たまには甘いひと時を






別に、昨日ナニかしたというわけでもないのだが。
何となく、今日は起きたくない気分。










たまには甘いひと時を










「起きろ。起きないか。」
『うん…眠…すぴー。』
「…こいつ…!!」


ここは覇王城、覇王の寝室。
既に外は明るく、日の光がさんさんと部屋に差し込んでいる。


「何時だと思っているんだ。」
『なんでぇ……十代だっていつも遅刻してるじゃない。』
「ばるこ、俺は十代じゃない。覇王だ。」
『う…クロノスせんせぇ〜すみませ…ぐー』
「…寝言か。全く、間抜けな寝顔だ。」


悪態を吐きつつも、どこか柔らかい表情で、覇王はばるこの髪を撫でる。


『ん…っは!!朝!!』


急に目を覚まし、ガバッと起き上がるばるこ。


「朝どころか、もうすぐ昼になるぞ。」
『寝過ごした…!!えぇ、今日の朝ごはん何だったの!?』
「小学生か。」
『えっ、えぇ…すみません。』
「知らん。今月の献立表を見てこい。」
『そんなのあるんですか!!…あれ??じゃぁ、覇王も朝ごはん食べてないの??』
「ああ。」


ふぅん…と、ばるこは横目で覇王を見る。


「…なんだ。」
『なんだかんだ言って、覇王も寝坊したんじゃない。』
「馬鹿か。俺は早くに起きていたぞ。」
『そうなの??』
「ただ、いくら起こしてもばるこが起きないから、こうしてずっと待っていたんだ。」
『へぇ…私が寝てる間に、何をしていたのやら。』
「き、貴様…!!フッ、どうやらばるこは相当溜まっているようだな??ナニをして欲しいんだ??」
『すみませんでした。』


覇王が妖しい笑みを浮かべるのに、ばるこは背筋がゾッとし、謝った。


ーーー朝から、だなんて死んでも無理!!


『でも私、起きる気配なかったでしょ??食べてくれば良かったのに。お腹減らない??』
「フン。愛している女を一人部屋に置いてくるなど、不用心なことはしない。」
『不用心って、んな大袈裟な〜…って、今…あ、愛…!?』
「愛している、と言ったんだ。悪いか??」
『悪く、ないよ……あふん。』
「何だ、あふん、とは!?」
『脱力、の意。』
「ふざけた奴だ。」
『ふざけてないよ。あーあ。今日は一日中こうしてよう。いわゆる、食っちゃ寝、ってやつ。』
「太るぞ。」
『ふーん。一日くらい大丈夫よ。』
「…小学生みたいな奴だな。」
『だから、さっきから何でそう小学生にこだわるの。小学生に失礼よ。』
「(自分は良いのか…??)」
『覇王も、今日はずっとゴロゴロしてよう??』
「…生憎、俺にはやることが沢山ある。」
『…ヤること…』
「いちいち下ネタにするやつだな!?」
『そ、そういう脳なんだから仕方ないでしょ!!』
「一度、脳○メーカーでお前の脳を見てみたいものだな!!」
『全部が愛に決まってるじゃない!!』
「とにかく、ばるこに構っている暇はない!!」
『そ、そんな言い方…!!』


眉尻を下げ、しょぼん、とうなだれるばるこ。
ばるこが覇王城へ来てからも、何かと覇王はデュエルやら遠征やらで、彼女は少し寂しい思いをしていた。


「あ、いや…その、悪かった。」
『何のために私をここに連れてきたのよ。覇王の傍に居られなかったら、意味がないじゃない…』
「…ばるこ…」
『っく…もう、知らない!!』
「待て!!」


部屋を飛び出そうとするばるこ。
しかし、それに覇王が素早く反応し、彼女の腕を掴んだために、それは阻止された。


『な、何…』
「…分かった。今日は一日ずっとお前と一緒にいる。」
『覇王。』
「だから、ここから出ていこうとするな。」
『う、うん…』


そして強引に、覇王はばるこを腕の中に閉じ込めた。


『むぐ…苦し…』
「ばるこのいない世界など…俺は要らない。」
『の割に…っぐ、窒息死させようと…!!』
「ん??あ、ああ。すまない。」
『はぁっ、はっ…てっきり、出ていこうものならば殺して傍に置いておく!!とか言うのかと…』


青ざめているばるこだが、別に俺はネクロフィリアではない、と言う覇王に安心する。


「それに、今、外にはゴブリンがデュエリストを探すためにうろついている。見つかったら…犯されるぞ。」
『えぇッ!?いや、嘘だろうけど、嫌だなそれ!!』
「分かったなら、大人しくしていろ。」
『す、すみませんでした。』


―――あれ、これじゃぁ何か私が悪いみたいじゃん。


そう思ったが、ばるこは黙っていることにした。
反論すると覇王がムキになって面倒なのもあるが、それよりも、覇王が自分のために時間を作ってくれたことが、ばるこは嬉しかったからだ。


『ありがとー、覇王。』
「ああ。」
『お礼に、覇王が寝坊しないよう明日は私が起こしてあげるね。』
「いや…絶対無理だから要らん。」
『……。』





++ END ++





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