ナイトローズナイト




『誰の仕業だこれ。』


私が自分のアジトに帰ると、入り口に箱があった。
その箱には、拾ってください、と書かれている。

そして、その箱にはーーー











ナイトローズナイト










『私、カードの精霊が見えるようになってしまったのだろーか。』
「おいろじこ、はらへった!」
『君、ナイトローズナイトだよね?』
「ばかじゃねーの!きょーすけだよ!」
『ちげーよ。』
「ちげくねーよ。」
『…まじか。』


捨て猫のように、箱に入っていたのは身長が1mあるかないかの大きさの、子ども京介だった。

髪型も髪色も京介だったし、まさかナイトローズナイトの精霊が見えてるんじゃないかと思ったけど、目つきとか話し方とか態度とかももう京介そのものだった。


『ぼくー、嘘はついちゃいけないよー。おうちどこかなー?お姉さんが送ってあげるよ?』
「ばかにすんなー!ろじこ、おれはまじできょーすけだって!」
『うそぉ…』


だって、京介もっとデカイし…

確かにこの世界は、デュエルで人や地区を制圧できるし、バイクがあり得ない高さを飛ぶし、カードの精霊とか出てくるけど。

大人が子供になるなんて聞いたことない。


『じゃー、ぼくが本当に京介だって証明できることある?』


ごくり、と生唾を飲み込んでミニ京介に聞いてみる。

すると、京介はニヤリ、と笑う。


「ろじこの弱いとこ全部責めてやるぜー!ひゃーはははは!むぐっ!!」


ミニ京介は私に襲いかかろうとするが、なんせミニなので、この私でも簡単にそれを制することができる。


『そのニヤリっちゅー嫌な顔、ほんでその性欲、まじで京介だわ…』
「よし、わかりゃいいんだよ。」


このミニ京介、憎たらしいけどよーく見たらちょー可愛い。

まずサイズは小さいし、顔も子どもだから少し丸いし、目つきもオトナ京介ほど鋭くなくて睨まれても怖くない。
手もふにふにしてるし小さい。


『京介…』
「なんだよ?」
『きゃわわーーーーーん!』
「んぐぅ!」


これがまじで京介なんだと分かったら、ミニ京介が可愛くて可愛くて仕方がなくなってきた。
私は思いっきりミニ京介を抱きしめた。


「むね!ちっそくする!」
『ああん可愛いー!』


私は京介を部屋に招き入れた。
お腹すいたって言ってたな…


『ご飯作るから、待っててね。』
「おう。」


京介はいつものような返事をして私のベッドに座り、自分のデッキのカードを並べて遊んでいる。

ブラッド・ヴォルスとかいろいろカードが京介のデッキで、疑っていたわけではないが、本当に京介なのだとわかった。


『きょーたん。できたよー』
「うぇーい!」


ミニ京介はオトナ京介より丸っこい目をキラキラ輝かせてテトテトと走ってくる。

サテライトではあまり豪華な食事はできないが、今夜はあるだけの食材とあるだけの私のテクで頑張った。


「ろじこ!いつもよりうまそーだぜ!」
『ほんと?いっぱい食べていーよ。』
「いただきまーす!」


けぷ、とゲップをさせて、ミニ京介はお腹をさする。


「ろじここちそーさま!まんぞくしたぜ!」
『そっかそっか、良かった。果物たべる?』
「まじでー!たべる!」
『ん。』


私はテーブルにおいていたりんごを手に取った。
テーブルで横に座っていたミニ京介が、椅子から降りたと思うと私の膝に登ろうとする。


「ひざにすわる!」
『いーよ。おいで、きょーたん。』


私はミニ京介を膝に乗せ、りんごの皮をむいていく。


『きょーたん、りんごうさぎがいい?』
「おう!」


りんごうさぎになるように皮をむき、フォークに刺す。


『きょーたん。はい、あーん。』
「おま、いつもそんなのしねえじゃねえか!」
『膝に乗せるのも、りんごうさぎも、あーんも、ミニ京介だから特別ね。はい。』
「あーん」


