雷の夜は再び






…ゴロゴロ……

星一つない曇った夜空に、雷鳴が響く。










雷の夜は再び










「…おい、ばるこ。」


ガチャ

ノックもせずに俺はばるこの部屋のドアを開けた。
レッド寮ならまだしも、さすがにブルーになると規則が厳しい。
特に女子寮は尚更だ。
だから、誰かに見つかる前にばるこの部屋に入らなけばならない。


『…準…??』


ばるこはベッドの上で、毛布に包まっていた。


『私、来ても何も言ってないよ。』
「またこの前みたいに、鼻水垂らしながらレッド寮に押しかけられたら困るからな。」
『鼻水垂らしてない!!』
「この俺が自主的に来てやったんだ!!感謝しろォ!!」
『あ、相変わらず偉そうなんだからッ!!』


ゴロゴロ…ピシャーン!!


『っ〜〜〜!!』


声にならない叫びを上げるばるこ。
相変わらずなのはこいつの方だ。


「大丈夫だ。俺がいる。」
『準〜ッ!!』


眉尻を下げて、ばるこは俺にギュッとしがみついた。
さっきまで俺のことを散々言ったくせに、コロコロと態度を変えやがって…


ムギュ


まぁ…これはこれで良い。
俺の腕にしがみつくばるこの、柔らかい胸の感触。
ぶっちゃけた話が、鼻の下伸びまくる。


『……準。』
「なっ、何だばるこ??」
『……だらしない顔。』
「べっ、別に、お前の胸の感触を堪能していたわけじゃないぞ!!」
『じゃぁ何を堪能してたのよ!?』
「お前の…谷間の感触だ。」
『言い方変えただけじゃない!!』
「うるさーい!!だいたい、しがみついてきたのはばるこからだろう!?」
『そ、それは……』


顔を赤らめて俯くばるこ。
『だって…』とか言いつつ俺の袖を掴むなッ!!
ああッ、可愛い奴め!!

こっ、ここで雷よ、もう一度落ちてくれ!!
ばるこが『きゃぁッ』と言って俺に抱き着く、そして俺はそのままばるこを抱きしめ首筋に顔を埋める、ばるこは『あん…準のバカ』と言って恥ずかしがる、そしてその後は……言えるかッ!!

と、とにかくだ。


来いッ、雷―――サンダー!!



そう、俺は万丈目サンダー!!






ゴロゴロ…ピシ「キタ―(・∀『あ゙ーーー!!』

雷の音と、俺の歓喜と、ばるこの叫びが見事にかぶる。


「な、何だばるこ…急に叫ぶな。」
『お互い様でしょ…??』
「何か思い出した様子だったが…」
『うん…雷でテレビ映らない…野球……』
「野球だと…??」
『うん…贔屓のプロ野球チームのね、今日すっごい重要な試合の日なの。』
「フン、そんなもの録画しておけ。」
『やだー!!リアルタイムじゃないと意味ないのー!!』
「そんなこと言ったところで、自然現象なんだから仕方ないだろう??」


せっかくタイミングよく雷が落ちたというのに、台なしにしてしまった。
くそっ…我ながら情けない!!
ん??
っていうか、あれは俺が呼んだ雷か??


「…フッ…」


思わず笑みが零れる。


『…何笑ってるの…』


ばるこが不審そうにこちらを見る。


でもそんなの関係ねぇ!!←


俺はきっと雷神さんに選ばれた男!!
そう、その名も、万丈目サンダー!!
くくっ…この力を利用して、ばるこを好きなようにしてやる…!!


俺は、ばるこの部屋のカーテンを開け、窓を全開にした。


『ちょ、準、何してるの…!?雨が入ってきちゃう!!』


すまない、ばるこ!!
だけど、俺はもう一度、雷を呼ぶ!!
そしてばるこが怖がったところで…Do!!!!


「フハハハハ!!雷鳴よ、この空に轟け!!白き閃光よ、この空を駆け巡れぇ!!雷神さーん!!お願いしまーす!!」
『…じゅ、準……??』


ばるこがあんぐりと口を開けている。


『ホワイトの次は…何なの??』


恐らくばるこは、また俺が何かの宗教に洗脳されたのだと思っている。

しかし、すぐに雷が鳴って……ん??


……シーン……


『雷が鳴るどころか…雨、止んだねぇ。』


良かった、と顔をほころばせるばるこ。それと対照に、俺はショックを受けた。


「ま、万丈目サンダー…サンダーなのに…」
『そんな、いくらサンダー同士って言ったって…』
「俺は…雷神に選ばれた男ではなかったのか??」
『いや、そんな落ち込まなくても……ま、あの叫びは、だいぶイタかったけどね。』
「う…うるさい!!」




…シーン…

相変わらず、部屋は沈黙が支配していた。


『もぉ…いい加減、私の部屋の、しかも隅の方で三角座りするの止めてよね!?』
「…お前に俺の気持ちがわかるか…」
『うん、まぁ、その…ちょっと調子乗っちゃったね。』
「俺はもう立ち直れん…」
『またぁ。どーせ、雷を呼ぶって言ってもやらしいこと目的だったんでしょ??』


…案外バレていたのか。


「俺の考えが分かるとは…さすが、ばるこだな。」
『っていうか、四六時中やらしいことしか考えてなさそうだし…ってその前に、否定しないの!?』
「………」
『う わ ぁ … …』
「な、何だその目はッ!?」


訝しげにばるこは俺を見る。

確かに俺は常時、あんなことやこんなことを考えていないこともないが、ばるこ以外を対象に考えたことはないぞ!!
イコール、俺は常にばるこのことを考えているんだ!!
俺ほど彼女のことを大切に思う男はいない。
感謝するんだな、ばるこ!!フハハハハ!!


―――と、顔に現れていたのだろうか。


ばるこは深くため息をつくと、俺に抱き着いた。


『準……バカ。』
「なっ、なんだ。」
『私が好きだから、そう謀るの??それとも、ただ、したいだけなの??』


その声色には、若干憂いが感じられた。


「…なかなかストレートに来るな。」
『だって最近、準は何かとしたがるから…体目当てかな、なんて思っちゃう。』
「そんなはずがないだろう!!俺は、ばるこを愛している。触れたい、そう思うのは仕方ないじゃないか。」
『準…そっか。』


優しい笑みを零すばるこ。
その笑顔が好きなんだ。
…しかし俺は、安堵を感じつつも、やはり年頃か、抑えていた性欲が限界を迎えようとしていた。


「ばるこ。」
『うん??』
「…したい。」
『準もなかなかストレートに来るな!?でも嫌ぁッ!!』
「この前は良いと言ったぞ!!」
『だって、万丈目ルーム(防音バッチリ)だったから…!!』
「ほぉ??」


ヒョイ


『な、何…!?』
「音が漏れなければ良いんだろう!?」


俺は、ばるこをいわゆる”お姫様抱っこ”をしてレッド寮へ向かった。


『ちょ、下ろしてぇッ!!一人で歩ける!!』
「ええい、大人しくしていろ!!」
『ひぃッ!!』


雨雲が消え去った空には、幾千もの星が輝いていた。

俺たちを祝福するかのように―――


『こっ、これから私、どうなるのぉッ!?』




++ END ++




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