ミス・アカデミアの憂鬱


この気持ちは、誰にも負けない―――










ミス・アカデミアの憂鬱










『あぁぁぁすかぁぁぁ!!』


放課後早々、明日香に泣きつくろじこ。

「な…何があったの…??」
『私を女にしてくださいッ!!』
「え、えぇッ!?」




突然のろじこの発言に戸惑う明日香。


「…そんなの……万丈目くんに頼みなさいよ。」
『そういう”女にして”じゃなくて……』
「何かあったの??」
『それがね……』


ろじこが廊下を歩いていると一人の女子生徒――恐らく上級生であろう――が、待ち伏せをしていた。


「…あなたが、ゆにばーすろじこ??」
『は、はぁ…』
「ふーん…ミス・アカデミアねぇ…」
『な、何なんですか??』
「顔は普通、スタイルも別に良いわけじゃないし…」
『どうして見ず知らずの人にとやかく言われないといけないんですか!?』
「知ってるわよ。ミスコンで戦った仲でしょう??」


ミスコン自体、緊張のせいでうろ覚えだったのだが、ろじこは一生懸命あのステージを思い出す。


『あ、エントリーナンバー4の人!!』
「やっぱり、ミス・アカデミアに選ばれる人は私みたいなエントリー止まりは眼中にないってことね??まぁお高くとまって。小日向ならまだしも、あなたみたいな見た目バカそうな子が選ばれるなんて、この学園も落ちたものだわ。」


ぷちっ


つらつらと述べられる厭味に、ろじこがキレた。



『……生憎、見た目がバカそうでもけっこう頭良いんですよ??記憶力も良い方だし…あ、先輩は存在感薄かったんで忘れてましたけど。』
「なっ、なんですってぇ!?」
『この学園も落ちたものだわって言いましたけど、私の足元にもおよばなかった先輩はあれですか??土にでも埋まってるんですかね??ミミズに分解されたら良いのに。』
「ホント生意気な一年生ね!!今年はマグレとして…ミスコンにお子様はお呼びじゃないのよ!!来年も出たいなら、私みたいにナイスバディになることね!!」


ビシッと人差し指をろじこに突き出す女子生徒。


『んなっ、私が幼児体型と言いたいんですか!?』
「あら、そこまで言ってないわよ。…フフッ、私には及ばないけどね。」


うふーん、と言うように、ボディラインを強調させるポージングをする女子生徒に、ろじこは衝撃を受けた。


『(わっ、わての負けやぁ―――!!)』




『っつーわけなんですね。私だって自信ないわけじゃないんですけどね。でもどーにかなりませんかね。』
「ろじこは今のろじこで十分よ。…それに、エントリーナンバー4の人なら、今年卒業だから、来年のミスコンには出ないわ。」
『そう言われてみれば…留年??うへぇ、それだったらまた来年も絡まれるのかぁ…早く卒業して欲しいなぁ。』


「聞こえてるわよ。」


『うひぃ!!』


ろじこが肩をビクつかせ、振り返るとそこにはエントリーナンバー4の女子生徒がいた。
今のろじこたちの会話を聞いたのか、眉をピクピクさせている辺り、確実に腹立っているのだろう。


「ふっ、まぁいいわ……ゆにばーすさん、ごきげんよう。今日も胸の方が、最近ケータイ界でも流行りの超薄型サイズで、うらやましいわ。私なんか肩がこっちゃって大変よ。まぁ、いわゆる”山おんな壁おんな”??」
「(…ろじこがこうなった原因はこいつなのね…)」
『よ、余計なお世話です!!だいたい、肩が凝るのは、先輩の胸が垂れてるからじゃないんですか!?私のはハリがあるから肩なんか凝ったことありませんわ!!おほほ』
「垂れてる、ですってぇ!?」
『ふーん!!』
「…ふんっ!!」
「(これじゃコントよ、二人とも……)」


対立するろじこと女子生徒に、明日香はため息をつくのであった。


「だいたいあなた、万丈目くんとどういう関係なわけ!?」
『!!…何って、別に……』
「はっきり言わせてもらうわ。万丈目くんにあなたは似合わない!!」
『せっ、先輩には関係ないことです!!だいたい私、別に彼女とか、まだそういう関係じゃないですから。私にとやかく言う前に告白したらいいじゃないですか!?』
「そう、まだ付き合ってないのね…なら良いわ。じゃぁね。」


万丈目とろじこがまだ付き合っていないということを知ると、女子生徒はあっさりと引き下がって去って行った。


「…良かったの、ろじこ??」
『え??』
「あの人、本当に告白しちゃうかもよ??」
『う、ん……』
「本当は心配なんでしょう??」
『…うん…』
「ふふ、大丈夫よ。ろじこの気持ちはきっと万丈目くんにも伝わってるわ。」
『え、それって告る前からバレてるってこと!?』
「さぁね……」
『あ、明日香の意地悪ー!!』



―――自室。


『………』


風呂に入り、パジャマ姿でベッドの上に三角座りをするろじこ。


「万丈目のことが気になりますか??」
『………もし、エントリーナンバー4と万丈目くんが付き合うようになったら……私、きっと立ち直れない………』
「恋に悩みは付き物です、ろじこ。」
『そうなると、かの割込太郎がしゃしゃり出てくる……嫌だ。』
「ろじこはモテますから、何も相手は割込太郎だけではありませんよ!!」
『やだぁ!!私は万丈目くんじゃないと嫌だぁ!!』


コマンド・ナイトはろじこを抱きしめる。
もっとも、精霊なので触れることは出来ないが。


『コマンド・ナイト……』
「大丈夫です。ろじこは、大丈夫です。」
『…ありがとう…』


安心したのか、最近ずっと寝不足だったせいか、ろじこはすぐに眠った。





―――翌日


『あー…よく寝たぁ…』
「今日は授業中寝ないようにな。」
『ちぃーっす……って、万丈目くん!!』


通学路で、ろじこは万丈目と会う。


「2回目だな。通学途中であうのは。」
『あは、そうだね……私、遅刻ギリだから。』
「起きれないのか??」
『そ、そうなの…(あなたのことを考えて眠れないんです―――!!)』


渇いた笑みを浮かべるろじこ。


「朝…電話してやろうか??」
『えっ??それは、いわゆるモーニングコール??』
「いや、その…ゆにばーすが朝きちんと起きれるようになるまで…」
『本当!?ありがとう!!』
「いや、いい…」


ろじこには、万丈目とのこのような些細な繋がりがとても嬉しかった。
しかし、まだ昨日のエントリーナンバー4のことが気にかかる。


「今日は、クロノス教諭に呼ばれていて急いでいるんだ。また後で…」
『ま、待って!!』


ろじこはとっさに万丈目の青い制服の裾を掴む。


「!?」


驚いた顔を見せる万丈目に、ろじこはハッとする。


『ご、ごめん!!何でもないの!!』


慌てるろじこに、万丈目はフッと笑う。

「前にもこんなことがあったな…あのときは、立場が逆だったが。」


万丈目が言っているのは、万丈目と割のデュエル実習後のことだ。


『そ、そうだね…あ、急いでるんだよね!!ごめん、行って!!』
「ああ、すまない…今日も、一緒に授業を受けないか??」
『え??』
「あ、いや、嫌ならいいんだ。」
『嬉しい!!』
「そうか。じゃぁ、また授業でな。」
『うん!!』


『ってなわけで、今日は…』
「良いわよ、万丈目くんと授業受けても。」
『ありがとう!!』
「私、ろじこの後ろに座るから。」
『えぇっ!?』





―――授業


『(な、何でこんなことに……)』


ろじこの隣に座る万丈目は、明らかに不機嫌そうな顔をしている。


「やぁ。お二人さん、お揃いで。」
「へぇ。ろじこと万丈目、やっぱり…」
「三沢くんも、アニキも、二人には絡まない約束っすよ。」
「フフ。私たちも一緒に授業を受けようとしていたら、偶然ろじこの後ろの席になったみたい。」


そう、ろじこと万丈目の座席のすぐ後ろに、明日香、十代、翔、三沢が座っているのだ。


「お、お前ら……」
「まぁまぁ、万丈目。偶然なんだ、偶然。」
「嘘をつけぇ、三沢!!」
「ああ、嘘だ!!」
「十代…貴様…」

『わ、わざとここに座ったんでしょう、明日香!!』
「でも、エントリーナンバー4の連中が座るよりはマシでしょ??」
『うっ……』

「はぁ…だから僕は反対したのに…」


そんなこんなで授業が始まるのだが…


「あっ、今、ろじこが万丈目の方をチラ見したぞ、十代!!」
「いや、いまのはおもむろに見ていたぞ、三沢!!」
『うっ、うるさい!!見ちゃ悪い!?』
「そこ!!うるさいノ〜ネ!!」


「あっ、今度は万丈目が少し落ち込み気味のろじこの頭をポンポンってしたぞ、三沢!!」
「ほぉ、さりげなくスキンシップだな、十代!!」
「べっ、別に良いだろう!!うるさいぞ、お前ら!!」
「またそこです〜ノ!?」


「「……はぁ。」」


彼らを連れて来たこと申し訳なく思う明日香に、やっぱり僕がもっと強く反対しとおけばと後悔する翔。


授業は無事、終わるのだろうか―――





++To be continued++




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