刺客の実力!!





ここで負ける、私じゃないから―――










刺客の実力!!










ワァァァ


盛り上がる観衆。
ろじこがデュエル場に上がると、既に相手はディスクを構えていた。


「やぁ、ゆにばーすクン。今日この日を待っていたんだ。」
『フン。私は一生この日が来るなと思ってましたけど。』
「今度こそ、キミとのデュエルで勝ち、キミを手に入れる!!」
『(……やっぱり言った―――!!)』


「それでは〜始めるノーネ!!」


クロノス教諭の合図で、デュエルが始まった。


「『デュエル!!』」


『私が先行よ!!ドロー!!私は切り込み隊長を攻撃表示で召喚、モンスター効果により、コマンド・ナイトを特殊召喚!!』


ろじこのフィールドに、2体のモンスターが現れる。


『まだ終わらないわよ!!私はフィールド魔法”草原”、さらに永続魔法”連合軍”を発動!!』


2枚の魔法カードが発動される。
これで、切り込み隊長、コマンド・ナイト友に攻撃力は2200になる。


『1枚伏せて、ターンエンド!!』





「1ターン目でいきなり、攻撃力2200のモンスターが2体…さすがだぜ、ろじこ。」
「うん…このデュエルばかりは、何があっても負けられないっスよね。」
「ええ、そうね…負ければろじこは、割くんと付き合う羽目になるんですもの。」
「しかし、ろじこくんもカードの引きが良いな。」
「……」


ろじこのデュエルを観戦する、十代、翔、明日香、三沢、そして万丈目。
それぞれ、ろじこの1ターン目に感嘆するが、万丈目だけは黙っていた。


「何黙ってるんだよ万丈目。ろじこの最高の1ターン目だぜ??」
「うるさいぞ十代。俺は静かに観たいんだ。」
「とか言って、緊張して何も言えないんじゃないか??」
「三沢、貴様っ…」

「相手のターンが始まるわよ!!」


明日香の一声で、全員がデュエル場を見る。





「俺のターン、ドロー!!」


割は、ニヤリと笑みを浮かべる。


「俺はサイファー・スカウターを攻撃表示で召喚!!」
『うへぇ、そのモンスター…!!』
「知ってるよな…サイファー・スカウターの効果。戦士族と戦闘を行う場合、このカードの攻守ともに2000ポイントアップする!!」
『…キライなのよそのカード…』
「いけ、サイファー・スカウター!!切り込み隊長を撃破!!」


サイファー・スカウター
ATK:3350
切り込み隊長
ATK:2200


『リバースカード、オープン!!”破壊輪”サイファー・スカウターを破壊する!!』


破壊輪により、互いのライフに3350のダメージが与えられる。


「そうこないとな。俺は2枚場に伏せ、ターンエンド。」



「互いのライフは残り650ね…ろじこはどう来るかしら。」
「相手の場はがら空きっす!!」
「次のターンでろじこの勝ちじゃねぇ??」


一瞬、緊迫していた空気が緩んだと思われたが、三沢と万丈目の言葉でまた元に戻る。


「いや、割の余裕ある顔…そして、伏せカードが気になる。」
「ああ…恐らく、2枚のうち少なくとも1枚は”リビングデッドの呼び声”だ。」


『私のターン、ドロー!!…コマンド・ナイトでダイレクトアタック!!』
「リバースカード、”リビングデッドの呼び声”発動!!サイファー・スカウターを蘇らせる!!」
『ま、またぁ!?』
「戦闘が巻き戻された。攻撃を続けるかい??」
『ふ、フン!!”光の護封剣”発動!!3ターンあなたは攻撃できないわ。1枚伏せて、ターンエンド。』


ろじこは何も出来ずに3ターン目を終える。


「俺のターン!!サイファー・スカウターを召喚!!」
『2体目…!?』
「ふぅ…なかなか攻撃が決まらないな。魔法カード”恵みの雨”で互いのライフを1000回復する!!カードを2枚伏せ、ターンエンドだ。」


互いのライフは1650。
しかし、割の場にはサイファー・スカウターが2体おり、ろじこの場にいる切り込み隊長とコマンド・ナイトでは、サイファー・スカウターを倒すことが出来ない。


