あの衝撃よ、もう一度!!


故意か、事故か―――










あの衝撃よ、もう一度!!










『いっ…やぁぁぁ―――!!』
「すすすまん!!そんなつもりじゃないんだ!!」
『じゃぁ何でこうなのぉぉぉ!?』





先日のデュエルの件のおかげか、ろじこと万丈目の距離は少し縮まったようだ。
ろじこは万丈目のメールアドレスを聞き出すことができ、たまにメールのやり取りをしている。


「驚いたわ。まさかろじこの好きな人が万丈目くんだったとはね。」
『うーん、明日香にはちゃんと始めから言って、いろいろ相談しようと思ってたんだけど…いざ言おうと思ったら、恥ずかしくて…』
「良いわよ、もう知っちゃったから。それに、最近メールもしてるんでしょ。」
『ホントたまに、だけどね……えへへへぇ〜』


アカデミア内にあるカフェテラス。
ろじこと明日香は、よく放課後ここで話をしたりする。


『あはははーん』
「ちょ、ろじこ…!!」


何を思い出したのか、急にろじこはテーブルをバンバン叩いて悶え笑う。


「やめ…人が見てて恥ずかしいでしょ!!」
『だって、あのデュエルのこと思い出すと…!!』


更に、ろじこは、頭をテーブルにガンガンぶつけ出す。


「もぅ!!万丈目くんがこんなろじこを見たら何て思うかしら??」
『…ハッ!!』


明日香の一言で我に返るろじこ。
少し赤くなったろじこの額を見て、明日香は頭を抱える。


『つ、つい……』
「恋って怖いわ……」
『や、やだ明日香っ!!恋なんて、恋なんて言われたら私…!!』
「分かった、分かったからやめなさいっ!!」


またテーブルに頭をぶつけようとするろじこを、明日香は慌てて止める。


「そう言えば、今日は万丈目くんアカデミアに来てないみたいね。」
『…え??』
「ほら、授業中もいなかったし…」
『そう言われてみれば、何だか今日は平常心で授業受けれるなぁ、と思ったわけだね。』
「恋もいいけど、デュエリストの本分を忘れちゃダメよ。」
『う、うん…』


―――そう言えばコマンド・ナイトも同じこと言ってたなぁ…
ろじこはぼんやりコマンド・ナイトの顔を思い浮かべる。


「メールしてみたら??」
『えぇっ、そんな恥ずかしい!!』
「何言ってるの、普段もたまにだけどメールしてるんでしょ??」
『む、無理無理!!今までのメールだって、”明日の体育は水泳だから水着セットを持って来てって体育委員の人が言ってたよ”みたいなやつばったりだもん!!』
「それ、連絡網じゃない!!」
『だって、万丈目くんのアドレス知ってる人って少ないから、たいてい私が回すように頼まれるんだもん。』
「それは良いことじゃないかしら??」
『何が??』
「万丈目くんは、ろじことその他小数にしかアドレスを教えていないんでしょう??…脈あり、かもね。」
『!!そ、そんな…私っ………う、』
「そうはさせないわよ。」


再度テーブルに頭をガンガンさせようとするろじこ。
しかし、今回は明日香がガシッとろじこの頭をわしづかみにしたため、未然に防がれた。


「取りあえず、メールね。」
『う、うん……』




”今日はどうして休んだノ〜ネ??”


『いやいや、これじゃクロノス教諭だ…』


”心配したんだゾ☆”


『…キモッ、自分キモッ…!!』


”好きなの!!”


『今告ってどうする!?』


”クリクリ〜”


『ハネクリボー―――!!』


わぁぁぁ、と頭を抱えて叫び出すろじこ。
明日香はそれを見て、こんなので大丈夫かと激しく悩むのであった。


「…ろじこ。普通に、”今日はアカデミアを休んでたみたいだけど、どうしたの??”って文字を打てば良いだけの話じゃない。」
『そっか、それでいこう!!』
「はぁ…」


何とか文字を打ち、ろじこは万丈目にメールを送信する。

すると、数分もしないうちに返信が来た。


”風邪を引いた。”


そう、一行どころか一言だけの、とても短いメール。


『…だって、明日香。』
「みたいね。お見舞いにでも行ってみたら??ブルー寮は一人部屋だから、きっと一人で何も出来ないでいるわよ。」
『でも…』
「心配じゃないの??」
『それは、心配だけど……別に、彼女とかじゃないし。』
「良いじゃない。友達としてよ。」
『…明日香もついて来てくれる??』
「嫌よ。ついて行って二人の邪魔をするほど、私、野暮じゃないわよ。」
『えー!!明日香の意地悪ー!!』
「文句言ってないで!!一人で万丈目の部屋に行くの!!分かったわね??」


明日香の剣幕に押され、ろじこは一人でブルー寮の万丈目の部屋まで見舞いに行くことを承諾した。


『文句言ってすみませんでした…行かせて頂きます……っっ』


そしてメールを打とうとして、ろじこの手が止まる。


「どうしたの??」
『ねぇ、明日香。何てメールしたら良いかだけアドバイスちょうだいっっ!!』
「またぁ??」
『頼むよぉぉ』
「うーん、仕方ないわね。さっきみたいに一人でボケて一人でツッコミを入れられたらイタイからね。」
『そっか…私、イタイ子か…』