口を大きくもぐもぐと動かしてりんごを食べるミニ京介。


『子どもってかわいいー!京介も好きだけど、ミニ京介ちょーかわいい!育てたいー!』
「ろじこ、ふろ!ふろはいろ!」
『ん。お風呂ね。…自分で入れるよね?』
「むり!」
『甘えんな!』
「ろじこ〜おれひとりじゃむり…」


表情を歪ませ、瞳をうるっとさせるミニ京介。
そうだった、今日の京介はいつもの京介じゃない、ミニ京介だ。
初っ端から私を押し倒そうとしたけど、これは子どもなんだ。


『あー、泣かないで、ほら。一緒に入ろ?ね?』
「……うん。」


念のため、京介の顔をじっと見る。
あの、ニヤリ、としたいつもの悪い笑みを浮かべていないかチェックしておこう。


「…なに、じろじろみてんだよ。」
『ふ、別に?』


不審な目で見てくるミニ京介の手を引いて、私は京介を風呂場へ連れて行く。


『はい、服脱がしてあげる。ばんざーいして。』
「ふっ。いつもはおれがろじこのふくをぬがしてばっかだったからな!きょうだけはおれのふくをぬがさせてやるぜ!」
『自分で脱げんなら脱ぐ?』
「ああんろじこー!」


ミニ京介は手をあげてばんざいのかっこをする。


『はい、えらいえらい。ズボンとパンツも脱ぐのよ。』
「えっ!」
『ん?』
「ろじこ、それはその…なんっつーぷれいだよ。」
『プレイじゃねーよ。』


ミニ京介はもじもじしていたが、そろそろ面倒だったので一気にズボンとパンツを下ろした。


『・・・』
「な、なんだよ!」
『きょーたん。』
「やめろよ!じろじろ、かはんしんみるのやめろよ!」
『ミニ京介はやっぱり股間もミニなのね…良かった。』
「ばっ…!おまえばかじゃねーの!もうみるな!ふろはいる!」


ミニ京介は顔を真っ赤にして、風呂のドアを開け先に中に入ってしまった。

じゃぷん!と、お湯に浸かった音がする。

あいつ、体流さずに湯船に入ったな。


しゃーないなぁ、と私も服を脱ぎ風呂場のドアを開けた。


『・・・』
「よう、ろじこ。」
『・・・え。』










私が見たものは、いつものでかい態度で湯船に浸かる、オトナ京介。


『えっ、ミニ京介は?きょーたーん、出ておいでー、おーい。』
「出てこねぇよ。…それにしても、ろじこ。あられもねぇ姿。」
『…はっ、やだ!ばか見ないでよ!ばかばか!』
「ほら、こっちこいよ。」


オトナ京介に手を引かれる。
京介が後ろからに抱きしめられる形で湯船に浸かる。


『本当は、逆の感じで私がミニ京介をお風呂に入れてるはずだったのに。』
「ははは、油断したなろじこ。」
『私のきょーたんどこ…』
「ここだ。」
『ちがうー』


ミニ京介の頭洗って、水が目に入ったぁ〜って泣いちゃうところとか、体洗ってあげるときに恥ずかしがるところとか、見たかったのに。


『こんな、オトナ京介にすっぽり包まれてるはずじゃなかったんだけどなぁー』
「すっぽりがいやならしっぽりするか?」
『しねーよ』
「つれねーなー。」


ところで、何で京介は急にミニ京介になって、ミニ京介はなんで急にオトナになったんだろう?


『何か変なもん食べた?遊星に変なもの開発された?』
「知らねー。…朝起きたらまじで知らないうちに子どもになってて、湯船に浸かったら急に体が熱くなってでかくなった。」
『謎だわ…』


オトナ京介は、ぽりぽりと頭を掻くと、おお!と思い出したように手を叩く。


「昨日寝る前に、ろじこの胸に何の抵抗もされず顔をうずめたいってお願いした。」
『なんつーお願いしてんの。てゆーか寝る前にお願いするって何よ。』
「いやー、願ってみるもんだな!」


もし願いが叶うなら、


私も今度子どもの姿にしてください、神様!


+fin+




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