白い部屋






『ふぅ、今日も一日疲れた…ん??……わぁぁぁぁぁ!!!!』


放課後。
私の部屋は、もはや私の部屋でなかった。










白い部屋









『な、何でぇ!?』


いつもの部屋なら、青のカーテンに、薄紫のベッド、水色のカーペットで、白のテーブル…はそのままだけど。

部屋が……白い。

あれ、よくみたら白のテーブルの汚れがなくなって真っ白だ。
そこまで完璧な白に変えたのは……


「見事に真っ白ね。」
『明日香!!』


私がドアを開けっ放しにしていたので、明日香が部屋を覗き込む。
彼女は白い制服に身を包む、”光の結社”の一員である。
白をこよなく愛するようになってしまった明日香は、心底嬉しそうな顔をする。


『明日香でしょ、人の部屋を勝手にいじって…!!』
「私じゃないわよ。」
『え??じゃぁ他に誰が…』


そう言いかけた瞬間、いきなり窓がガラッと開いた。




「フハハハハ!!ばるこ、窓の鍵が開いていたぞ!!」


高らかな笑いと共に不法侵入をやらかしたのは、私の彼氏、万丈目準。

私の部屋は1階にあるので、窓から簡単に中に入れる。


「無用心な奴め!!それとも、俺がこうして来るのを望んでいたのか!?」
『誰が!!』
「万丈目くんなの、ばるこの部屋をこんなふうにしたのは……素晴らしいわ。」
「フッ、分かってもらえて嬉しいよ、天上院くん。ばるこも嬉しそうだな。」
『ふ、ふざけないで!!私の部屋を返してよぉ!!』
「さぁ、この部屋で俺とばるこの新しい生活を始めようではないか!!」
「ふふ、私は邪魔者のようね。帰るわ。」
「ああ、天上院くん、すまない。」
『いやぁっ、待って明日香!!白い明日香も嫌だけど、ホワイトサンダーはもっと嫌ぁ!!』
「じゃぁね、ばるこ。」



明日香はさっさと自室へ戻ってしまった。

これで、部屋には私と準の二人だけ……





「さぁ、ばるこもこの白い制服を来て、光の結社に入れ!!」
『い、嫌よ!!』
「うるさーい!!何が何でも光の結社に入ってもらうぞ!!」
『わぁぁぁっ』



準は無理矢理私の服を脱がせようとする。



『この、ド変態!!何するの!!』
「脱げ、今すぐ脱げ、このっ……ん??」


準の手がピタリと止まる。
不審に思って準の顔を覗き込むと、彼は目を見開き、ほのかに頬を赤らめている。


『な、何なの……』
「なんだかんだ行って、結局ばるこも光の結社の一員ではないか。」
『……は??』
「下着、白なんだな。」
『わぁぁぁぁ!!』


私のブラの紐を引っ張っては離し、パチンパチンいわせながら微笑む、準。


『紐パチンパチンさせんな!!』
「照れるな、ばるこ。本当は光の結社に入って俺の隣にいたいくせに。」
『そ、それは…』


準の言うことは、あながち間違いではなかった。
準がホワイトサンダーを名乗ってから、彼と共に過ごす時間は格段に減った。


だって、何かと話す度に勧誘されるし!!


……それに、幹部として準と共にいる明日香には、少し嫉妬してしまう……





俯く私に、準は耳元で囁く。



「来いよ、ばるこ……」




不覚にも、ドキッとしてしまう。



もうこのまま、準に流されて―――











「白い…白いぞばるこ、美しい…」
『じゅ、準…準も、白くてカッコイイ。』
「まるで、花嫁と花婿のようだな。」
『そんな、気が早いわ。私たちまだ17歳よ。』
「俺が18になるまで…待っていてくれるか??」
『もちろん!!私、待ってるわ!!』
「ばるこ…」
『準…』
「一緒に…一緒に、斉王様を崇拝しようではないか!!」
『ええ……って、え??え??』
「素晴らしきこの世界!!未来に光あれ!!」
『そ、そんなぁ〜〜〜!』






―――光あれ、じゃねぇぇぇ!!


『ダメだ、やっぱり準とはやっていけない!!』
「な、何だと!!」
『美しいだとか花嫁だとか、私は騙されないわ!!』
「何のことだ!?」
『私より斉王様なんでしょぉ!!何が光あれよ!!』
「話の筋が分からんぞ!!」
『もういっそ、斉王様と結婚すれば!?』
「あ、おい待てばるこ!!」




バタン!!



白い部屋に同化する準。
先ほどの妄想も手伝い、私はその明るい色調に嫌気がさした。

私は部屋を飛び出した。





さて、部屋を飛び出したのは良いが、これからどこへ行こうか。

いつもなら、仲間の中で最も頼りになる明日香のところへ行くだろう。
しかし、彼女は今、ホワイト化してしまっている。
行っても光の結社に勧誘されるか、準の居る自室に帰されるかだ。


レッド寮…アカデミアでは、ここが一番光の結社に縁の無い場所だろうし、十代や翔と一緒にいるのは楽しい。
だけど、ホワイトサンダーとはいえ準を拒否しておきながら、十代たちと寝食を共にするのは気が引ける。

いっそ間をとって、ピンク寮でも作ってやろうか。
…でもピンク寮って…何か、やらしい響きだよなー。



「ばるこ!!」
『!!』


くだらないことを考えているうちに、準に追い付かれる。
表情からして、明らかに怒っている。

ぐいっと引き寄せて、私を腕の中に閉じ込める。



「この馬鹿が!!」



言葉とは裏腹に、抱きしめる腕は優しかった。


「美しいだとか、花嫁だとか…お前は意味の分からんことを言っていたが…」
『あー…(ごめんソレ妄想の話だ!!)』
「そんなことは、どうでも良い。」
『う、ん…??』
「もう、光の結社に入れとは言わん。だからせめて、俺からは離れるな。」
『準……じゃぁ、私の部屋、元に戻してくれる??』
「それは無理だ。」
『何でっ!?』
「あそこは今日より、俺とお前の愛の巣だからだ!!」
『愛の酢!!(シメてやろうかっ!!)』



パッと私から手を離すと、気持ち悪いくらいご機嫌に鼻歌を口ずさんで、私の部屋の方へ向かう。


「はぁ、楽しみだ…俺との毎日の営みによって俺の色に染まる、ばるこ……」


『何考えてんのよ!!』


そう言いつつも、私の足は準を追いかけるのであった。





++ END ++





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