『私のターン…強欲な壷で2枚カードをドロー!!』
「この時、永続罠”スキルドレイン”発動!!」


スキルドレインは、モンスター効果を全て無効にするカード。


『私の切り込み隊長とコマンド・ナイトの攻撃力は1800に落ちるけど、サイファー・スカウターの効果も打ち消されるわよ。』
「ああ、承知さ。俺のサイファー・スカウターたちは、あくまでも戦士族対策。切り札じゃないよ。」
『そう…私は”神秘の中華鍋”を発動!!切り込み隊長とコマンド・ナイトを生贄に3600のライフを回復。』


ろじこのライフは5250になる。


「神秘の中華鍋なら、俺のモンスターを破壊してから発動できたはず。そんなにライフを回復して、どうするんだい??」
『まだ秘密よ。ふぅ、やっとライフが5000を越えた…ライフが4000ポイント制だと難しいんだよね、これ。』
「な、何をする気なんだ…」
『でも、1枚伏せて、ここでターンエンドよ。』


場ががら空きのまま、ろじこはターンを終了した。


「な、なんでろじこさんは、わざわざ場をがら空きに…」
「あそこで攻撃してたら勝ててたぜ??」
「きっと、ろじこには考えがあるんだわ。」
「そうだと良いんだが…万丈目、何かろじこくんの策を知っていないか??」
「フッ…あいつは…最高の勝ち方で勝つだろう。」


万丈目の”最高の勝ち方で”という勝利宣言に、一同は緊張した面持ちで息を飲んだ。


「うぉー、すっげぇ楽しみだぜ!!一体ろじこは、何をやらかすんだ!?」


ただ、十代は目を輝かしていた。


「俺のターン。サイクロンで光の護封剣を破壊。さらに、サイファー・スカウター2体を生贄に、デビルゾアを召喚!!」
『攻撃力2600の悪魔族モンスター…』
「まだだ!!永続罠、”メタル化・魔法反射装甲”をデビルゾアに装備!!」
『まさか…!?』
「そう。俺はメタル化を装備したデビルゾアを生贄に捧げ…いでよ、メタルデビルゾア!!」


割のデッキから、メタルデビルゾアが特殊召喚される。


「攻撃力は最高クラスの3000だ。残念ながら、終わりだぜ、ろじこくん!!」
『リバースカード”攻撃の無力化”発動!!バトルフェイズを終了させる…』
「なんとか逃げ切ったんだね、ターンエンドだ。」
『私のターン……』


ろじこは罠、無謀な欲張りを発動し、2枚カードをドローする。


「良いのか??後2ターンはカードをドローできなくなるぜ。」
『大丈夫よ。このターンで終わらせるから。』





「…やっと揃ったか…」


万丈目がつぶやく。
それに反応する十代。


「マジで!?なぁ、万丈目!!一体どうなるんだ!?」
「ええい、見ていたら分かるだろう!?」
「うおお、待てねー!!」
「もう、十代…待たなくても今はろじこのターンなんだから。すぐ分かるわよ。」





『私は”デビル・フランケン”を召喚!!』
「!!…驚いた。悪魔族モンスターもいたのか。」
『これはねぇ、万丈目くんがデッキに入れるようアドバイスしてくれたの♪』
「へ、へぇ…万丈目…ねぇ。」


万丈目の名を聞き、割は眉間にシワを寄せる。
そして、十代たちは一斉に万丈目の方を見る。


「ほほぉ…ということは、ろじこくんのデッキは、ろじこくんとキミの初めての共同作業の証なのか、万丈目。」
「へぇ、知らなかったわ。初めての共同作業って、普通は結婚式の時のケーキ入刀なのよね。」
「何やってんだか、って感じっスね。」
「だから、一体ろじこはどうやって勝つんだよぉ!?」


十代はさておき、みんなの発言と視線に万丈目は少し不機嫌そうに顔を赤くするも、どこか自慢げであった。

共同作業、と言っても、万丈目がアドバイスしたのはデビル・フランケンのカードだけである。
ろじこはこのカードを見た目で嫌がっていたが、効果としては使えるので、万丈目が半ば無理矢理デッキに入れさせた。


『デビル・フランケン…効果は、知ってる??5000ライフを払うことで、融合デッキからモンスターを特殊召喚する。』
「融合、モンスター……」





「これからだ…」


万丈目は真剣な表情でろじこを見つめる。


『このターン、私はあなたに感動と絶望を味わわせる!!』


ビシッと人差し指を割に突き出し、ろじこは高らかに叫んだ。


『私はライフを5000払い、融合デッキから”青眼の究極竜”を特殊召喚!!』
「何ぃっ…ブルーアイズ・アルティメットドラゴン…!?」


白く輝く竜に、誰しもが見とれる。
しかし、ここで終わるろじこではなかった。


『まだよ!!』
「っ…!?」
『魔法カード”融合”発動!!場の青眼の究極竜と、手札のカオス・ソルジャーを融合する!!』
「な、そんなカードがあるのか…!?」
『”究極竜騎士(マスター・オブ・ドラゴンナイト)”、融合召喚!!』


