果し状




ある日、私がブルー女子寮の自室に戻ると、机の上に矢が刺さっていた。


『んな物騒なことある…!?』


まさに、白羽の矢である。
そして、私は矢に結びつけられていた紙を広げた。










果し状










『なになに…』




” ろじこへ
 俺はお前にデュエルを申し込む!!
 夕暮れまでに、灯台の下まで来い!
 来なければデュエルから逃げたとみなし、
 俺の女になったことにする! ”




『むちゃくちゃなー!!』



そういや、ちょっと前から万丈目にデュエルしろって言われてたな…
そのときは、万丈目に負けたくないし、スランプ気味の私は何かと万丈目とのデュエルを避けてたんだった。

しかし、あいついつからこんな強引な手を使うようになったんだー!



『夕暮れまで…って、今日の?!もう日暮れてるんだけど!!』



私は放課後、明日香たちとケーキ食べて優雅に女子会をしていたのであった。



『ちくしょー!知らない間に万丈目の女になんてなってたまるか!!』



私は急いで支度をした。

ちょっと髪が乱れてるからとかして…
まつげは大丈夫!いや、うーん、ちょっと直してこ。
えーと、デッキとデュエルディスクと、連絡とれなかったときのためにPDAも忘れずに持っていかなくちゃ!

そして、飛び出すように部屋を出た。



日は暮れてる上に、身支度にも時間とっちゃったなぁ…
万丈目まだ灯台で待ってんのかな。


あれ?そういや私なんで万丈目とデュエルすのだけなのに身だしなみ気をつけてんの?





灯台に着くと、黒いマントがなびいているのが見えた。


万丈目だ。

彼は腕を組んでこちらの方を見ている。



『万丈目!』
「”さん”だっ!!遅いじゃないか、ろじこ!てっきりお前は負けを認めて来ないのかと思ったぞ!」
『そもそも急用を矢文で送るな!!明日香たちとケーキ食べてたのよ…さっき寮に帰ってきたんだから。』
「自覚が足りんぞ!デュエリストとはいつ戦いを申し込まれても受け立つもの!油断は禁物だ!」
『なにそれ…まぁ、いいわ。デュエルよ!もう時間は遅いから、ライフは2000でいいよね!』
「そうこなくてはな!このデュエル、負けた方は勝った方の言うことを1つ聞かなくてはならない!」
『なっ!?』



万丈目こいつ、何言ってんの?!


私があっけにとられている間に、万丈目はデッキからカードをドローする。
先攻がとられてしまった。



『わ、私お得意の速攻が…!』
「油断は禁物だと言っただろう?」


万丈目はニヤリと笑ってそう言うと、モンスターを召喚する。


「俺は仮面竜を召喚!2枚カードを伏せてターンエンドだ。」
『わ、私のターン!』


仮面竜か…破壊された時、ドラゴン族を特殊召喚できるカードね。
万丈目、最近おじゃま達とじゃれあってるくせに、アームド・ドラゴン召喚する気満々じゃん!
いやでも、あの伏せカード…

おじゃまトリオからの、レベル制限A地区っつー鬼コンボもあるから嫌だなぁ。



『ハーピィの羽箒!その邪魔な伏せカードはおさらばよっ!』
「ふはは!確かにひとつはおじゃまトリオ!チェーンにより発動!ろじこのフィールドにおじゃまトークンが守備表示で3体特殊召喚される!」
『ぎゃーん!おじゃまーーー!』
「あぁん、ろじこの姉貴ひどい〜ん!」
『おじゃまはおじゃまなんだから黙ってなさーい!』
「ふっ、まだだ。もうひとつのカードは通常魔法、おじゃマジック!」
『げーっ!!』
「おじゃマジックのカードがフィールドから墓地へ送られたとき、おじゃまグリーン・イエロー・ブラックを1体ずつ手札に加える!」
『ちょっと待ってよ、こんなとこでおじゃまキングなんか召喚されたら、私のデュエル終わっちゃう!』
「読みが甘いとすぐに負けてしまうぞ?」
『くっ…!』



モンスターを召喚して仮面竜を倒しても、きっとアームド・ドラゴンが召喚されてしまう。
でも、私の場のおじゃまトークンなんかすぐに倒されて、アームド・ドラゴンのレベルが上がってっちゃう!



