ミスコン委員から逃げろ!!


これは、一人の少女の、恋とロマンスの物語である―――










ミスコン委員から逃げろ!!










年に一度開かれる、アカデミアの女王を決める一大イベント。

ミス・デュエルアカデミアコンテスト

何人かの女子生徒があらかじめノミネートされ、アカデミアの全生徒が投票した投票数で決められる。


『ふぅ、何とか抜け出せた…』


ここに、会場から抜け出した女子生徒が一人。
彼女の名は、ゆにばーす ろじこ。
オベリスク・ブルーの1年生。
ノミネートされたのだが気が乗らず、控室から抜け出して来たのであった。


「まーよく抜け出せましたね。」


ろじこのカードの精霊、コマンド・ナイト。
物心ついたときから、ろじこにはコマンド・ナイトが見えていた。
ろじこが戦士族デッキを使うようになったきっかけである。


『まぁ、一度控室に入れば、委員だってコンテストに出るもんだと思うしね。トイレって言えば怪しまれずに出れたよ。』
「ふぅ、私は拝見したかったです。ろじこの晴れ姿を。」
『んな、母親じゃぁあるまいし。』
「ま、あの女王サマだから仕方ありませんけどね。」


女王サマ、とはオベリスクブルー3年生の小日向星華である。
彼女は二年連続ミス・デュエルアカデミアに選ばれており、今年は前人未踏の三連覇がかかっている。


『いやぁもう怖かった!!オンナの貫禄ってやつ??1年だからってナメられてるわ!!』
「逃げたろじこが言っても説得力ありませんよ。」
『うっ…だって、よろしくお願いします、って挨拶しただけなのに、生意気な1年生ね、だよ!?何、私に妬いてるの!?』
「ま、少なくともろじこは可愛くなくはないってことです。」
『可愛くなくはない…つまり、可愛くないということはない、けれど可愛いとは限らない、ってこと??』
「あー、もう!!ろじこは可愛いです!!ろじこサイコー!!アイラブろじこ!!」
『別にそんなん望んでないってば!!




ワァァァァァ


「さぁ!!今年のミス・デュエルアカデミア!!全生徒の投票により、この5人が最終候補まで残りました!!」





「会場の方が騒がしく…始まったようですね。」
『ふん、興味ないもーん』





ワァァァァァ


「この中から今、この場でミス・アカデミアが決まります!!一体誰が女王の栄冠を手にするのでしょう!!」


ワァァァァァ


「おい三沢!!やっぱオレ会場ぬけるよ!!」
「十代!!キミも一緒にろじこくんと明日香くんの女王になる姿を見ようじゃないか!!」
「三沢くんの言うとおりだよ!!まぁ、女王になれるのは一人だけだけど。」
「翔まで…う〜〜〜ん、アイツらも女王なんて興味ないんじゃねぇの??ま、ろじこは目立ちたがりだから分かんねぇけど。」
「でも、二人ともステージにいないっスね。」


ステージ裏では、二人が会場にいないという連絡を受けた委員たちが大騒ぎしていた。


「たとえ会場にいなくとも、ゆにばーすさんも天上院さんもこの島にはいる!!必ず見つけるんだ!!」
「「「「はい!!」」」」





「ん??あれは……」


オベリスクブルー1年生、万丈目準。
彼もまた、興味がないという理由で会場に来ないでいた。
彼は、暇そうに散歩する少女を見つけた。


「あーっ、今頃コンテストで女王の座ににろじこの名が呼ばれているかもしれないと言うのに!!」
『なわけないじゃん。きっと今年も小日向センパイじゃないの??…私が棄権したことによってね!!』
「よし、そこまで自信があるのなら、ステージに戻って大暴れして来てくださいっ!!」
『主役は遅れてくるものよ!!って??いやいや、無理よ!!ゼッタイ無理!!』


「何一人で叫んでいるんだ??」


『うひっ!!べ、別に頭がおかしいわけじゃないの!!っていうか、あなた誰!?』
「ろじこ。このブルー生、ウワサの万丈目ではありませんか??」
「俺を知らんのか!?まぁ、そのコマンド・ナイトが言う通り、ブルー1年の万丈目準だ。…一般人からすれば、お前が一人で叫んでいるように見えるぞ、気をつけろ。」
「!?わ、私が見えるのか??」
『万丈目君、精霊が見えるの??』


万丈目は1枚のカードをチラリとろじこたちに見せた。


万丈目の背に、大きなドラゴンが現れる。


「俺の精霊、光と闇の竜(ライトアンドダークネスドラゴン)だ。」
『ま、眩し…』
「私も初めて会うモンスターです。」


しかし、精霊を見ることのできる者にしか見えない、光と闇の竜が放つ幻想的な雰囲気は、すぐにかき消されることになる。


「おい!?まだ見つからないのか!?」
「天上院さんは今会場に向かわせています!!」
「ろじこさんは??」
「まだです!!」
「くまなく探すんだ!!」
「はい!!」


ろじこを探す、委員たち。
反射的にろじこは岩場の影に隠れる。


「これは…ろじこがいないことによって、大変な事態になっていると思われます。」
『何でぇ!!私一人いなくても何とかなるでしょう!?』
「いや、そうはいかないかもしれんぞ。」
「何っ!!万丈目、それはやはり、ろじこがミスコンに選ばれるということか!?」
『そんなこと、小日向が黙ってないわよ!!』
「ろじこ、自分と小日向の、どちらの味方なんですか!!」


「―――刺客、ゆにばーすろじこ。」


『「…は!?」』
「知らないのか??3年連続女王なるかの小日向星華に対抗するは、ブルーの新星と。みんな、お前のことを刺客、そう呼んでいるぞ。」


ろじことコマンド・ナイトは、ポカンとした表情を浮かべ、万丈目の話を聞く。

確かにろじこは、容姿は小日向にも劣らず、デュエルの腕もかなりのものと、学園内で何かと有名なのだ。


『どうせなら、21世紀最後の純情派・デュエル界のブラマジガール、とかが良かったよね。』
「本当に純情でしたら…と言いますか、ろじこは戦士族使いではないですか。…はぁ、性格に難ありなのが玉にキズなのでしょうね??」
『綺麗な薔薇には刺がある、可愛い猫には牙がある…ってやつ??』
「前向きなのは長所なのですが…」
『んもぅ、コマンド・ナイト!!さっきから、私のことを誉めたいの!?けなしたいの!?』
「自分のマスターをけなしたりなどしません!!」
「バカ、ゆにばーす!!叫ぶな、気付かれるぞ!!」
『え!?』
「マスターをバカと言うな、万丈目!!叫んでいるのは今に始まったことではない!!」


「生徒の声だ!!」
「誰かいるの!?」


ろじこたちは必死に、息を止めて気配を消す。
しかし、それにも関わらず、委員の足音は間違いなく近づいてくる。

見つかる!!―――





++ To be continued ++


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