Room!






中等部からの生え抜きのエリート。
時期カイザーの呼び声も高いこの男。

今日は取り巻きと共にやって来た。










Room!










「こすもばるこ!!いるのは分かっている!!」
「万丈目さんの御出でだぞ!!」


取り巻き達が私の自室のドアをドンドンと叩く。
これじゃ借金の取り立てじゃない。
っていうか、女子寮って男子禁制でしょぉ!?


「ばるこ、俺だ。開けろ。」


自分のことは「万丈目さんと呼べ!!」とか言うくせに、私のことは初対面から呼び捨てだったよな…


ドアの方を軽く睨みつつ、私は無視を決め込む。


「…仕方がない。開けるか。」


万丈目がとんでもないことを言い出した。


「合い鍵を出せ。」
「はいっ…これです、万丈目さん。」


いつの間に何作ってんだ―――!?


私は足音を立てないように、しかし慌ててドアに走ると、ドアにチェーンをかける。
これで、鍵が開いたとしても、ドアは隙間が開くが人が通れるほどには開かない。


『よし、ドアはOK。隠れよう。』


私は、万丈目達の様子を見ながら対策を取れるよう、ドアの後ろに隠れた。

ガチャ


「よし、鍵は開いたか…」


ガンッ


「くっ…チェーンがかけられているな。」
「チェーン!!」
「そ、それはもしや、魔法・罠を発動した瞬間、その上にまた魔法・罠を発動するというアレですね!!」
「それはデュエル知識ッ!!…これは、ドアの二重ロックだ。」
「す、すみません、つい…」
「今日の授業で習ったものですから…」
「ま、まぁ、その復習意欲は認めてやる。」


え、えぇ〜〜〜ッ
いっつも人のこと見下してエラそうにしてると思ったら、普段こんな会話してんの!?


「はっ…万丈目さん、あれを!!」
「ん??何だ??」


わずかなドアの隙間から彼等が見つけたのは、私が部屋に干していた洗濯物。


「人の生活が丸分かりなんですよね、アレ。」


くっ…耐えろ、耐えるのよ私!!
人の生活丸分かりって、私そんな、人にバレて恥ずかしいような生活してないし!!


「ふむ。よく見えんな…」
「いや、しかし、目を凝らせば見えますよ…あっ、下着。」
「何っ!?」
「あ、本当だ。この角度です、万丈目さん。」
「見えた!!…ピンクか。フッ、ばるこ…可愛い奴め。」
『何覗いてんのよ、この変態トリオ!!』
「「「!!」」」


……やば。



しまった。
これじゃぁ、今まで居留守使ってた意味がなくなるじゃない…!!



『…な、なーんちゃって。ニャーン。』


わぁー、我ながら何だコレ!いったー!
こんなんじゃ状態はさらに悪くなると思われ…!!


「万丈目さん、猫がいますよ!!」
「猫が喋るか!!」
「いや、これはきっと、セキセイインコですよ!!人語マネるって言いますし…」
「インコにそんな言葉を教えているのか、ばるこは…」


誤解を招いたけど…何とかはぐらかせたわ。
まさか、この手に引っ掛かるとは思わなかったけれど。


「くくッ…これではぐらかせると思ったか、ばるこ!!」
『!!』
「そこにいるな、ばるこ!!」
「見破ったなんて、さすが万丈目さん!!」
「お見それ致しました!!」
「フッ…愛があれば、何でも出来る。」
『それ、”元気があれば、何でも出来る”のパクリですか??』


ハッ、ついツッコミを……!!


「ええい、ばるこ!!やはり居たな、ここを開けろぉ!!」
『嫌だー!!』


断固として譲らない。
何か、一度彼をここに入れたら、通い詰められるか住み着かれそうだ。




「フン。仕方がない…口説こう。」


えぇッ!?


