きっとハルは来る。




昨日の敵は今日の友って言うけど、私たちはそれを越えられるかなーー











きっとハルは来る。











「俺はダークエンド・ドラゴンの効果を発動!こいつの攻守ともに500ポイントダウンし、フィールドのモンスター1体を破壊する!」
『あ、暗黒騎士ガイア!!』
「さらに俺は、禁じられた聖杯を発動!」



禁じられた聖杯の効果で、攻撃力が400ポイントアップする代わりにダークエンド・ドラゴンの効果は無効化される。
それによりダークエンド・ドラゴンの攻守は元に戻るため、攻撃力は3000となる。



「決着をつけるぞ、ろじこ!!俺は、リバースカード、不死の竜を発動!」
『墓地の、あるいは除外されたドラゴンを特殊召喚するカード…!』
「俺は除外された、光と闇の竜をフィールドに特殊召喚する!!」



ろじこのフィールドには攻撃力2600のコマンド・ナイトが1体に対し、万丈目のフィールドには攻撃力3000のダークエンド・ドラゴンと攻撃力2800の光と闇の竜が立ちはだかる。



「…ろじこ。」
『コマンド・ナイト…?』
「楽しい、デュエルでしたね。」
『……うん。ありがとう、コマンド・ナイト。』



観念したように、ろじこは目を閉じた。


ダークエンド・ドラゴンの攻撃でコマンド・ナイトは破壊され、光と闇の竜のダイレクトアタックが決まった。


万丈目LP800
ろじこLP0



逆転に逆転を重ねた激突に、デュエルを見ていた生徒や教員は歓声をあげる。
もちろんその中には、十代たちの声もある。



「ろじこー!万丈目ー!いいデュエルだったぜー!」





「ろじこ、その…後で来てくれないか。」


万丈目が、歓声に紛れそうな声で、こっそりとろじこに告げる。


『えっ?』
「初めて俺たちが会った、岩場に。」
『あっ…うん、行く!絶対行く!』



ろじこが少し顔を赤くして応えると、万丈目はフッと笑い、デュエル会場を去って行った。





「ろじこ、惜しかったわね!」
『あ、明日香!それに十代たちも!』
「万丈目もさすがだったが、ろじこくんも負けていなかったさ!」
「ほんと、ろじこさんすごいや!」
「おいろじこ〜、俺ともデュエルしようぜ!」
『みんな…!ありがとう、一緒にデッキ考えてもらったおかげよ!』



ろじこの元に仲間たちが駆け寄った。



『私も、こんな熱いデュエル、初めて…ほんと、みんなのおかげ…!』



ろじこは改めて仲間にお礼を言うと、その後に明日香に耳打ちする。



『私、万丈目くんと話してくるよ。』
「!」



明日香は一瞬目を丸くするが、すぐに納得の表情を浮かべ、肘でろじこを小突いた。



「良かったわね、ろじこ。」
















ろじこは、万丈目と約束した、岩場に足を運んだ。





ーよし、そこまで自信があるのなら、ステージに戻って大暴れして来てくださいっ!!
ー主役は遅れてくるものよ!!って??いやいや、無理よ!!ゼッタイ無理!!

ー何一人で叫んでいるんだ??」

ーうひっ!!べ、別に頭がおかしいわけじゃないの!!っていうか、あなた誰!?


ーろじこ。このブルー生、ウワサの万丈目ではありませんか??

ー俺を知らんのか!?まぁ、そのコマンド・ナイトが言う通り、ブルー1年の万丈目準だ。



初めてろじこと万丈目が出会い、初めて言葉を交した場所である。





ーお、押し倒されてるぅぅぅううう!!

ーゆにばーすを探しているんだろう。生憎、俺達は今イイトコロでね。委員長には適当に言っておけ。





ミスコンを通し、ろじこと万丈目が初めて触れ合った場所でもある。





懐かしいなぁ、と思いつつ、ろじこが歩いていると、すっかり暗くなった空の下に、人影が見えた。



『あっ…万丈目くん!』
「!…ゆにばーす。」



ろじこは万丈目を見つけると、小走りで万丈目の目の前までやってくる。

しかし、お互いが顔のわかるところまで近づくと、2人は言葉につまる。
気まずいような恥かしいような、その雰囲気に耐えられず、ろじこは俯き、万丈目はそっぽを向いた。



そして、しばらくの間、沈黙が流れる。











「…その、なんだ、」



口を開いたのは万丈目だった。



『う、うん…』
「あのデュエル中のお前の言葉…」
『あ、あの、それは…』
「ああ、その…俺を、一番に頼りたいという…」
『そ、そ、それは…あの…!』
「本、当…なのか?」
『……うん。本当…』



ぎこちない会話が続く。

暗闇でも分かるほど、お互いの頬は紅く染まっていた。


『あの、万丈…』
「好きだ。」
『…っ!!』



突然の告白に、ろじこは目を見開く。



「ゆにばーすと会うまでは、ただ名の知れたデュエリストとしてしか認識していなかった。しかし、お前と関わる中で、俺はお前に惹かれていった。」
『ま、万丈目くん…』
「ゆにばーす、お前の笑顔が俺を癒してくれる。お前が笑うと嬉しい、お前が困っていたら助けてやりたい、そう思うようになった。」
『そんな風に、想ってくれてたの…』
「ゆにばーす…いや、ろじこ。お前に、俺のそばにいて欲しいんだ。」



真っ直ぐな万丈目の目に、ろじこは口元を両手で多い、目に涙を浮かべる。



『わ、私も…!私も好きなの…万丈目くんが、ずっと好きだった…!』
「っ、ろじこ…!」
『クールでかっこいいけど優しくしてくれて、いつも助けてくれる、万丈目くんが好き…!』



ろじこの返答に、万丈目も口元に手をやり、目線を逸らす。



「…マズイな、何というか…まさかこうなるとは。何を言えばいいか、わからん…」
『本当…!まさか、こんなことって、もう…幸せ…』
「ああ…俺もだ。」
『私たち、付き合うってことだよね?』
「ああ、そうだ。」
『も、信じらんない…!夢みたい!』
「何か……照れくさいな。」
『あーん、もう!帰ったらすぐコマンド・ナイトに報告しよ!あと明日香にも!』
「ふふ、ろじこ。私は見ていましたよ。」
『「!!!!!!!!!!」』



コマンド・ナイトが、岩場の影から顔を出す。



『ちょ、ちょっ、な、な、な…!』
「ばっ、おま…見ていたのか!!」
「光と闇の竜も見守っていましたよ。」
『や、やだーーー!恥かしいーーー!きゃーーー!』



あまりの羞恥心に、ろじこは万丈目の両手を握り、これからもよろしくお願いします!と言うと寮に向かって走り出した。



「あっ!ろじこ、待ってくださいよー!!」
『知らない!先に帰るー!コマンド・ナイトと光と闇の竜のばかー!』
「と、とにかく万丈目!ろじこを泣かせたら承知しませんからね!ろじこをよろしくお願いします!…待ってください、ろじこーーー!」



コマンド・ナイトもろじこの後を追う。



精霊の登場によりムードを壊された万丈目は、普段のクールさとは程遠く、口を開いてボーゼンとしながら、小さくなるろじこの影を見つめていた。











『な、何で見てたのよー!ノゾキなんてサイテー!』
「だ、だってですよろじこ!待ち合わせたものの、2人とも全然話さないものですから心配になってしまって…!」
『だ、だって…恥かしかったんだもん。』
「何が、だもん。ですか!見てるこっちのが恥かしかったですよ!!」
『じゃぁ見なきゃいいじゃんかよー!』



ろじこの顔は相変わらず真っ赤である。



ピロピロ…♪


ろじこのPDAが鳴る。



『明日香!』



ろじこはコールに出る。



「もしもしろじこ?」
『あ、あ、あ、明日香ぁ』
「?…今、大丈夫?」
『うん、寮…』
「どうだった、万丈目くんとは?ちゃんと話せた?」
『あ、あす、その、あぅあぅ…あのね、明日香、その…』
「………あ、そうなの。」
『え?』
「ふふっ。ろじこ、オ・メ・デ・ト・ウ」
『!!!!!!!!!!!!』
「わかりやすいわ、ろじこ。その様子だと、うまくいったみたいね。」
『明日香ぁ〜〜〜!』



カフェテリアでのガールズトークを約束し、ろじこは電話を切った。



そして、ゴロンとベッドに横たわる。


そして、今日起こった出来事、長い一日を思い起こす。





ー私、本当に、万丈目くんと…





今まで感じたことのなかった恥ずかしさと嬉しさに、ろじこは身悶えする。



『やだー!もう幸せー!きゃー!………………………はっ。』
「?…どうしたんですか、ろじこ。」



ベッドの上でゴロゴロ転がっていたろじこが、ピタリと止まった。

そして、頭を抱える。



『これ…私、明日どんな顔してアカデミアに行けばいいんだろ……』
「そりゃぁ…万丈目と一緒に、じゃないですか?」
『えっ恥ずかしい何それ無理無理!』
「今更!だってろじこ、これまでも万丈目と一緒に登校したことありましたよね?」
『だってあの時は、まだ友達だったし…』




あぁ、どうしようどうしよう…と考えているうちに、疲れていたのか、ろじこは眠ってしまった。






そして、ろじこはいつもより1時間早くアカデミアに着くのであった。



『とりあえず早めに来ちゃった…まぁ教室には誰もいないし、万丈目くんが来る前にどうするか考えよう…』





そしてろじこが教室のドアを開けると、誰もいない教室に、一人ポツンと万丈目がいるのであった。





『ま、万丈目くん!!!!!』
「!!!!!!!!」





2人とも考えていたことは同じであったようで。



まだまだ、青春の物語は始まったばかりなのであった。





+Fin+




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