『私はコマンド・ナイトを召喚!仮面竜を攻撃!』
「うっ!……しかし、いいのか?仮面竜の効果で俺はアームド・ドラゴンLv.3を特殊召喚する!」
『私はカードを1枚伏せる。そして、月の書を発動!コマンド・ナイトは裏側守備表示になる!』
「ふっ、考えたか…」



おそらく万丈目は次のターン、アームド・ドラゴンをレベルアップさせるはず。
そうすると、アームド・ドラゴンLv.5の効果で表側モンスターは破壊されてしまう。



「予想通り、俺はこのスタンバイフェイズ、アームド・ドラゴンをレベルアップさせる!」
『その効果でコマンド・ナイトは破壊させない!』
「だがおじゃまトークンには消えてもらう!そしてろじこには300のダメージを受けてもらうぞ!」
『きゃぁぁ!…容赦ないんだから!』
「そして俺は、こいつを召喚する。魔法カード、融合発動!!」
『げーー!万丈目、融合のカードも引いてたの?!なんてこと…!』
「さぁこい!おじゃまキング!!そしてろじこのモンスターゾーンの3つを使用禁止にする!」



私の場のモンスターゾーンには、1体のおじゃまトークンとコマンド・ナイトがおり、3つがおじゃまキングの効果により使用禁止にされてしまっている。
お互いのライフは、万丈目が1800、私が1700だ。



「そしてアームド・ドラゴンの攻撃!おじゃまトークンを破壊!」
『くっ、おじゃまトークンが破壊されて、また私は300ポイントのダメージ…でも、おかげで使用できるモンスターゾーンが1つ空いた!!』
「しかし、アームド・ドラゴンLv.5はLv.7にレベルアップ!」
『くそぅ、絶体絶命じゃないか…!!』



まだ、望みはある!
ライフ2000でこのデュエルに乗ったことを後悔させてやるわ…!!
一発逆転を見せてやるんだからー!!



『私のターン!……きた!』
「何を引いた、ろじこ…!」
『私はサムライソード・バロンを召喚!』
「星4つの戦士族…しかし、それでは俺のアームド・ドラゴンを倒すことはできん!」
『アームド・ドラゴンはね…』
「何っ?!」



サムライソード・バロンは1ターンに1度、守備表示モンスターを攻撃表示に変える効果をもつモンスター。



『そう。私が狙うのは…』
「おじゃまキングか…!!」
『サムライソード・バロンは攻撃力1600、だけどコマンドナイトの効果で攻撃力は400アップする!』
「そうだ、ろじこのデッキはコマンド・ナイトで戦士族モンスターを強化するデッキ!」
『そのまま2000のダメージを受けてもらうわ!!』
「うわああああ!」



ライフが0になるとともに、万丈目はその場にひざまずく。



『か、勝った…!』
「くそっ、なんてことだ。せっかくここまでしてろじこを呼び出しデュエルに持ち込んだというのにっ!」



万丈目は心底悔しそうな顔をして、地面をドンと叩いた。
そもそも、勝った方の言うことを聞くなんて、万丈目は一体何を考えていたのよ…



『ねぇ、万丈目。』
「なんだ。」
『負けた方が勝った方の言うこと何でも聞くんでしょ?』
「…あぁ。男に二言はない!俺をお前の男にするだの、一生お前についていくだの、何でも言え!」
『選択肢の幅狭いわ!!…ちなみに、もし万丈目が勝ったら何て言ったの?』



その…やっぱり、俺の女になれ!とか……



「うん?そうだな…まぁ、俺の前では他の男とは仲良くするな、くらいか。」
『えっ?!』
「何だ?不満か?」
『や、そういうわけじゃ…』
「お前の気持ちはお前のものだ。俺にはろじこに強要なんてできない。」



じゃぁなんであんなにしつこくデュエル挑んできてたのよ…!
まぁ避けてた私も悪いけど…でも…



でも…



あー…そうか。
私、万丈目のこういう実はちょっと優しいところ、好きなんだ。

小綺麗にして、でも走ってここに来たのは、万丈目に少しでも可愛いと思われたかったし、そして早く会いたかったからだ。



『ま、万丈目…』
「何だ?かまわん、何でも言え。」
『あのね、私…デュエルとかだと負けん気強いし可愛げないけど…』
「ろじこ…?」
『でも私を…万丈目のものに、してくれないかな?』
「お、お前…!いいのか。」
『うん…』



万丈目が顔を真っ赤にする。
でもきっと、私だって真っ赤だ。



「このデュエルがなければ…お互いこんな話はしてないだろうな。」
『やだ!やっぱり来なければよかった!』
「バカ!ろじこお前それどういう意味だ!」
『だって恥ずかしくて!』





なんだかんだで、私たちはお互いの気持ちを知ることができたわけだ。
これからは、もうちょっとお互い素直になってかないと……


いや。


いいか。私たちにはデュエルがあるんだから!





+fin+


日光浴
型無 麗奈さまに捧げます*゜



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