『えーと…万丈目くんの部屋は……』


ブルー男子寮。
先ほどメールで聞いた部屋番号を探す。
本来ならば女子は立入禁止である。


『うーん、誰かに見つかったら終わりよね…』
「特に、ここの寮長はクロノス教諭ですからね。見つかったら大変ですよ。」


ろじこの隣に、コマンド・ナイトがひょっこりと現れる。


「安心してください。部屋を見つけたら私はカードに帰りますから。」
『いいよ、気を使わなくて。』
「そのようなわけにはいきません!!私だって、空気くらい読めます。」
『でも…』
「お楽しみは二人だけで。」
『だから、まだ付き合ってるわけじゃ……』
「あっ、ろじこ、この部屋ではないですか??」
『あっ、ホントだ。』


万丈目の部屋の前まで来ると、コマンド・ナイトはカードに戻る。


「では、素敵な旅路を。」
『な、何よぉ…』


ドアと向き合い、静止するろじこ。
しばらく立ち尽くした後、よし、と自分に気合いを入れ、ノックする。


コン、コン、


「…誰だ??」
『万丈目くん。私、ろじこ。』


おっす、おらろじこ!!と、某漫画の主人公のように名乗りたい衝動を必死に抑える。


「!!…ゆにばーすか。」


ガチャ、


ドアが開き、万丈目が出てくる。
パジャマ姿の彼は、しんどそうな表情をしている。


『あ、ご、ごめん!!急に押し掛けて…』
「いや、構わん。入れ。」
『お邪魔しまーす』


ろじこを部屋に招き入れ、万丈目はフラフラとベッドへ向かう。
本当にしんどそうで、ろじこは少し申し訳なく思った。


『万丈目くん、何か食べた??』
「いや…ずっと寝ていた。」
『そっか。食欲は…なさそうだね。お粥ならいけそう??』
「ああ。」
『お節介でなければ作りたいんだけど、台所貸してもらっても良い??』
「ああ、頼む…」


倒れ込むように、万丈目はベッドに仰向けに寝る。


『あ、そうだ。タオル…!!』


ろじこは持ってきたハンドタオルを氷水で冷やし、万丈目のおでこに乗せようとする。


『はい。これで幾分かマシになるから。ぬるくなったら言っ……えっ』


ガバッ


突然、ろじこは万丈目に手を引かれ、ベッドにダイブする。


『な、なっ……』
「…ろじこ…」
『!?』


汗ばんだ顔に、熱っぽい声。
万丈目は少しだけ起き上がり、ろじこの頬に手を当て、そして名を呼ぶ。

せっかくろじこが冷やしてきたタオルは床に落ちてしまう。
しかしろじこは、そんなことには気付かなかった。

手を引かれたと思ったら、万丈目の顔が目の前にある。
そして今のその体勢は、まさに押し倒されたときのようだった。


『いっ…やぁぁぁ―――!!』
「すすすまん!!そんなつもりじゃないんだ!!」
『じゃぁ何でこうなのぉぉぉ!?』


ハッと我に返った万丈目は、慌ててろじこを解放する。


「本当に、すまなかった…」
『いや、あの、大丈夫。気にしてないから…』


互いに顔を赤くする。


『あ、タオル…また冷やして持ってくるね。』
「ああ…悪い…」


パタパタと台所へ向かうろじこに、万丈目は目を細めた。
自分のために、自ら行動してくれるろじこを嬉しく思った。


『はい、今度こそ落とさないでよ??』
「ああ。」
『ん。じゃ、お粥はすぐできるから、ちゃんと寝て待っててね!!』


ろじこは台所に戻ると、テキパキと段取りよくお粥を作る。

10分ほどして、出来上がったお粥を持って、ろじこは万丈目の様子を見に行く。

『どう…??』
「ちゃんと大人しく待っていたぞ。」
『あは、お待たせ。食べれそう??』
「ああ、良い匂いがする…」
『…一人で食べれる、よね??』
「あっ、当たり前だろう!?」
『だ、だよね!!』


万丈目は一口、お粥を口に入れる。
それをろじこはドキドキしながら見つめる。


「そんなに見られると食べづらいんだが。」
『あっ、ごめん!!味どうかなーと思って。』
「旨い。…ありがとう。」


礼を言われ、ろじこは微笑んだ。
少しでも万丈目の助けになれたのが嬉しかった。

万丈目はあっという間にお粥を平らげた。

ろじこは後片付けを済ませると、帰る準備をする。
本当はもうしばらく万丈目の部屋にいたかったのだが、あまり遅くなるとクロノス教諭が見回りに出てくるので、諦めることにした。


『あとは薬飲んで、ゆっくり休んでね。』
「ああ…」
『明日は…元気になってアカデミアに来てね。』
「そうだな、頑張る。」
『じゃあね。』
「またな。」


ろじこは精一杯の笑顔で部屋を出る。
そして、誰にも見つからないように女子寮へ帰って行った。

万丈目は、名残惜しそうにドアを見つめた後、眠りにつくのにそう時間はかからなかった。





++To be continued ++









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