
『そうなんだ…ゴメンね??甘いもの嫌いなのに、付き合ってもらって…』


眉尻を下げて、少し申し訳なさそうにするろじこに、万丈目は慌てる。


「いや、そういう意味じゃないんだ。ただ、俺はお前が喜んでくれたらそれで良い。」


お前が喜んでくれたら―――


ドキッ

ろじこの心臓は跳ね上がった。
その言葉に、嬉しさが込み上げてくる。


『…優しいね、ありがと。』


微笑むろじこに、万丈目は照れを隠すために「ああ」と言ってそっぽを向く。


『んーっ、うま!!』
「そんなに美味いのか??」
『一口食べる??』


はい、とケーキを刺してフォークを差し出すろじこ。


―――あ…女の子同士だったら普通だけど、これはまずかったかな


ろじこは少し後悔したが、万丈目は「もらう。」と言って、ろじこが差し出したケーキを食べた。


『ね、美味しくない??』
「まぁまぁ…美味い。」
『だよねー!!良かった。』


周りから見れば、カップル同然なのだが―――


『また…一緒に来たいな。』
「ん??」
『たまに新製品とか出るの。万丈目くんも食べれそうな、甘さ控え目なものもあると思うから…その時は誘っても良い??』
「フッ…当たり前だろう。いつでも構わん。」
『やった、ありがとう!!』





しばらくは、このままでも良さそうだ。





++ To be continued ++







[ 8/23 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -