夜道で不良に絡まれた。
やばいことになった。
夜道で不良に絡まれた。
たとえば海外旅行とか、そういう見知らぬ地に行ったときを想像して欲しい。
土地勘や頼れる人もない状況で、やばそうな人に絡まれたら。
多分、死ぬほど怖いし焦るしどうしようってなるはず。
その状況が、今である。
「こんな夜道に女の子一人で歩いて何してるの?暇なんだ?」
『いや、その、暇ちゃうし。お家帰りたいんすけどねー…』
「そんなこと言わずにさぁ、俺らと遊ぼうぜ?」
「そうそう、いっぱい楽しいこと教えてやるよ!」
『ひいいいい』
もちろんサテライトにもこのテの絡みをしてくる変なのはいっぱいいる。
いつもなら京介がいるので、そういうのは彼が追い払ってくれるし、次第に不良たちも私を見るなり、サティスファクションのおんなだやべぇ、みたいに逃げるようになったし。
油断してたー…
1対3は卑怯だ。
手を引かれると力負けしてしまう。
ここで右にいる男に金蹴りを食らわすと右が撃沈してスキができる。
しかしそうして右手に逃げると、左や後ろにいる男に差し押さえられる。
そして金蹴りされてキレた右の男に犯される。
そうなると、やばい。
つまり、私の逃げる手は…
右に金蹴り!
そして意表を突いて左後方へ逃走!
『よっしゃぁ!これでいこー!』
「うぐぅ…!」
「おい大丈夫か!…てめぇっ!」
「逃げるなこらぁ!」
『きゃああああああああ』
私は猛ダッシュで逃げた。
奴ら、後ろから追っかけてくるー!!
「待てこらぁ!」
『ひいい助けてええええ誰か助けてえええ!きょおすけえええええ!』
こんなときに京介がいたら…
体力には自信があったが、土地勘の全くないこの場所でいつまで逃げられるか。
するとそのとき私の背後で、おりゃー!という声がして、その後に鈍い音と、うめき声が聞こえた。
『え…?』
私は振り返る。
「大丈夫か?」
私の目の前には、悶絶してうずくまる男たちと、きれいな金髪の…
不良。
『ひぃ!新たなる敵ぃ!』
「おい敵ってなんだよ!助けてやったのによぉ!」
『ご、ごめんなさい!』
私がビビりまくってると、金髪お兄さんはもう一度、大丈夫かと聞いてくれた。
一瞬でも、まさか京介が?!と思ったので正直金髪が目に入ったときはがっかりしたが、しかしお兄さんは優しそうな人だったので少し安心した。
『大丈夫です、ありがとう。助かりました。』
「こんな夜中に何してたんだ?危ねえのはわかってるだろ?」
『そうなんですけど、家なき子なわけで…』
「は?ホームレス?なんで?」
『はい!未来から来ました!』
キリッ!として答えると、金髪お兄さんは変な顔をした。
「まじかよ!ってそんなわけあるか!…って言いたいんだけどよ、俺も古代エジプトの王の友達とかいるわけだし、なんっつーか。」
『なにそれ変なの。』
「お前が言うなよ。」
しかしこの金髪お兄さん、話がわかりそうだ!
城之内さんというらしい。
私も名乗った。
「しっかし未来からねぇ…」
『何すか?』
「その割には今の時代より昔みてぇな格好してるよな?ろじこの時代にはそーゆーダメージ加工っつーか、クラッシュ系の服が流行ってんのか?」
『・・・』
満足ジャケットばかにされた。
『格差とか、いろいろあるんですよ。シティの裕福なところだともっとキレイな服着てますよ。』
「ふーん、ろじこも大変なんだな。」
頭をポン、と叩かれた。
やっばい、この人…かっこええ。
顔、声、髪型、京介とは違うけど、雰囲気とか見た目の怖さとは裏腹な優しさとかなんかもうそーゆーのが京介っぽい!
「それで、家がねえんだな。」
『はい。それで、たまたま出会った茶色い髪のお兄さんに、"この家で面倒を見てもらうがいい!ワハハハハ!"って、GAME SHOPと書かれた家に案内されたんです。でも、そんな急に見知らぬ家に一人でお邪魔するわけにもいかず。』
「その言い方…海馬かよ。」
『あ、そうそう!海馬さんです!友達ですか?』
「友達じゃねえよ。」
『えー…』
「その家、遊戯の家だな。遊戯は俺のダチだぜ!明日連れてってやるよ!」
城之内さんはニッと爽やかな笑みをくれた。
かっこええ!かっこええ!
「今日はもう遅いからなー…」
『・・・?』
「俺ん家来るか?」
『!!!!!!』
そんな私には京介が!
と思ったが、夜も遅いし疲れたし、城之内さんはいい人のような気がするのでお邪魔することにした。
死ぬほど緊張するので、クロウの家クロウの家…と自分に変な暗示をかける。
もし間違いを起こしたら…!
なんてドキドキしたが、冷静になって考えたら、ないわ。
なにより満足ジャケットだし、まぁ文字通りの勝負服だけど、よくよく思い出したら今日の下着も満足仕様だわ。
城之内さんのお家で一泊し、明日、その遊戯さんという人に会いに行くことになった。
+continue+
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