友達以上、恋人未満★





微妙なポジション―――










友達以上、恋人未満★










「もうすっかり、見え見えの下心でろじこにデュエルを申し込んでくる男子も減ったわね。」
『あんな日々が続いたら疲労で死ぬでしょー…』


ろじこと明日香は、移動教室のため廊下を歩いている。


「でもデッキ新しくしてから、更に強くなったわね。」
『えへー、そう??』


万丈目にデッキ構築を手伝ってもらって以来、ろじこは負け無しである。
そのため、交際目当てでデュエルを申し込んでくる生徒はいなくなったようだ。
ようやくろじこは、本来の平和な学園生活を取り戻している。


「さすが、万丈目くんよね。」
『何が??』
「ろじこのデュエルを何度も見て感じるんだけど、今のデッキ、あなたの性格って言うのかしら…プレースタイルにとても合ってるわよ。」
『ホントに!?わぁ、やっぱりすごいなぁ、万丈目くんは。ブルーのトップクラスだもんね。』
「それもそうだけど、私が言ってるのはそこじゃないわよ。」
『どういいこと??』
「ろじこをよく見てる、ってことよ。」
『あー、そこね…って、マジですかー!?』
「じゃなきゃ、あんなにろじこに合ったデッキ作れないわよ。」
『そ、そっか…あれ、でもそれってダメじゃん。言い換えると、いくらデッキ変えても、私の苦手とか弱点もバレバレってことじゃん!!』


ろじこの脳裏に過ぎる、あのときの言葉。


万丈目くんだったら、いいよ―――


『だっ、駄目ーッ!!』
「な、何が駄目なの…」
『つ、付き合うとか、そんなの、まだ早いよぉッ…!!』
「えぇッ!?な、何。まさか告白されたの…!?」
『んなわけないじゃん!!でもさ、でもさ…デッキ作るの手伝ってもらったとき、”これで、いつ付き合ってくれってデュエル挑まれても平気だね”って話したときにね、万丈目くんは”俺なら勝てる”みたいなこと言ったの!!』
「…それって、」
『私も、もしかして…とか思ったんだけどね!?でもさ、これって過剰!?自意識過剰!?』
「そうね、まだ決め付けるのは早いわね。」
『あ、やっぱりですか。』
「そんなしょげないで!!ただ、何とも思ってない子を自室に入れるなんて、彼はしないと思うわよ。」
『そう…かな。10段階で言うならどの辺??』
「うーん…7〜8、ってとこかしら。」
『友達以上恋人未満、ってやつ!?甘酸っぱ!!』
「そうね、でもこれを乗り越えたとき、ろじこは……!!」
『私は……!?』




「何してるノーネ??」
「クロノス教諭!?」
『何でいつもそうタイミングが悪いのよ!?』
「わ、私が何かしたノーネ??」
『あ、いえいえいえ…』


教室に入らずに、ろじこと明日香は廊下で話し込んでいた。
授業開始のチャイムに気がつかず、二人はクロノスが声をかけたことによって初めて授業が始まることを知る。


「授業にギリギリなんて珍しいな。」


入ってすぐの席に座っていた万丈目がろじこに話しかける。
その近くには、十代、三沢、翔もいる。


『ちょっと明日香と話し込んじゃった。』


ろじこは何の躊躇もなく万丈目の隣に座り、明日香もろじこの隣に座った。


「へぇ、てっきり寝坊かと思ったぜ。」
『あんたに言われたくない、十代!!』
「いつまで話しているノーネ、授業を始めますーノ!!」


一言、『今日はちょっかいかけないでよ!!』と小声で言うと、ろじこは後ろに座る十代の方に向けていた体を前に戻した。





「―――では、今日の授業は終わりなノーネ。」


クロノスがそう言い授業を終えると、生徒たちは散り散りに教室を出ていく。
ろじこたちも例外ではなく、席を立った。


「なぁなぁ。」


みんなで廊下を歩いていると、突然、十代が呼び止めた。


「どうしたんだ、十代??」


三沢が問うと、十代はニッと笑って言った。


「ビーチバレーしようぜ。」


「何を言い出すかと思えば。」
「…今は冬よ、十代。」
「くだらん。」
「季節感ゼロっす!!」


三沢、明日香、万丈目、翔が口々に文句を言った。
が、ろじこは思い出したように言う。


『あ、そういえば、温泉施設に温水プールが出来たんだっけ。波が出るやつだよね。』


すると、十代は目を輝かし、明日香たちも納得の表情を浮かべる。


「おー!!よく知ってんじゃん、ろじこ!!ちゃんと浜辺もあるんだぜ!!」
「へぇ…知らなかったわ。なら、良いかもね。」
「あ、明日香クンが言うなら俺も…あ、いや、冬のビーチバレーというのも、なかなか乙じゃないか。」
『私もさんせーい!!』
「……」
「万丈目君も賛成って言ってるっす。」
「だ、誰が!!」
『えー、やっぱ駄目??』
「い、いや……わ、悪くはないんじゃないか??」
『じゃぁ、決定ね!!良かったね、十代!!』
「おう!!……しっかし、万丈目も…」
『万丈目くんが、どうしたの??』
「え、ああ、やっぱ何でもねぇ。」


ろじこには弱いよなぁ〜、と言いかけたが、万丈目が照れて拗ねるといけないので、十代は言葉を濁した。


「じゃぁ、今週末だぜ!!忘れんなよ!!」
『またねー』


一通り予定を決めると、それぞれは別れて寮に向かった。


『バレー楽しみだなぁッ』
「でも、ホントによく知ってたわね、温水プールが出来たなんて。」
『偶然、工事してるの見たから。』
「そうなの。でも、出来たばっかりなら混んでないかしら??」
『あー、どうだろう??でも、案外みんな知らなさそうだよ。』
「それもそうね。」


そこで、ろじこはハッとした。


『プールに行くにあたって、まず悩むこと…!!』
「え、なぁに??」
『水着だぁーッ』


明日香はキョトンとしている。


「水着が、どうしたの??」
『えぇッ!!悩まないの!?どんな水着にしようとか悩まないの!?』
「うーん…あ、ろじこ、もしかしてスクール水着以外持ってないとか??なぁんだ、私が貸してあげるじゃない。」
『サイズ(胸の)が合わんでしょ!!…じゃなくて、水着は持ってるわよ。』
「そうよね。仕事道具ですものね。」
『グラビアアイドルですかッ!?いや、違いますけど!!』


ろじこはハァ〜と長くため息をついた。


『こんなことだったら、”初めての海デートで彼女に着てほしい!!水着ベスト10”とか、ちゃんとチェックしとくんだったぁー!!』
「まだ付き合ってるわけじゃないでしょ??」
『うっ、そうでした……でもさ、それによって今後の評価も違うじゃない??』
「まぁ、ねぇ…でも、週末まで時間があるじゃない。」


ゆっくり考えれば良いわよ、そう言って、明日香は歩くスピードを速めた。


『あ、待ってよー!!』


ワンテンポ遅れ、ろじこは慌てて明日香を追った。





週末には、何かが変わるかもしれない。





++To be continued++





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