不満足な日常




「ろじこ、いるか?」
『すぴー』
「何だ、寝てるのか。おい、起きろ!」
『すぴぴぴぴ』
「ったく、どんな寝息だよ…」



・・・



京介はしばらく寝ている私を見つめると、そっと布団の中に手を忍ばせ、私の胸にその手を添えて、よし、と小さくつぶやいた。


『ちょっと何が、よし、なのよ!』
「お、起きてたのかお前!」















不満足な日常










「汚ぇぞお前!寝たふりしてたのかよ!」
『起きなかったらどうするんだろーと思ったらこれよ!』
「胸がしぼんでないか確認した。」
『んなもん確認すんな!』



せっかく寝てたのにー、と寝癖頭をぽりぽりとかく私に、京介は出かけるからついてこいと言う。


『どこ行くの?』
「んなもん、どうでもいいだろ。お前からは俺と同じ、きな臭いニオイがプンプンすると前から思ってたんだ。」
『き、きな臭い!?!?』


え!え!臭いって何が!
ニオイ!?どういうこと!?
え、きな臭いってどういうニオイ?!


「胡散臭ぇってことな。」
『どういうこと!!!』


胡散臭いなんて今まで一度も言われたことないわ!!!


「とにかく行くぞ…ヤバいデュエルと巡り合うためにな」
『ちょっと、そういう身の危険感じることはこりごりなんだけど!』
「わかったか?じゃぁ行くぜ。」
『わかってないーーー!』


無理矢理、京介に連れられて外に出る。



黙ってついていくが…この行き先は、未開発地??


『きょ、京介…?どこ行くつもり…?未開発地なんて、こんな人っ気のないところ…』
「行く宛なんてない。」
『そんなこと言って!人の目のつかないところで私にやらしーことする気でしょ!』
「それは別に人のいるところでもしてるから問題ないだろ?」
『ば、ばかー!!』
「ふん。ろじこは、俺と一緒なら地獄までもついてきてくれるだろ?」
『…まぁ、そのつもりだけど。』



シティとサテライトが繋がった今でさえ、このサテライトの未開発地では、身寄りのない子供達が必死に生きている。

向こうに、幼い二人の男の子と女の子が何かを探しているのが見える。
私たちも、昔は毎日何か金目になるものを探していたっけ。



『…!京介、あれ!』



私が指を指す方で、その小さな子供たちが男2人に絡まれている。


「デュエルで痛い目見たくなかったらそれをこっちに渡しな。」
「で、でも……」


聞き捨てならん言葉ね…!


『ちょっと!そんな小さな子脅してどーすんのよ!』
「なんだぁ、お前…!」
『あんた達こそ、デュエルで痛い目見たくなかったら大人しく帰りなさいよ!ねえ、京介!』
「ああ。デュエルだ…」


私と京介は子供たちをかばうように、男たちの前に立ちはだかる。


「俺はただ、デュエルができればいい。デュエルに取り憑かれた俺を地獄に送ってくれるような、ヤバい奴とのデュエルができればな。」
「おい…こいつヤバいぞ…!」



京介のあまりの頭のヤバさに、男たちもドン引きだ。
しかし京介は男たちを逃がそうとしない。


「ろじこ、お前もデュエルディスクを構えろ。2対2のタッグデュエルだ!」
『オッケー、いくわよ!』





私たちが男たちをデュエルで下すと、覚えてろと捨て台詞を残し、男たちは去っていった。


「お姉ちゃん、お兄ちゃん、ありがとう!!」
『大丈夫だった?』
「うん、大丈夫!」
「ふん…」
『愛想がないなぁ、京介は…』


子供たちと別れると、京介はまた私の手を引いて歩く。


『…どこ行くの?』
「帰る。」
『!か、帰るの??』
「ああ。」


…き、気まぐれ…??


この不満足な京介は、本当に何を考えてるのか分からない。
デュエルだって、勝ちたいのか負けたいのか言ってること曖昧だし。


『…振り回されて可哀想な私。』
「何がだ。」
『結局、京介が何を目指してるのかわかんなかったよ。』
「ふ、まぁお前と一緒なら、どこでもいいんだ。地獄でもな。」
『だったら天国に行こうよ。行けるよ。』
「お前と一緒ならどこだって、そうかもな。」
『うん!』



仲良く手をつないで、家に帰る。


いつかこの不満足な彼を更生させよう、私は自分にそう誓うのであった。





+fin+




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