「バックミュージックだ。」
「バックミュージック、即ちBGMですね!!あれ、BGMのGって何だ??」
「んー??…GXのGだろ。」
「それはジェネレーション・ネクストじゃないか。」
「そうか…」
「ええい!!いちいちボケるなお前らぁッ!!」
『"BackGrand Music”のGでしょぉッ!!』
「ま、万丈目さんとこすもばるこの畳み掛ける、素晴らしきツッコミ…!!」
「息ピッタリだ…!!」


あんた達の話を聞いてると、嫌でもこうなるわよ!!
だいたい、BGM流されても私は落とせないんだからッ!!


「よし、この調子でばるこを手に入れて見せる!!」
「万丈目さんカッコイイ!!」
「男の鏡です!!」


ほ、本当にブルー生なの、この人たち……


「よし、流せ。”MY HEART WILL GO ON”」
『タイ○ニック!?』
「俺の中では最高の恋愛映画だった。」
『確かにそうだと思いますけど……悲恋じゃなかったっけ??』
「お前、ちゃんと見ていたのか!?あの有名な、船の先端に立つシーンで流れたのが、この曲なんだぞ!!」
『み、見てたよ…』


熱弁する万丈目の後ろでは、涙を流す取り巻きたちがいた。


「あのシーンは…感動した!!」
「思い出すだけで、目の奥から熱いものが…!!」





「…何してるの、あなたたち。」


鶴の一声、万丈目たちが振り返ると、不審そうに万丈目たちに目を向ける明日香の姿があった。


「ドアに話し掛ける男子生徒に、後ろで泣く取り巻き…怪しいわね。」
『明日香ぁー!!助けに来てくれると信じてたわん!!』
「天上院くん…ばるこが、部屋を開けてくれないんだ。」
『当たり前でしょ!!男子禁制なんだから!!』
「昨夜は俺を、招くように入れたのに!!」
『してないッ!!だいたい昨日の夜はずっと明日香といたわよ!!』
「何ッ!?だから部屋に誰もいなかったのか!!」
『えぇッ、昨日も来たんですかあなたたちぃッ!?』


ふ、と明日香はため息をつくと、ドアにかかったチェーンをいとも容易に外した。


『あれ…あれれッ!?』
「この学校の寮チェーン、外からでも結構簡単に外せちゃうのよね、困ったものだけど。」
『マジですか!!』
「そうなのか、知らなかったな。」
『だからって何で外しちゃうんですか!?』
「あっ…つい…」
『つい!?』


明日香は眉尻を下げつつ笑い、ごめんごめん、まぁ万丈目くんとばるこならお似合いだし、と軽く謝ってどこかへ行ってしまった。


『そ、そんな……』


傍らには、ニヤリ、とほくそ笑む万丈目。
万丈目が目で訴えかけると、取り巻きたちも一礼をして帰ってしまった。



『あの…取り巻きの人達も帰ったし、万丈目も帰ったら??』
「万丈目”さん”だっ。フン、俺は帰らんぞ。」
『ム…断固拒否でここ開けませんから。』
「力ずくでも開けてやる。」
『う〜〜〜っ負けるな自分!!負けるな青春!!』
「…ん??何だあれ??」
『えっ??』


万丈目の視線の方を見る。
しかし、その先には何もない。

―――まさか。

さっきので気を取られた私は、パッとドアノブから手を離してしまっていた。


「くくっ…まさか、こんな古典的な手に引っ掛かるとはな…」
『わぁぁ、ド畜生!!』


喉の奥で笑う万丈目に対し、頭を抱える私。


その後、私の予想通り、万丈目は私の部屋に通い詰めるようになった。





「…これから始まる、俺とばるこの純で甘酸っぱい青春ラブストーリー…」
『何だよそれッ!!』
「青春の1ページ1ページを、一緒に描いて行こうな、ばるこ。」
『ウザっ!!その爽やか系ウザっ!!あ、でも、あの城之内さんに言われたら頷いちゃうかも!!』
「何だとッ!?」





++ END ++





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