今、呼んだ??
こんな、巡り会わせ―――
今、呼んだ??
『デュエル実習をした組はカップルになる、っつー伝説とか、アカデミアにはないの??』
「はぁ…!?そんな伝説があったらアカデミアはカップルだらけよ!!」
『やっぱり…??』
「何、好きな男子でもいるの、ろじこ…??」
『ううん、そんなんじゃないよ!!有り得ないよ!!どれくらい有り得ないかって、ドラゴンに乗るワイバーンがドラゴンに乗らなくなるくらい有り得ないよ!!』
「あら、融合解除を使えば一発よ。」
『うっ…』
「楽しみだわ。ろじこのデュエル相手が誰なのか…」
今日の午後はデュエル実習。
ろじこの相手は、万丈目だった。
『私のデュエルの時間だけ時空よ歪め!!』
「…何言ってるの。ろじこは楽しみじゃないの??」
『楽しみ!!楽しみなんだけど、できれば一生デュエルしていたいくらいなんだけど…』
「ま、分からなくもないわ。緊張してるのね。」
『うん……』
―――その頃。
「よぉ、万丈目。今日のデュエルの相手、誰だか知ってるか??」
崖から海を眺めている万丈目に、十代が話しかける。
「いや、知らんな。…お前か、十代??」
「それが、違うんだなぁ〜」
「違うなら何で話しかけて来たんだ。」
「それが、聞いて驚くなよ…ろじこなんだぜ!!」
「ろじこ……ゆにばーすか。」
「なんだよ、反応薄いなぁ。」
口を尖らせる十代に対し、万丈目は冷静だ。
「同じブルー生同士だ。いつかは当たるだろう。」
「そのいつかが、今日来たんだぜぇ。……最近、仲良いみたいだしな、ろじこと。」
「ばっ……!!」
ここで反応を見せる万丈目。
「馬鹿か!!何もないっ!!」
そっぽを向いたまま、万丈目はどこかへ行ってしまった。
「わ、分かりやす……」
普段の万丈目ならば、絶対に見せないであろう反応に、十代は目を丸くするばかりだった。
「俺が、ゆにばーすと、デュエル……」
十代の知らせに、冷静さを保とうとした万丈目。
内心は、かなり動揺していた。
午前中の授業でさえ、一緒に受けようと誘ったものの、平常心を保つのに精一杯だったというのに。
デュエルなど、出来るのだろうか―――
『ま、万丈目くん……』
廊下で、ろじこと万丈目はばったり会ってしまった。
明日香は優等生ということで、何かと先生から用事を頼まれやすい。
今もそうなので、この場には二人しかいない。
『(一人のときによくばったり会うなぁ。)』
コマンド・ナイトも、今は出てくる気配が無い。
「今日、デュエルだな。」
『そ、そうだね!!どう、調子は??』
「いつも通りだ。」
『そっか、じゃ、じゃぁ頑張ろうね!!』
またデュエル場でね、と言って去ろうとするろじこの腕を、万丈目はとっさに掴んだ。
「待て。」
『え??』
「…ろじこ…」
『!?』
無意識のうちに、万丈目はろじこの名前を呼んでいた。
『ど、どうしたの??いつもは苗字なのに…』
顔をりんごのように真っ赤にするろじこを見て、ハッとする万丈目。
「あ…いや…何でもない。引き止めてすまなかった。デュエル…楽しみにしているぞ、ゆにばーす。」
『あ、うん、じゃぁね!!』
その場から去る万丈目の後ろ姿を、ろじこはしばらく見つめていた。
否、そこから動けなかったのだ。
『な、何だったの……今の……』
「…ろじこ…」
先ほどの、万丈目の名前を呼ぶ声ばかりがろじこの頭の中を駆け巡る。
『私……今なら死んでも良い……』
「それは困ります、ろじこ!!」
『うほっ!!コマンド・ナイト…!!』
「うほって驚き方やめてください。癖がついたら万丈目の前でも出ますよ。」
『う…』
「色恋沙汰もよろしいですが、今日のデュエルには勝ちに行きますよ!!」
『う、うん……』
「少しでもポーッとしたら、その瞬間突き刺します。」
『えぇっ!?んな厳しい!!』
「そぅ、デッキの暗黒騎士ガイアが申してました。」
暗黒騎士ガイアと言えば、あの馬にまたがった二刀流の戦士である。
ろじこのデッキに入れられている、数少ない上級モンスターである。
『うへぇ……私、頑張るね。』
「その意気です、ろじこ。」
果たして、ろじこのデュエルはどうなるのだろうか―――
++ To be continued ++
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