まばゆい光に包まれ、最強の竜に乗る最強の戦士が姿を表す。


「な、何ですーノ、このモンスターは……」


これには教師陣もただ息を飲むばかりであった。


『さらに、永続罠、”DNA改造手術”でデビル・フランケンをドラゴン族にする!!』


究極竜騎士
ATK:5000→5500



『あなたがどんなに強いモンスターを出したとしても、私はその更に上をいく!!』
「…!!」
『究極竜騎士、メタルデビルゾアを撃破よ!!』
「…ゆにばーすくん、キミはやはり…」


驚きの余り、ギャラリーは静まり返っていた。
そして、割のライフがゼロになり、ソリットビジョンが消えて初めて、ろじこの勝利に気がつくのであった。


「しっ、勝者、シニョーラゆにばーすなノーネ!!」


ワァァ…


歓声が止まない。
割はろじこに近づくと、眉尻を下げ、お手上げだと言わんばかりに笑った。


「ふぅ、俺の完敗だよ。ゆにばーすくん。」
『残念ながら、付き合うことは出来ないけど、でもデュエルならいつでも受けるわよ。』
「そうだな…キミが万丈目を好きなのはよく分かったし。」
『なっ、なっ…!?』
「俺は一旦、身を引くよ。キミに隙が出来るまで、さ。」
『…好き…!?』
「”好き”じゃなくて、”隙”。…ホントに究極竜騎士を使うデュエリストか??」
『う、うるさい、何度挑まれてもボコボコにしてやるわよ!!』
「ははっ…またデュエルしような。」


割は、デュエル場を去って行った。
それと同時に、ギャラリーもちらほらと帰っていく。


「ろじこ、素晴らしいデュエルでしたよ。」
『コマンド・ナイト……好き……』
「は!?言う相手が違いますよ。全く…」
『うふふん…もう、私、自分の気持ちに嘘が付けない。』
「始めから素直だったではないですか。」
『あ、そっか…』
「さぁ、万丈目や明日香さんのところへ行きましょう。」
『うん…!!』




『見てくれたぁ!?私、頑張ったよー!!』


手を振りながら、みんなの元に駆け寄るろじこ。


「ろじこ!!良かったわよ。途中ヒヤヒヤしたけど。」
『へへーん。』
「でも、青眼の究極竜を出せたのは万丈目のおかげだろ??ってて…!?」


ニッとからかうように笑う十代。
それを明日香が制止するよう、十代の頬を引っ張る。


「別に、俺はカードを1枚入れてやっただけだ。カードを使いこなしたのはゆにばーすだからな。」
『そんなことないよ!!万丈目くんのアドバイスと、直前の電話が無かったら、私きっとダメだった。』


ありがとう、と、満面の笑みを浮かべるろじこ。
それに対し、万丈目は「いや…いい…」とそっぽを向いて、踵を翻した。


「万丈目のやつ。照れ屋でやんの。」
「もう、兄貴ったらまたからかう…」
「十代に恋愛はまだまだたな。」
「ちぇっ、なんだよー。」


十代たちをよそに、ろじこは去る万丈目の背中をずっと見つめていた。





「うううっ…シニョール割……」


割は案外吹っ切れた感じだったが、クロノスは以外と落ち込んでいた。


「あの時の清々しいシニョールが昔の私と……重ならないノーネ!!」


クロノスに昔、何があったのかは謎であるが、割のように吹っ切れない、ほろ苦い恋をしたようである。


「うわぁぁぁん!!感動したノーネ!!」





エントリーナンバー4の件、割込太郎の件、とりあえずは両方とも解決した。
しばらくは、平穏な学園生活を送れるであろう。





「…そういえばろじこ。さっき万丈目くんに言ってた、”直前の電話”ってなぁに??」
『うん!?』
「くすっ。さしづめ、緊張したから声が聞きたい、ってとこかしら??」
『まさか盗聴してたんじゃ…!?』
「そんな趣味の悪いことしないわよ!!…分かりやすすぎるのよ、ろじこは…」
『うっ…』





++To be continued++







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